ギリシャ神話に登場するハルピュイアはハーピーとも呼ばれ、アルゴナウタイの航海やアイネイアスの冒険のシーンに現れています。上半身が女性で下半身が鳥の姿とされ、翼で上空を飛んでいます。
地母神ガイアと海神ポントスの子タウマスと、オケアノスの娘エレクトラの間に生まれたとされています。人間に未来を教えた為に、神の怒りを買って盲目にされたピーネウスという王がいるのですが、更に苦しめようと神々はハルピュイアを遣わしました。王が食事を食べようとする度に、上空からハルピュイアの大軍がやってきて、食べ物をさらっていきました。残った食物も臭気が凄くて食べられたものではなかったとか・・・。地味に酷い嫌がらせです。
その後、ハルピュイアはアルゴナウタイの遠征隊によって追い払われ、違う島に移住しました。そこに上陸したのは英雄アイネイアスと仲間達。彼等が食事をしようと準備すると、同様にハルピュイアがやってきてご飯をかっさらいました。彼等が剣で切りつけようとしても、素早いし固いしで無駄に終わります。ハルピュイアは「旅の終わりに恐ろしい飢えが起こる」と予言して飛び去ってしまいまいした。アイネイアス達は予言通り飢餓に襲われましたが、終着点へ着いて事なきを得たそうです。
では、怪鳥ハルピュイアについての絵画13点をご覧ください。
「スペインのリリアの考古学博物館所蔵 床板の装飾 13世紀」
中世時代のハルピュイアと思われる図。なんか、人面ダチョウ
といった感じですね^^;
「中世彩飾写本の挿絵より 1350年」
こちらも中世のハルピュイアの挿絵。人面鷲のような感じですね。
お、おじさんに見えるんですけれど・・・。
「Melchior Lorck 作 1582年」
こちらはだいぶ立派なハルピュイアさんです。元はクレタ島に
伝わる竜巻やつむじ風を司る女神だったとされ、虹の女神イリスの
姉妹ともされています。確かに見た目的には天空の女神と
言った感じですね。
「ウリッセ・アルドロヴァンディ著の「怪物史」の挿絵より 1642年」
な、なんか翼を閉じて生真面目な顔をされると、シュールさが
醸し出されますね。鳩人間っぽい・・・。
「ヴィンチェンツォ・カルタリ作 1531-69年」
ハルピュイアの「うししっ」って表情にウケました(笑)
男性を襲って食べようとしている蛇女性はラミアでしょうか?
同じ女人の怪物として積もる話でもあるのかな。女子会?←ぇ
「ミテッリ,G.M が彫りアンニーバレ・カラッチが刷った版画 1663年」
アエネアスとハルピュイアの戦いの図。島に降り立った彼等が
そこにいた家畜を料理し、食べようとしたところハルピュイアが
奪ってきたのです。ハルピュイアは素早くて硬くて、攻撃を加える
事が全然できなかったとされています。
「フランソワ・ペリエ作 1646-47年」
こちらもアエネアス達とハルピュイアの争い。アエネアスは女性や
子供に「大丈夫だ」と英雄的な態度を示しており、戦士達が
果敢にも立ち向かっていますね。
「ピーテル・パウル・ルーベンス作 1636年」
二人の天使がハルピュイアを追い立てている作品・・・かと思ったら、
彼等は北風の神の息子カライスとゼーテースであると、読者様から
教えていただきました!感謝です。二人はピーネウスと義兄弟の
仲で、ハルピュイアを追い立てたそうです。
「Erasmus Quellinus(子)作 1678年」
ルーベンスの作品をお手本にしてエラスムスさんが描いた作品。
二作品を見比べてみると、忠実に描いたことが分かりますね。
ハルピュイアの足が七面鳥の丸焼きに見えてしまうのは私だけ・・・?
「Paolo Fiammingo 作 1540-96年」
こちらもハルピュイアが島を追い出される場面を描いた作品。
北風の神の息子二人はアルゴナウタイの遠征中に活躍した
そうです。それにしてもこの作品はハルピュイアを追い立てて
いる翼の人が5名ぐらいいるような気がする・・・^^;
「ギュスターヴ・ドレ作 1861年」
ダンテの「神曲」にもハルピュイアは登場します。地獄の「自殺者の森」
において、自ら命を絶った者が樹木に変化させられ、ハルピュイアに
よってついばまれるとされています。モノクロも相まって怖く見えます・・・。
「エドヴァルド・ムンク作 1899年」
「叫び」で有名なムンクもハルピュイアを描いています。死の間際と
思われる男性の元に現れています。死の象徴であるカラスに
変身できるケルトの戦女神モーリガンのような雰囲気がありますね。
ハルピュイアは予言もできるようで、死の予言をしたのでしょうか。
「Johan Pasch 作 1747年」
ハルピュイアとは直接的な関係はありませんが、気になりまくった
ので掲載しました。そのタイトルは「鶏の絵」。いやいやいや、
絶対に鶏じゃないでしょうww 宮廷のご婦人方と画家がふざけて
仕上げた作品なのかしら。シュールで面白い作品です^^
上記の「鶏の絵」について色々調べてみたら、ヨハンさんはスウェーデンの宮廷画家で、モデルの一人はホルシュタイン・ゴットルプ朝の初代国王アドルフ・フレドリクの王妃である、ロヴィーサ・ウルリカ・アヴ・プレウセンさんらしいです。王妃様をこんな鶏にしちゃったんですね・・・。
「Ulrika Pasch 作 1735-96年」
本物のロヴィーサ王妃はこのようなお姿。きっと真正面で決め
ポーズを決めている彼女ですね。ちなみに、この肖像画を
描いた女流画家は、鶏の絵を描いたヨハンさんの姪っ子です。
こんな綺麗な王妃を鶏にしちゃって、国王は怒らなかったのかしら。むしろ楽しんで見ていたのかも。御心が広いお方ですね^^ ハルピュイアに全く関係ない話になっちゃいましたが、私もそんな面白い肖像画を描いてもらいたいなぁ・・・。←ぇ
→ アルドロヴァンディの「怪物史」の怪物についての絵画を見たい方はこちら
コメント
>> 美術を愛する人様へ
こんばんは^^
教えてくださりありがとうございます!
彼等は北風の神の息子達なのですね。
そしてピーネウス王の義兄弟だったとは。
てっきり天使だと思ってしまいました…(汗)
早速記事を変更させていただきます!
キリスト教の影響ではなく、北風の神ボレアースの息子、カライスとゼーテースですよ。彼らは翼が生えてますから。
ピーネウスは「ボレアースの息子が来たら食事ができる」と預言されていて、ピーネウスの義兄弟でもある二人(ピーネウスの妻クレオパトラ―はボレアースの娘)がハルピュイアイを追いたてたんです。
>> スナップ写真の謎を追え!様へ
こんばんは^^
ま…まさかキュビズムの一体系だったとは!
最先端の多様的な視点の集大成だったのですね!
だが、イタリア未来派のジャコモ・バッラの「鎖に繋がれた犬のダイナミズム」のように、実は高速で首を振っているのを表現しているのかもしれない!
残像の影響で、皆が違う方向を向いているように見えるとか…!
…なわけがないですねw
わかったぞ。
これは絵だ。しかも写実ではない。
つまり……、見えているものが現実をそのまま写しとったものとはかぎらんのだ!
この絵は非常にわかりにくいタイプのキュビズムで、ほんとうは皆、おなじ方向を向いているのだが、立体的に分割を行なって別の角度からの視点をひとつの画面にまとめているので、違う方向を向いているように見えるのだ!
つまり……、
三人は正面から見た図、二人は右から見た図、一人と一羽は下から見た図で、それらを合成するようにしてひとつの平面上に表現しているのだ!
……なわけねえべw
>> モディリアーニ風の肖像を描いてほしい人様へ
こんばんは^^
ルノワールやルドンではなくモディリアーニですか!
面長な感じになっちゃいますね^^
私はやっぱりボス師匠の怪物のような肖像画を求むw
中央辺り三名はしっかりとこちらを見ていますが、二人は左側、左の人はどこか虚ろな視点ですねw
記念撮影中に、イケメンやスイーツ等を見て気が散ってしまったのかも…!←ぇ
でもカメラ目線がやたら印象に残る作品です^^;
>> オバタケイコ様へ
こんばんは^^
完璧に羽毛むしられてますよねw
炙られるのも時間の問題かも…。←ぇ
Melchior Lorck さんの絵は頭が人間で身体が鳥なので、描いている具合は「鶏の絵」と同じなのですが、スタイリッシュに纏められていますよね。
胸の影響…なのか!?
ヨハンさんの絵、タイトル思いつきました。
『記念撮影うぇーい、ってカメラどこやねん? カシャ』
……スナップショットっぽいなーと思ったけど、なんか視線がバラバラ……? 三つくらいカメラあるの? って思ってしまったのでw
私も七面鳥の丸焼きに見えます。美味しそう( *´艸`)
Melchior Lorck 作の絵は見事ですね。さりげなくおっぱいがちゃんと描かれているところが憎いです。ムンクはタッチですぐムンクだと判りますね。
>> 美術を愛する人様へ
こんばんは^^
ほぼ全員がカメラ目線で目が合うから、どうしていいか分からなくなりますよねw
迦陵頻伽、名前なら聞いたことがあります。
調べてみると、姿が高尚で東洋風なハルピュイアって感じですね。
迦陵頻伽は上半身までが人間だからそこまで不気味ではなく、神秘的な雰囲気があります。
「鶏の絵」の奥方が華麗な歌声を響かせながら近づいてきたら、私もなりふり構わず全力で逃げます(笑)
>> 美術を愛する人様へ
こんばんは^^
モノクロだからより一層闇深く、死に近い感じがしますよね。
ムンクにとっての死の使いだったのかな…と思ってしまいます。
女性の容姿に異形の身体だと、先日のメリュジーヌもそうですし神秘性が感じられる存在が多いですよね。
やはり地母神というか古来からの女性崇拝に関係しているのかもしれません。
男性の顔に動物の身体だと…何か怪物がいたかしら?
(ミノタウロスは牛頭で反対だし、狼男も狼顔だし、パーンもあまり神秘を感じないような…)
唯一ケンタウロスがそれっぽいかな?
象徴主義の画家は異形に憧れというか、神秘性や官能性を求めて描いているような気がします。
「怪物に食べられてみたい」と思って、描いていた画家もいたかもしれませんね…(-▽-)
私も「鶏の絵」をはじめ見た時、混乱しました^^;
言い方は悪いですが、無駄に上手だから独特のシュールさが出ているんですよねw
最後の鶏の絵、当時の人のおふざけだったんだろうなと想像しますが、お澄まし顔が逆に怪物として描かれたハルピュイアより怖いかも。
そういえば極楽の鳥と言われる迦陵頻伽も人面の鳥ですよね。
リアルで存在したらこうなるのでしょうか。
こんな集団が近づいてきたら、多分どんな美声でも全力で逃げます。
ムンクの作品でこんなのあったんですね、怖い!
翼が入りきってないからどこまでも闇が続いているように見えてしまいますね…いうて下の骸の存在感がすごいですけどね
スフィンクスの時も思ったんですけど女性の顔と動物の身体がアンバランスで不気味、でもそこに惹かれるものがある、そんな感じです(何かの拍子で笑えてしまう時もあるのですが汗)
野性の性と女性の顔を持った怪物(?)になら食べられたみたい…!なんて画家さんたちは少なからず思っているから人気のテーマとして今も存在するのでしょうか?
ところで「鶏の絵」はふざけた感じなのに一人ずつ羽の色とかポーズが違ったりと謎の気合の入りようでどう反応していいかわからないですwwww