オダリスクの絵画13点。オリエンタリズムに流行った、エキゾチックなハレムの美女 | メメント・モリ -西洋美術の謎と闇-

オダリスクの絵画13点。オリエンタリズムに流行った、エキゾチックなハレムの美女

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 オダリスクはイスラムの君主(スルタン)に仕え、ハレムにいる寵姫、または女奴隷のことを指します。
 一夫多妻制であるイスラム社会は、ハレムと呼ばれる居室に何名かの女性を住まわせていました。彼女たちは奴隷の身分ではありましたが、スルタンが気に入り、娶ることで妃の身分となることもありました。日本の大奥に近いものを感じますね。18世紀以降、東洋世界に興味を持つ風潮であるオリエンタリズムが西洋で起こり、様々なエキゾチックな絵画が描かれました。その中でオダリスクは最も好まれた主題で、画家たちは退廃的で気だるく、少し危険な香りのする東洋的なセクシー美女をこぞって表現しようとしたのです。
 異国情緒漂う、オダリスクの絵画13点をご覧ください。

 

「フランソワ・ブーシェ作  1703 -70年」
お、オダリスク?オリエンタリズムが始まって間もない頃は、このような
雰囲気の作品が描かれました。異国的なアイテムの中に、西洋的な
女性。そこからオダリスクの絵画の幅が広がっていったのです。

「ドミニク・アングル作  1814年」
最も有名な作品「グランド・オダリスク」。ブーシェと同じく東洋風な
小物に、西洋的な美女。アングルはわざとプロポーションを
長く描き、女性の曲線美と優美さを引き出そうとしました。
ロマン主義よりの作品で、展覧会でかなりの批判を招いたとか・・・。

「ウジェーヌ・ドラクロワ作  1798-1863年」
アングルと犬猿の仲という噂のドラクロワも、「アルジェの女」以外に
このオダリスクを描いています。粗いタッチの中、服がはだけた女性が
微笑みながらこちらを見つめています。東洋の暑いむっとした空気が
感じられるようですね。

「Pierre Oliver Joseph Coomans 作 1865年」
ポーズがドラクロワの作品に似ているので、参考にしたのかなぁと
思います。西洋人が東洋風の衣服をまとったという感じですよね。

「Franz Eisenhut 作  1857-1903年」
ベッドや壁、置物、従者などは東洋的ですが、オダリスクは西洋風の
女性ですね。オリエンタリズムと同じく、東洋に対する認識がアバウトで、
絵画に様々な国や文化が入り混じっている作品もあります。

「オーギュスト・ルノワール作  1870年」
印象派の巨匠ルノワールは、眉の濃いより東洋らしい容姿の
オダリスクを手掛けています。クッションに寄りかかるポーズは
蠱惑的であり、異国の気だるい魅力が漂っています。

「オーギュスト・ルノワール作 1895年」
この25年後に描かれたオダリスクは、まだ幼い少女のように見えます。
しかし、その振舞いは勝気で、生きる事への力強さというものが感じ
られるようです。達観して大人びてしまった少女、といった風情でしょうか。

「アンジュ・ティシエ作  1814 -76年」
イスラム教の女性は露出が禁止され、顔と手だけが出る衣服ヒジャブ
を着ています。それなのに、西洋の人々は東洋=セクシーという印象で、
東洋の美女を想像で描いています。

「Francesco Ballesio 作  1860 -1923年」
ネックレスを付けた自分の様子を鏡で見る女性。オダリスク=女奴隷
ではなく、オダリスク=妃の候補と思っている画家が多いように思います。
というより、異国的な美女を表す為に主題が用いられているのかも。

「Adrien Henri Tanoux 作  1865‐1923年」
ふっさふさの鏡で自分の容姿にうっとりしています。
オダリスクは美しさだけではなく、歌や踊りなどのステータスも要求
されたそう。

「francesc Masriera 作  1890年」
イスラム風というより、エジプト風の雰囲気を漂わせていますね。
そう言えば、エジプトの女王クレオパトラは17世紀くらいから描かれ
はじめましたが、18世紀頃のオリエンタリズム到来でぐっと異国風の
姿になっていたように思います。

「ジーン・ジョゼフ・ベンジャミン・コンスタント作  1882年」
ヒョウの毛皮の上で横になり、鑑賞者をじっと見つめるセクシー美女。
左側では黒人の男性と女性が何やら話しています。もしかしたら
オダリスク同士で虐めがあったり、従者と駆け落ちなんてのがあった
のかもしれませんね・・・。

「Edouard Frederic Wilhelm Richter 作 1844 - 1913年」
ちょっとぽっちゃりめのオダリスク。容姿がイスラム系ではなく、中国や
日本の雰囲気を感じるように思います。寝ているか座っている構図が
多い中、神殿の中で立っている絵は珍しいです。

 オダリスクはスルタンの側女であり、男性を破滅させる悪女ではありません。しかし、オダリスクの作品の女性表現は、サロメやデリラ、クレオパトラなど、ファム・ファタールに通ずるものがあります。気だるい目線で薄く微笑み、男を誘って破滅させる美女。ラテン系やゲルマン系の女性を見慣れた男性にとって、遠い異国の女性は魅力的であると同時に、堕落的で危険な雰囲気を含んでいるように感じたのかもしれません。やはりキリスト教とイスラム教の隔たりというか、宗教や文化の違いがあるのでしょうかね・・・。

→ オリエンタリズムについての絵画を見たい方はこちら
→ クレオパトラについての絵画を見たい方はこちら

【 コメント 】

  1. 管理人:扉園 より:

     >> あれっ様へ
    こんばんは^^
    そう言われてみると、容姿や服なんかも共通しているような気がします。
    カバネルさんと作者Tanouxさんは時代が近いので(カバネルさんの方が42歳年上)、彼の作品を見て参考にした可能性がありますね。
    もしくは同一モデルを使ったとか…。(それはないかw)
    あのポーズ古来からあるんですか!Σ(゚Д゚)
    しかもアリアドネ・ポーズと言うんですね。
    ドラクロワが最初では無くて、由緒正しいポーズだったとは…。
    SNSの自撮り好き女性は、結構な確率で美術史好きとなってしまいますね(笑)

  2. あれっ より:

    あれっ、下から4番目の絵画、カバネルさんのクレオパトラに似てません? (笑)
    横になって腕を上げているポーズ、ルノワールの別の絵にもありますが、アリアドネ・ポーズという古来からのポーズらしいですね。
    SNS でこのポーズの自撮りを見つけたら、その人はきっと美術史好き^^ ……なのかw

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