ヘルマプロディトスの絵画13点。ニュムペーに愛され、両性具有体となった美少年 | メメント・モリ -西洋美術の謎と闇-

ヘルマプロディトスの絵画13点。ニュムペーに愛され、両性具有体となった美少年

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Hermaphroditus And Salmacis by Louis Finson -

 ギリシャ神話に登場するヘルマプロディトスは、ヘルメスを父にヴィーナスを母に持つ美少年です。
 ヘルマプロディトスはトルコのイデ山でニュムペー(ニンフ)によって育てられました。15歳の時に各地を旅し、ハリカルナッソスという土地の森の泉で、ニュムペーのサルマキスと出会いました。彼女はこの美少年に一目惚れをし、誘惑を試みましたがすげなく断られてしまいます。ヘルマプロディトスはサルマキスが去ったのを見計らって衣服を脱ぎ、泉へ入っていきました。その時、隠れていたサルマキスが猛ダッシュし、美少年目がけて飛び込んだのです!

 「好きよ~!」と抱きしめようとするサルマキスに、「止めて~!」と抵抗するヘルマプロディトス。彼女は神々に「どうか離れ離れにしないで」と願い、その祈りは届けられます。こうして二人は融合して両性具有体となったのでした。自らの身体の変化に悲嘆したヘルマプロディトスは、「この泉の水を浴びた者は全て僕のようになってしまえ」と呪いをかけたとされています。
 サルマキスに愛されすぎたヘルマプロディトスの絵画13点をご覧ください。





「ルドヴィコ・カラッチ作  1632年」
各地を旅し、カーリアの森の泉へ着いたヘルマプロディトス。そこに
泉のニュムペーであるサルマキスが現れ、ズッキュン一目惚れ。
「ねぇ、私と遊びましょ?」と誘うも、美少年は全く釣れません。
Ludovico Carracci, Salmacis and Hermaphroditus, c. 1632

「バルトロメウス・スプランヘル作  1580-82年」
「うふふ~チラッと見せちゃうぞ♪」とアピールをしますが、
全く興味がない様子のヘルマ君。彼はただ泉で水浴びをして、
各地を旅したいだけなのでした。ヘルメスとヴィーナスの息子に
しては、真面目な性格をしているのです。
Hermaphroditos and Salmacis  Bartholomäus Spranger 1580-82

「Scarsellino 作 1585年」
最初この絵画を見た時、「どうしてヘルマプロディトスがサルマキスを
追っているのかな?」と思ってしまいました。よーく見ると、左が男で
右が女。内容合ってました。サルマキスさん、たくましすぎますって・・・。
Salmacis y Hermaphroditus Scarsellino 1585

アントーニオ・ペッレグリーニ作  1675-1741年」
「僕、女性には興味ないから。帰ってくれるかな?」と断る
彼に、「そ、そんな!」とショックを露わにするサルマキス。
この時は姿を消したのですが・・・。
Giovanni Antonio Pellegrini. Salmacis Hermaphroditus

「 Louis Finson 作 1580-1617年」
「逃がさないわよ・・・!」
安心しきった所へ、猛突進するサルマキスさん。
Hermaphroditus And Salmacis by Louis Finson

フランチェスコ・アルバーニ作  1578-1660年」
「止めてくれ~!」と抵抗する彼に、死んでも離さないレベルの彼女。
周囲のキューピッドもその迫力に押され気味です。
Francesco Albani

フランチェスコ・アルバーニの工房作  17世紀頃」
工房の方がアップの絵画も描いておりました。手元や足が若干
異なりますね。上記の作品よりも静止している感じがします。
Circle Francesco Albani

ジーン・フランソワ・デ・トロイ作 1679-1752年」
陸地に上がってもしがみ続けるサルマキス。もはや執念です。
執念の末、彼女は神々に「どうか離れ離れにしないで」と訴えます。
それは聞き届けられ、二人は融合して両性具有体となったのでした。
Salmacis And Hermaphroditus by Jean Francois de Troy 1679-1752

ジョヴァンニ・カルノヴァリ作  1856年」
両性具有となったヘルマプロディトスは恥ずかしさと悲嘆に暮れ、
「この泉に浸かった者は皆同様の姿になれ」と呪いを掛けたそうです。
呪いを掛けてしまう程嫌だったのね・・・(汗)
こちらはかなり官能的な作品です。
Giovanni Carnovali  Salmacis Hermaphroditus 1856

「François-Joseph Navez 作 1829年」
あれ、ヘルマ君どうした!?
映画のポスターみたいに、格好をつけているお二人。
融合してしばらくした後は仲良くなれたのかしらね・・・?
François-Joseph Navez Salmacis  Hermaphroditus 1829

「Carl Bertling 作  1892年」
だからヘルマ君どうした!?
拒否することなく、両想い的な雰囲気となっております。
このまま二人は結ばれ、両性具有となってハッピーエンドでした
という感じになっちゃっていますね。
Hermaphroditus And Salmacis Oil Painting - Carl Bertling 1892

ヤン・ホッサールト作  1527年」
こちらはかなり猟奇的なサルマキスさんw
私を愛してくれないなら懲らしめてやる!といった感じに見えます。
融合するほどの愛。そうか、彼女はヤンデレだったのか。←ぇ
Jan Gossaert 1527

「イタリアのカプアの壁画  2~3世紀頃」
両性具有体となってしまっているのが分かりますね。
この後の彼の行方は書かれていませんが、愛を拒否した女性と
一生寄りそって生きていかなければならないと考えると、
恐ろしいように思えます。ストーカーより怖いわ・・・。
hermaphrodite  2nd half of 3rd  CE Capua

 両性具有にまつわる伝説として、以下のようなものもありました。

 プラトンの「饗宴」の中でアリストパネスが語ったとされる演説がある。アリストパネスは、かつて男と女の他に両性具有者がおり、いずれも手足が4本ずつ、顔と性器も2つずつあったと説いた。ところが、ゼウスによってそれらを両断したため、手足が2本ずつ、顔と性器が1つずつの2人の「半身」となり、それぞれが残された半身に憧れて結合しようと求め合った。
 そして元々男女だった男と女が互いの半身、すなわち男は女を、女は男を求める事になった。それが男女の愛であると説いた。

 この物語からも分かるように、かつて両性具有は「男女が融合し、一体となった存在」と考えられていました。実際にはそう明確な話ではなく、男性と女性の素質を合わせ持った方(インターセックスと呼ばれる)は様々なパターンが存在します。インターセックスの方は約2000人の一人の確率で生まれてくるとされ、染色体やホルモンや生殖器が他の人と異なる事より生じてしまいます。「男だけど女の染色体がある」や「女だけど男性ホルモンが異常に多い」という人もインターセックスに含まれ、中には「自分はどちらの性でもない」と感じる人もいるようです。

 ヘルマプロディトスもそうですが、両性具有であるという事は様々な悩みや不安を感じると思います。男女という常識の枠組みに縛られず、ありのままの自分を出していって欲しいなと感じます。(なんか偉そうなまとめをしてすみません^^;)

→ ニュムペー達にさらわれた美少年ヒュラスについての絵画を見たい方はこちら


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