ギリシャ神話に登場するアリアドネは、英雄テセウスを愛して援助するも、バッカス神(デュオニソス)と結婚する事になった女性です。
クレタ島の王ミノスと妃パシパエの娘であり、ゼウス神の孫でもあります。彼女はアテナイからやって来たテセウスを愛してしまいます。テセウスはラビリンスに幽閉されているミノタウロスを退治しようと、生贄に立候補していました。アリアドネは「妻にして、此処から連れ出して欲しい」という条件付きで援助を申し出、テセウスはこれを了承します。アリアドネは剣と毛糸を渡し、「これを入り口に結んで進み、ミノタウロスを倒したらこれを手繰って戻りなさい」と助言しました。テセウスは言われた通りに行って生還し、アリアドネを連れてクレタ島を出航しました。
しかし、彼等がナクソス島で休憩を取っていると、バッカスがアリアドネを横恋慕。レムノス島へ攫って行ってしまいます。残されたテセウスは探し回って諦め、一人でアテナイへ行ったとされています。また、バッカスが「アリアドネをください」と現れ、テセウスはそれを了承したという説もあり、アリアドネに飽きたテセウスが見捨ててしまい、バッカスが「僕の妻にしてあげる」と慰めたという説もあります。いずれにせよ、アリアドネの恋は実らなかったのです。その後、バッカスとの間に子供を4人産み、彼女が亡くなった時には王冠を星座にしてあげたのです。
悲恋のアリアドネの絵画13点をご覧ください。
「Niccolò Bambini 作 1651-1736年」
妻にして、此処から連れ出して欲しいという条件でテセウスを
助けるアリアドネ。剣と毛糸を渡し、入り口に糸を縛って伝っていけば、
迷宮であろうと絶対に迷わない事を教えます。
「Pelagius Palagi 作 1775-1860年」
よく考えれば、アリアドネとミノタウロスは異父兄弟であり、
テセウスは配下国の王子なのですが、恋により盲目となった
アリアドネは気にしません。ミノタウロスを倒すアドバイスしまくりです。
「シャルル・ド・ラ・フォッス作 1829-1910年」
こちらの絵画ではラビリンスの入り口にまで入り、アドバイスを与える
アリアドネ。この顔付きだと、なんだかミノタウロスが住んでいるルート
も知っていそうですよねwアリアドネ恐るべし。
「ジョン・ウィリアム・ウォーターハウス作 1898年」
生還したテセウスは、アリアドネを連れて故郷へ出航します。
象徴主義のウォーターハウスは二頭の豹に囲まれたエキゾチックな
アリアドネを描いています。豹はバッカス神の聖獣のようです。
「イーヴリン・ド・モーガン作 1877年」
しかし、アリアドネはナクソス島でテセウスに捨てられてしまいました。
独りぼっちでうつむき、愛する者に裏切られた絶望に打ち
ひしがれています。
「アンゲリカ・カウフマン作 1764年」
そこへ現れたるは酩酊の神バッカス。「美しい人よ、泣かないでおくれ。
僕のお嫁さんになってよ」と彼女を慰めます。
作者さんは女流画家で、繊細な感じが表れていますね。
「アンゲリカ・カウフマン作 1790年」
アンゲリカさん二枚目。26年後に描かれました。
「テセウスじゃなきゃ嫌」と拒否の姿勢を見せるアリアドネに、
バッカスは「僕の方が素敵だよ」と微笑みを見せています。
お付きのクピドもバッカスを応援しているようですね。
「シャルル=アンドレ=ヴァン=ルー作 1705-65年」
「バッカス様、私を娶ってください!」という決意を秘めたような
アリアドネ。一見美しい作品なのですが、左上にいる天使が、
ちょっと怖い・・・。あと、所々バランスが不思議な感じに・・・。
「ティントレット作 1576-77年」
愛の女神ヴィーナスまでもが応援に駆けつけてくれた作品。
恋に破れたアリアドネを不憫に思ったヴィーナスが「天から恋人を
授けてあげる!」とバッカスを遣わしたという逸話もあります。
致せり尽くせりな感じですね。
「Gerard de Lairesse 作 1676-82年」
バッカスは結婚の贈り物に、宝石を散りばめた黄金の王冠を授け
ました。クピド一同、皆が二人の結婚を祝っていますね。
アリアドネが亡くなる際、この王冠は天へと上げられ、かんむり座の
星座となったと言われています。
「ジョシュア・レノルズ作 1723-92年」
アリアドネの肖像画風の作品。彼女は以前女神として崇拝されていた
という説があり、名前の意味は「清らかな娘」。テセウスと別れて
神と結ばれるのは必然的な成り行きだったのかもしれません。
「ジョン・ラヴェリー作 1886年」
バッカスとの間に4人の子供をもうけ、幸せな生活を手に入れても、
かつての愛する者が忘れられず、遠くの地平線を眺めるアリアドネ。
この淡い儚い恋心は、一生胸に刻まれていたのでしょうか・・・。
「ベネデット・ジェンナーリ 2世作 1702年」
テセウス、アリアドネ、パイドラの三人が描かれた作品。
運命とは皮肉なもので、テセウスはアリアドネの妹パイドラと結婚します。
しかもパイドラは義理の息子に恋をして、失恋して暴挙に入り、挙句に
自らの命を絶ってしまいます。テセウスに関わらない方がいいような・・・(汗)
アリアドネの死因については分かっておりませんが、女神アルテミスによって弓で射られてしまったという説があります。アラクネのように、女神様に対して「私の方が優れているわ」と言ってしまったのでしょうかね・・・?
アラクネは機織りを仕事としており、「女神アテナより私の方が上手よ」と言ってしまった女性です。それを聞いたアテナは怒り、機織り勝負の末、アラクネを蜘蛛に変えてしまったのです。アリアドネとアラクネは名前がどことなく似ているし、糸を道具として使っている点で、ちょっとだけ共通点があるように思えるのは私だけでしょうか。アリアドネが女神として崇拝されていた歴史があったのなら、「私の方が優れている」という展開になるのも頷けるし、アラクネはそこから派生した女性なのかもしれませんね。
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【 コメント 】
>> アルテミスの矢様へ
こんばんは^^
遥か地平線を眺め、想いに馳せる美女…。
叙情的で絵になる構図ですよね。(いや、絵だってw)
「アルテミスに射られた」というのは比喩で、アリアドネは急死した可能性があるんですね!
確かにバッカスと子供達と平穏に暮らしていて、アルテミスの襲撃に会うのはちょっと理不尽かもしれません。
恋愛や傲慢問題の可能性も無きにしも非ずですが、病気か何かで急死してしまった、と考える方が自然のように思います。
こんばんは。
ラヴェリーさんの絵、詩的ですね^^
アリアドネの場合は知らないのですが、女性が急死した場合、「アルテミスに射られた」という表現を使うらしいです。
なにかの本の解説に書いてありました。