オルフェウスはギリシャ神話に登場する吟遊詩人です。竪琴の技術が非常に優れており、彼が竪琴を演奏すると動物たちだけではなく、木や石までも耳を傾けたと言われています。
ある日、彼の妻エウリュディケが毒蛇に噛まれて死んでしまいます。オルフェウスは嘆き悲しみ、冥府へ下って冥界の王ハデスと妃に、妻を返してくれるよう懇願します。彼の悲しみと竪琴の調べに心を打たれた二人は、それを承諾します。ただし「冥界を出る間は、絶対に後ろを振り向いてはならない」と条件を付けて。オルフェウスは妻の手を引いて冥界を歩き、振り向きたいという欲求を必死にこらえました。けれど、後ろを向くなと言われたら振り向いてしまうのが人の常。オルフェウスはついに欲望に負け、妻の方を向いてしまいます。その瞬間が、エウリュディケの姿を見た最期になったのでした。
この劇的なシーンは画家の創作意欲をあおり、多大な作品を生み出しています。その作品たちをご覧ください。
「エドワード・ポインター作 1862年」
「Gaetano Gandolfi 作 18世紀」
「もう少しの辛抱だ」「もう大丈夫かしら」 振り向くどころか寄りそってます。
「Jean Roux 作 1718年頃」
「ちょっとだけなら・・・」 夫より妻の方ががっつり振り向いてます。
「Carlo Cignani 作 17世紀後半‐18世紀前半」
「エウリュディケ!」「きゃっ!?」 冥界の住人達がやってきました。
「Michel Martin Drolling 作 1820年」
「あぁー!エウリュディケ!」「約束だからね。冥界へ戻ってもらうよ」
何故か使者の神ヘルメスがさらっています。文献にはないのですが。
「Elsie Russell 作 1994年」
「行くなぁー!」「きゃー!」「オルフェウス、もう諦めるんだ!」
ヘルメスパート2。今度はオルフェウスを引き留めています。
文献にないことをしまくりです。それにしても全裸は、なぁ・・・。
「Jacopo Vignali 作 1625年頃」
珍しいちょびヒゲのオルフェウス。
仲よく脱出しかけていますが、背後から悪魔の影が・・・。
「ピーテル・パウル・ルーベンス作 1636年頃」
出発したばかりの二人。横目で見たくて仕方がないオルフェウスに、
謎の笑みを浮かべるエウリュディケさん。不気味です・・・。
「ヤン・ブリューゲル(父)作 1594年」
悲しい音色を奏でているシーンですが、画面の半分以上が怪物。
オルフェウス物語 < 怪物 と言った感じです。
画家の方はストーリーにこだわらず、結構自由に描いていることが分かりました。ヘルメスはオルフェウスがアルゴ遠征に行った際、サポートする側で登場するんですけど、冥界下りの物語で描かれるのは何故でしょう。絵柄がいいから?トリックスター的性質だから? うーん・・・不思議です。
物語の流れから行くと、最初のポインターさんが一番準じていそうです。ああいった感じで一歩一歩、一生懸命歩んでいったのに、最後の最後で無に帰してしまう。ありがちな物語ですけれど、人生に置き換えるとかなり深い主題を含んでいるように思えます。
【 コメント 】
>> 季節風様へ
こんばんは^^
オルフェウスが振り向いてしまうシーンなのに、エウリデュケの方が振り向いているのは、もしかしたら現代の私達が知る神話と、当時の画家が知る神話が異なっているのかもしれません。
神話は研究者の様々な説や意訳があるので、エウリデュケ振り向きバージョンもあった
可能性がありますね。
ヘルメスが登場するのもそれが原因なのかも…?
冥界の方が楽しかったから、名残惜しげに振り向いてしまったというのもなきにしもあらずですね(笑)
怪物好きの私だったら、多分振り向きますw
こんばんは。
エウリュディケさんが冥界を名残惜しそうに見ている絵も
少なくないですね。冥界の方が楽しかったとか。
ヤン・ブリューゲル(父)作ですがエウリュディケがモンスター好きだったら戻れて楽しかったかもしれませんよ。