イアソンの絵画13点。金羊毛皮を入手するも、魔女メディアを裏切って失墜した英雄 | メメント・モリ -西洋美術の謎と闇-

イアソンの絵画13点。金羊毛皮を入手するも、魔女メディアを裏切って失墜した英雄

スポンサーリンク

 イアソンはギリシャ神話に登場する、女神ヘラの加護を受けた英雄です。
 ギリシャのイオルコス国の王の息子として生まれたイアソン。父が他界して叔父ぺリアスが王位を継いだ為、ケンタウロス族の賢者ケイロンの元で育てられました。成人したイアソンは王権の譲与を求めましたが、叔父は「コルキスにあるという黄金の羊の毛皮を持ち帰る」という条件を出します。それはほぼイアソンを殺す口実なのでした。

 それを受けたイアソンは仲間に頼んで巨大なアルゴ―船を建造してもらい、乗組員を募集します。集まったのはヘラクレスやオルフェウスなど50名の勇士達。彼等「アルゴナウタイ」は勇んで大海原を出発し、数々の冒険を経てコルキスへ到着します。
 しかし、コルキス王は「火を吐く牡牛を駆って土地を耕し、竜の歯をまけ」という無理難題を吹っ掛けます。そこへ救いの手を差し伸べたのは王女メディア。魔女である彼女はイアソンを愛していたのです。(女神様のパワーによるものや、イアソンが口説いたという説もあり) 結婚するという事を条件に、メディアはイアソンに魔法をかけ、無事に黄金の毛皮を入手します。

 イアソンはただちにアルゴ―船を出航。黄羊毛皮があるから王位を譲れと言いますが、叔父ぺリアスは断固拒否。メディアはそれを知ってぺリアスの娘達を騙し、ぺリアスを殺してしまいます。そのせいでイアソンは国へいれなくなり、コリントスへと逃れてそこの王女と婚約してしまいます。裏切りに怒り狂ったメディアはコリントスの王女と王を殺し、イアソンとの子供も殺してしまいます。イアソンは失意を胸に放浪し、アルゴー船の残骸の下敷きになって死んでしまったそうです・・・。
 栄光から大転落の人生となった、イアソンの絵画13点をご覧ください。

 

「ウィリアム・ラッセル・フリント作  1924年」
ケンタウロスの賢者ケイロンに養育されたイアソン。王だった父は
他界し、叔父ぺリアスが後を継ぎました。成人となったイアソンは
王位を得るために、仲間達と共にアルゴー船に乗って黄金の毛皮を
入手する旅に出かけます。

「ジーン・フランソワ・デ・トロイ作  1742-3年」
晴れてコルキスの国へ到着したイアソンは、王女(王の娘とも)である
メディアと出会い、愛し合います。
(ヘラとヴィーナスの力という説と、イアソンが口説いた説があります)

「ジョン・ウィリアム・ウォーターハウス作  1907年」
黄金の毛皮を手に入れる為には、難題を突破しなければなりません。
「私に任せてちょうだい。最強の魔法をかけるから」とメディアは
何やら調合をしているようですね。こぽこぽ。

「サルヴァトール・ローザ作  1615-73年」
メディアの魔法で絶対に傷付かない身体となり、助言を受けた
イアソンは火を吐く牡牛、武装した兵隊、毛皮を守る竜を次々と
攻略することに成功します。
→ ローザの絵画をもっと見たい方はこちら

「作者不詳 ドイツのデッサウの美術館にある作品 1766-70年」
竜を相手しているイアソンに、眠りの魔法を竜にかけようとする魔女
メディア。本当に致せり尽くせりで、イアソン殆ど何もしていない・・・。

「アンニーバレ・カラッチ作  1560-1609年」
竜が眠っている間に金羊毛皮をこっそりと入手。背後には毛皮を
持ち帰るイアソンが描かれています。

「Erasmus Quellinus 2世作  1630年」
金羊毛皮を持って走るイアソン。ふと銅像を振り返っているのですが、
この方は誰なのでしょうか・・・。
ヘラクレス・・・なわけないか^^;

「ジーン・フランソワ・デ・トロイ作  1742年」
竜を倒し(寝てるけど)、金羊毛皮を入手して「獲ったどー!」と叫ぶ
イアソン。周囲にはメディアだけではなく、アルゴナウタイの方々も
祝福に来てくれています。集合写真みたいな感じですね^^

「Michele Cortazzo 作  1808年頃」
金羊毛皮を持ち、ドヤ顔をする英雄イアソン。
しかし、この時が人生の絶頂で、彼はあっという間に下り坂を
転げ落ちていくのでした・・・。

「ハーバート・ジェームズ・ドレイパー作  1904年」
アルゴー船の逃走を追跡するコルキス側に対し、過激派(?)の
メディアは共に連れていた幼い弟アプシュルトスを殺し、亡骸を
切り刻んで海へ投げました。追手がそれを拾っている間に、
アルゴー船は逃げ延びたのです。怖すぎるわー!

「シャルル=アンドレ・ヴァン・ロー作  1705-65年」
金羊毛皮を持って来ても王権を譲らないぺリアスに対し、メディアは
奸計を案じて彼を殺してしまいます。イアソンは国外へ逃亡し、
そこの王女と結婚しようとしますが、裏切られたメディアの怒りの
矛先は王女へと向かい殺します。もうドロドロすぎます。

「シャルル=アンドレ・ヴァン・ロー作  1705-65年」
同じ作者が同様のテーマを二枚描いておりますね。彼女はイアソン
との子供を殺し、飛竜がひく車に乗って何処かへと去ったそうです。
イアソンは失意の内にアルゴー船の下敷きとなって息絶えました。
イアソンの力はメディアの毛の筋ほども
及びませんでしたね・・・。

「ギュスターヴ・モロー作  1826-98年」
象徴派のモローはそんな二人を、幻想性溢れる美しい姿として
描いています。輝く愛は脆く瓦解し、黒く塗り潰されて闇へと
還って行ったのでした・・・。

 登場人物の誰もが不幸になってしまったこの物語。人々をかき乱して殺戮したのは魔女メディアでしたが、彼女はイアソンの為を想ってやったことであり、そもそもメディアがイアソンを好きになったのはヘラとヴィーナスが仕向けたからです。女神様のちょっとした運命の操作により人々が死んで行き、守護するはずだったイアソンまで野垂れ死んでしまったのは、「神の残酷さ、運命の無慈悲さ」を物語っていたのかな・・・などとと色々考えてしまいました^^;

 話しは変わりますが、イアソンの英語読みはジェイソンという事を知り驚きました。ジェイソン。あの13日の金曜日の彼と同じ名前なのね。なんか、無念を抱えたイアソンの遺体が蘇生し、暴れ回ってもおかしくないような気がしてきました・・・。←ぇ!? ・・・いや、アルゴー船の下敷きになったから難しいですかね^^;

→ オルフェウスに関する絵画を見たい方はこちら

 

【 コメント 】

  1. 管理人:扉園 より:

     >> 季節風様へ
    こんばんは^^
    「私はあなたの為にやっているのよ」と思っていても、相手は迷惑に感じるという事はありますよね…。
    自分の価値観だけで判定せず、相手の気持ちを思いやって行動したいですね。
    メディアは太陽神の血筋を引いているし、もともとは土着信仰の女神であったようです。
    ヘラとヴィーナスにしても手出しができなかったのかもしれません。
    原始的な女神としての性質を持つメディアに愛され、嫌われたイアソンは運が悪かったとしか…。

  2. 季節風 より:

    メディアみたいな性格の人はいます。性別にかかわらず
    メディアみたいな人が友人だと情に厚すぎて鬱陶しいです。親切にしてもらった恩義はあるけど逃げたくなります。
    そして本物のメディアは弟やイアソンとの間にできた我が子に対して鬼の所業です。ヘラとヴィーナスがメディアに厳罰を与えるべきだったと思うんです。

  3. 管理人:扉園 より:

    >> メディア怖い…様へ
    ミュシャの展覧会は結構多く開催されていますよね^^
    私も東京のミュシャ展(2017年スラヴ叙事詩の展覧会)でメディアを見ました。
    メディア様の目が完全に据わっていて、鑑賞しているこっちまで刺されそうな気分になりましたw

  4. メディア怖い… より:

    子殺しのメディアのシーンといえば、ドラクロワも有名ですがミュシャの絵も有名ですね。サラベルナール扮するメディアが血の付いたナイフを持って立ち尽くすシーンの。
    名古屋の百貨店で小さな展示会やっていて見に行った覚えがあります!

  5. 管理人:扉園 より:

     >> 美術を愛する人様へ
    こんばんは^^
    「アルゴ探検隊の大冒険」凄く面白そうですね!
    仲間達と数々の冒険をし、難題に立ち向かい、裏切りがあり、最後は勝利する。
    イアソンがこれなら英雄らしく格好いいのですが、元ネタは情けなさすぎですよね^^;
    メディアも恐いし、人死にまくりだし…。
    タロス君は本家アルゴナウタイではクレタ島での冒険で登場するものの、メディアの呪文で眠らされて殺されてしまうそうです。
    なので7枚目の絵では無さそうです…。
    一体誰なんだろう。
    タロス君に踏み潰されてしまうヒュラスの扱いの酷さにちょっとウケましたw
    ヘラクレスもそこで隊とはお別れなんですね。
    時間がある時にぜひ観てみたいです^^

  6. 管理人:扉園 より:

    >> メディアというと……様へ
    こんばんは^^
    私が調べた範囲内では、魔女メディアとメディア王国は無関係のようです。
    情報伝達の媒介のメディアも関係がないみたいです。
    でも、もしかしたらちょっとは関連あるのかもしれない…?
    うちにもいずれ読むだろう候補がいっぱいいますw
    ドラクロワの「激怒のメディア」を紹介しようかな~と考えたんですが、イアソン主体の記事という事で抜かしちゃいました^^;
    確かに段差で脚が離れた感じになっていますよね。
    そうです。ペレウスもアタランテも参加していますね。
    総勢55名で、神の血筋がいっぱいいます。
    ヒュラスはアルゴナウタイの途中で行方不明となり、ヘラクレスは失意の中で冒険を続行しています。
    という私もアルゴナウタイ読んでいませんw

  7. メディアというと…… より:

    そういえば、アルゴナウタイ、読んでないので詳しく知らないのですが……
    たしか、ペレウスとかアタランテとか、有名な人たちも出てきますよね。
    ヒュラスとニンフたちの画題も、たしかこの冒険の途中だった……?

  8. 美術を愛する人 より:

    元ネタの神話だと陰惨かつイアソンのメディア頼みっぷりにガックリ来るのですが
    ハリーハウゼン映画のアルゴ探検隊の大冒険が子供のころから好きでした。7枚目の絵がもしや本家のタロス君(動く青銅の像)かと期待しましたがこれだけだとわかりませんね。

  9. メディアというと…… より:

    世界史で習ったメディア(国名?)とは関係ないのかしら?
    ギリシャ神話のメディアは、エウリピデースが『メデイア』という悲劇を書いていますね。買ったギリシア悲劇集に載ってるはず。いずれ読むはず。←いつだw
    ちなみに、絵画だとドラクロワのメデイアを描いてますが……、ぱっと見、どれが彼女の脚だかわかりませんでした。
    そういえば、アルゴナウタイもたしか、日本語訳が出てましたね……

タイトルとURLをコピーしました