アイネイアス(アエネアスとも)はギリシャ神話に登場する、ローマ建国の祖とされるトロイの武将であった英雄です。
アイネイアスはトロイ王家の血筋であるアンキセスと、女神アフロディテ(ヴィーナス)の間に生まれました。彼は5年間ニュムペーに育てられ、その後異母姉であるヒッポダメイアに養育されました。成長したアイネイアスはトロイ戦争に参加し、ヘクトルに次ぐ実力を有しました。
しかし、戦争は木馬の計略によってトロイ側が敗北し、アイネイアスは父アンキセスを背負って息子の手を引いて都から脱出を果たします。逃げ延びた船団は祖先の地を目指せという神託を得てクレタ島に上陸したものの、イタリア半島こそが目的の場所と言う事を知ります。父アンキセスが病死してしまい、ヘラが起こした嵐によってアイネイアスは北アフリカに漂着してしまいます。カルタゴの女王ディドーと愛し合うも、神の思し召しによって彼はイタリアへと船を向け、そこで巫女の導きによって冥界へと足を踏み入れます。そこで「お前の子孫はローマの英雄となるだろう」という予言を受け、彼はラティウムへ行きました。
アイネイアスは王女ラウィーニアと婚約しますが、アルデア王トゥルヌスは猛反対。両者の間で、他諸国を巻き込むような大戦争が起きてしまいます。将軍たちが命を落としていく中、アイネイアスがトゥルヌスとの一騎打ちで勝利を収めて争いは終結します。晴れて彼とラウィーニアは結婚し、新たな都市を築いたのでした。やがて歳を取り、息子の成長を見て取ったアイネイアスは寿命が来たことを悟ります。アフロディテはゼウスに彼を神とすることを懇願し、アイネイアスは神として天上へと迎えられる事となったのでした。
アイネイアスについての絵画12点をご覧ください。
「ポンペオ・バトーニ作 1750年」
木馬の奸計により、滅亡していく故郷トロイ。将軍アイネイアスは
老父アンキセスを背負い、幼い息子アスカニオスと妻クレウサを
伴って燃え落ちて行く街中を逃げます。
「シャルル=アンドレ・ヴァン・ロー作 1729年」
懸命に父を背負って走っている中、妻が何かを渡しているようです。
これは家の守護神の像であるそう。「これがあれば安心。逃げ
られるわ」と希望を見出しましたが、アイネイアス達の元に魔の手が。
「ヘンリー・ギブス作 1654年」
絵画の中で、男にがしっと肩を掴まれるクレウサ。
妻は混乱の中で別れ別れになってしまい、永遠に会えなくなって
しまったのでした・・・。背後には木馬らしきものがありますね。
「ナサニエル・ダンス・ホーランド作 1766年」
祖先の地を目指せという神託を受け、アイネイアス達は航行の末に
北アフリカへと漂着します。そこでカルタゴの女王ディドーと出会い、
愛し合うようになりました。
「Rutilio di Lorenzo Manetti 作 1630年」
ディドーと深く愛し合うようになったアイネイアスに、ゼウスは
「お前は再興の為にイタリアへ行け」と警告したので、彼はカルタゴを
去ってしまいました、残されたディドーは絶望し、自ら命を絶って
しまったとか・・・。なんだか可哀想。
「サルヴァトール・ローザ作 1660-5年」
アイネイアスは夢の中で、河の神ティベリスから「ここは約束の地
だから、河をさかのぼるがよい」とアドバイスを受けました。
彼はその通りに行動し、その先で頼もしい味方を得たのでした。
「イギリス出身の画家作 1800年頃」
イタリアの地へと着いたアイネイアス。そこでシビュラ(巫女)の元を
訊ね、冥界へと降りてゆきます。なんだか冥界の人達が襲い掛かって
いるように見えますが、アイネイアスは気にしません。
「フランドルの工房作 17世紀」
アイネイアスは冥界の中で亡き父親アンキセスに会い、「子孫が
ローマの英雄となるだろう」と託宣されるのでした。
こちらのフランドル作品、ボス・リバイバル時代だからなのか、
変な怪物がうようよいますねw
「フェルディナント・ボル作 1661-63年」
新たな地を目指し、ラティヌスへと到着したアイネイアス。彼は歓迎
され、王女と婚約することになりました。しかし、元の婚約者だった
アルデア王トゥルヌスが怒り、戦争することとなったのでした。
「ルカ・ジョルダーノ作 17世紀」
数多の敵味方入り乱れた激戦の末、アイネイアスがトゥルヌスとの
一騎打ちに勝利したことにより戦争は終結します。
トゥルヌスは命乞いをしたものの、彼が殺された仲間の剣帯を
付けていた為、アイネイアスは怒って殺してしまいました。
「アブラハム・ヤンセンス作 1620-30年」
アイネイアスの神格化という題の作品。無事に約束の地を見つけた
彼は母親アフロディテの力を得て、神となりました。
絵画はまだお若いアイネイアスが母より勝利のオリーブを捧げ
られていますね。手前にいるのは耳が生えているけど・・・河の神?
「ヤーコブ・ヨルダーンス作 1617年」
こちらも華やかなアイネイアスの神格化。アフロディテは言葉は
いらないわというばかりに口に手を当て、神となったことを祝福して
います。左側にいるのが河の神夫妻、右側がゼウスとヘラでしょうか。
ローマ建国の祖とされたアイネイアス。ローマを建国したのは双子の兄弟ロムルスとレムスの内の、ロムルスですが、どうつながるのでしょう。
アイネイアス亡き後は息子アスカニオスが王位を継ぎ、人口が多くなるにしたがってアルバ・ロンガを新たに建国します。彼の亡き後は弟シルウィウスが王になり、29年間統治します。その後、11回ほど王が入れ替わり、アムリウスが王を蹴落とし、王の息子を殺して娘レア・シルウィアをウェスタの巫女に任命して権力を握りました。その四年後、レアは巫女の身でありながら軍神マルスに見初められ、妊娠します。レアは双子の男児、ロムルスとレムスを出産しました。その二人が争い、レムスが兄に殺められてロムルスが初めてのローマの統治者となったのでした。
「お前の子孫がローマの英雄となる」と冥界のアンキセスさんが断言したから、2~3世代後にローマが建国するかと勝手に思っていたのですが、アイネイアスの時代からローマが建国されるまでに300~400年以上の長い年月が経っているのですね。想像していたより遠い血縁・・・。
色々と調べてみると、トロイ戦争があった時代は紀元前1200年頃と推定されており、ローマの建国は紀元前753年とされているようです。それを照らし合わせてみると、多少の誤差があれど何となくつじつまが合いますね。ローマ時代の詩人って凄いと思った瞬間でした。
→ トロイ戦争についての絵画を見たい方はこちら
→ トロイの木馬についての絵画を見たい方はこちら
→ ロムルスとレムスについての絵画を見たい方はこちら
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