アリストテレスの絵画13点。ギリシャの哲学者であり、アレクサンドロス大王の師匠 | メメント・モリ -西洋美術の謎と闇-

アリストテレスの絵画13点。ギリシャの哲学者であり、アレクサンドロス大王の師匠

スポンサーリンク

 アリストテレス(前384-前322)は古代ギリシャで活躍した哲学者です。
 プラトンの弟子であり、プラトンの師匠であったソクラテスと共に西洋最大の哲学者として数えられています。哲学だけではなく、形而上学、倫理学、政治学、宇宙論、自然学(物理学)、気象学、生物学、詩学、演劇学、心理学など多岐に渡る研究により、「万学の祖」と呼ばれています。アリストテレスは人間の本性が「知を愛する(フィロソフィア)」であると考え、それが哲学(フィロソフィー)の語源となりました。また、彼はマケドニア王アレクサンドロス大王の師でもありました。

  トラキア地方のスタゲイロスに生まれたアリストテレスは、幼少期の時に両親を亡くし、義兄の元で暮らしました。十代後半の時にアテナイへ行き、プラトンが主催する学園アカメデイアに学徒として入門します。その20年後にプラトンが亡くなると、アリストテレスは学園を辞めて学友ヘレニアスの勧めでアッソスの町へ行きます。そこでヘルミアスの姪であるピュティアスと結婚し、紀元前342年頃にはマケドニア王の招へいによりアレクサンドロスの教師となりました。

 彼がアレクサンドロス大王となって即位すると、アリストテレスはアテナイへ戻って学園「リュケイオン」を開設しました。かつてのプラトンと同じように、アリストテレスは弟子を呼び、様々な議論を交わしたのです。しかし、紀元前323年にアレクサンドロス大王が死去すると、状勢が不安定となった為に彼は母方の故郷エウボイア島のカルキスに移動しますが、病に倒れて62歳の生涯を閉じてしまったのです。
 アリストテレスの絵画13点をご覧ください。

 

「パオロ・ヴェロネーゼ作  1528-88年」
まるで彫刻の中に納まっているかのように描かれている、騙し絵風の
アリストテレス。彼は賢者風の髭もじゃの老人として表現されている
姿が殆どです。本に乗り、何やら板を見ているようですが、
タブレットをタッチやスワイプしているように見える!?

「ヨース・ファン・ワッセンホフ作  1475年」
少し異国風の洋服を着たアリストテレス。ギリシャの哲学者は
質素な姿で描かれることが多いのですが、この人は宝石だらけの
ぴっかぴかですね(笑)画家はフランドルの人なので、ギリシャは
オリエントっぽく感じたのかもしれません。

「フランチェスコ・アイエツ作   1811年」
中途半端な髪の無くなり方をしてしまったアリストテレス。
哲学だけではなく様々な分野で活躍した彼は「万学の祖」と言われて
います。今から2300年前の人が宇宙について論じていたと思うと、
人間って凄いなと思います。

「ルカ・ジョルダーノ作  1653年」
自分の著書を指し示すアリストテレス。
なんだか旧約聖書の預言者モーセを思い出しました。

「ホセ・デ・リベーラ作  1591-1652年」
暗闇の中で書籍を持ち、なにやら考え事をしているアリストテレス。
黙して語らないところが賢者感を醸し出していますね。
→ 暗黒主義(テネブリスム)についての絵画を見たい方はこちら

「ラファエロ・サンツィオ作  1509-11年」
バチカン教皇庁の中の、ラファエロの間の4つの絵画の内の
一つである「アテネの学堂」。中央にはプラトンとアリストテレスが
描かれています。ダ・ヴィンチの顔をモデルにしてプラトンを描いた
のは有名な話ですよね。

「チャールズ・ラップランテ作  1866年」
アリストテレスは若きアレクサンドロス大王の家庭教師でも
ありました。珍しくおじさんくらいの姿ですね。その師弟関係は
アレクサンドロス大王が夭逝するまで続きました。

「ジェラルド・フート作  1648-1733年」
アレクサンドロス大王の母親オリュンピアスがアリストテレスに
我が子を紹介しています。アリストテレスは「よろしくね」と言った
感じに胸に手を当てていますね。手前のおじさんは師匠の
プラトンかな?

「ルドヴィコ・セイツ作  1883-87年」
奥ではトマス・アクィナスがローマカトリック教会の擬人化の女性に
自らの思想を捧げており、手前ではアリストテレスが気難しい顔を
して書を持っています。カトリック教会はスコラ哲学の方を
お気に召したという事なのでしょうか・・・。

「ドイツのMaster M.Z. 作  1500年頃」
アリストテレスが鞭を持った女性に乗られ、お馬さん状態になって
いる・・・。この衝撃的な作品は、1229-40年にドミニコ会修道士
ジャック・ド・ヴィトリが編集した説教の例話集に含まれたのが
始まりで、西洋中に広まりました。

「ルーカス・クラナッハ作  1472-1553年」
物語としてはアレクサンドロス大王が高級娼婦フィリスに夢中なり、
「駄目だぞ」と説教したというのに、彼女がアリストテレスを誘惑して
策略にかかって「お馬ごっこ」で馬になる。そこへアレクサンドロスが
やって来るというカオスな状態です。クラナッハ特有のセクシーな目線。

「Étienne Jeaurat の追随者作 18世紀頃」
この物語はアリストテレスの逸話や哲学とは一切関係なく、
美女が権威ある賢者さえも屈服させるという皮肉を含んだ作り話です。
アリストテレスは男尊女卑の思想を持っていたようで、それに対しての
揶揄も込められているようです。お馬さんをバシバシ叩いてます。

「レンブラント・ファン・レイン作  1653年」
最後くらいは彼のメンツを保つため、格好いい画像を掲載しますw
立派な衣服を着て、賢者感が溢れるアリストテレスをレンブラントは
描いていますね。手を置いている胸像は、アリストテレス・・・
てなわけがないかw

 哲学だけではなく、様々な分野で活躍したアリストテレス。賢者らしく、彼の著書には様々な名言が残されています。個人的にいいと思った幾つかをご紹介します。

「私は敵を倒した者より、自分の欲望を克服した者の方をより勇者と見る。自らに勝つことこそ、最も難しい勝利だからだ」
「人間は目標を追い求める動物である。目標へ到達しようと努力することによってのみ、人生が意味あるものとなる」
「世間が必要としているものと、あなたの才能が交わっているところに天職がある」
「優秀さは訓練と習慣の賜物である。私たちは美徳と優秀さを持っているから正しく行動するのではない。むしろ正しく行動するから美徳と優秀さを持つ事ができるのである」
「一羽のツバメが来ても夏にはならないし、一日で夏になることもない。このように、一日もしくは短い時間で人は幸福にも幸運にもなりはしない」

――癒しツアー様HPより「アリストテレスの名言・格言

 現代日本にも通ずる、何とも深いお言葉の数々ではないでしょうか。今のところ思想や哲学はちんぷんかんぷんですが、(大学で少しだけ習ったにもかかわらず全て忘れましたw) これを期に入門編を読んでみたいなぁと思います。器が大きい人になれたらいいなw

→ アレクサンドロス大王についての絵画を見たい方はこちら

【 コメント 】

  1. 管理人:扉園 より:

     >> キリギリス様へ
    こんばんは^^
    思ったよりもフィリスさんの作品が多くて、ちょっと驚きました。
    皆様そのような状況がお好きなのか…?←ぇ
    「女の戦い」なかなかシュールな絵ですねw
    男性ばかりの見物人は「俺より強いかも」と思っていたりして…。
    中世の彩飾写本でも女性が調理道具で悪魔を退治している絵がありますし、どこの時代、国でも女は強しですね(笑)

  2. キリギリス より:

    フィリスさんのお話、世紀末のゆがんだ女性観の賜物だと思っていましたが、けっこう古いお話なんですねw
    リベーラの絵、『女の戦い』という絵をこないだプラド美術館展で観てきました。二人の女性が剣で戦っている絵で、オレンジ色の衣服が鮮やかでした。見物人のなんともいえないテンションが怖いけど……

タイトルとURLをコピーしました