女王クレオパトラの絵画13点。知性と色香で国を動かした、絶世の美しさを誇る悪女 | メメント・モリ -西洋美術の謎と闇-

女王クレオパトラの絵画13点。知性と色香で国を動かした、絶世の美しさを誇る悪女

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 クレオパトラ(紀元前69‐30年)は古代エジプトに栄えたプトレマイオス朝の最後の女王です。
 本名はクレオパトラ7世フィロパトル。絶世の美女とされ、話術が得意で何か国語も話すことができたそう。彼女が生きたプトレマイオス朝は激動と混乱の時代でした。若干18歳でクレオパトラは弟のプトレマイオス13世と兄弟婚をし、共同政策を行いました。しかし、二人の間に亀裂が走り、内戦が勃発します。ローマとの同盟こそが重要であると考えたクレオパトラは、ユリウス・カエサルに目を付けます。女王は自らを寝具袋(絨毯とも)にくるませ、アレクサンドリアにいたカエサルの元に届けさせました。彼女はカエサルを魅了し、ナイルの戦いでプトレマイオス13世を戦死させます。クレオパトラは国の統治を図りますが、今度はカエサルが暗殺されてしまいます。

 その後、ローマはカエサル派である三名が権力を持ち、三頭政治を行っていました。その一人であるアントニウスに呼び出された時、彼女は美しく着飾ってお色気攻撃を図りました。彼はそれに引っかかり、二人は愛人となって三人の子をもうけます。アントニウスはクレオパトラに深入りしずぎた為、ローマ市民に不興を買ってしまい、オクタヴィアヌスに人気が集まるようになりました。クレオパトラ側はとオクタヴィアヌスと海戦を行いましたが、あえなく敗北。アントニウスは自害し、クレオパトラも毒蛇に自らの身体を噛ませて自害をしたと伝えられています。こうしてプトレマイオス朝は滅亡してしまいました。
 世界三大美女とされ、悪女ファム・ファタールともされている女王クレオパトラの絵画13点をご覧ください。

 

「アレクサンドル・カバネル作  1887年」
エジプトのエキゾチックな雰囲気を漂わせている作品。エジプトと
言ってもプトレマイオス朝はギリシャ系の王朝だった為、クレオパトラは
ギリシャ人と考えられています。背後では罪人?の死体が運ばれています。

「ギュスターヴ・モロー作  1887年」
クレオパトラは世界三大美女の一人として、絶世の美女の代名詞とも
されていますが、彼女が美人であったという記述はありません。
どちらかと言うと知的美人といった感じで、身のこなしや話術が優雅
だったのでしょう。声は小鳥のようだったと伝えられています。


「ジャン=レオン・ジェローム作  1824‐1904年」
絨毯から女王様が出てきて、カエサルが仰天している有名なシーン。
こんなセクシーな女王様がじゃじゃーんと出て来たら、そりゃ驚きますよね。
→ ユリウス・カエサルについての絵画を見たい方はこちら

「ローレンス・アルマ=タデマ作   1885年」
アントニウスとクレオパトラを描いた作品。女王は神輿のような物に
ゆったりと座っています。その奥ではっとした表情を浮かべているのが
アントニウス。一発でノックアウトですね。

「Gerard De Lairresse 作  1675-80年」
クレオパトラの饗宴を描いた作品。招かれたローマ将軍であり愛人である
アントニウスは、余りの豪華さに驚いています。クレオパトラの耳には
大粒の真珠が光っており、彼女はそれを取り外します。


「Andrea Casali 作  1705-84年」
「あら、豪華絢爛な催しをしていても、私は富や財産には執着していないのよ」
とクレオパトラは言い、持っていた大粒の真珠をあろうことかワイングラスに
入れて溶かし、そのワインを飲んでしまいました。

「ヤーコブ・ヨルダーンス作  1653年」
富の執着を見せない為と言いますが、高価な真珠を溶かすなんて
逆に嫌みや見せびらかせのように感じてしまう庶民の私。
アントニウスはちょっと下卑た顔をしていますね。左の道化はそんな彼を
指さし、単純な奴だなぁと嘲笑っているように見えます。

「カルロ・マラッタ作  1695年」
この逸話は彼女を象徴する話となり、真珠の耳飾りとグラスは
クレオパトラのアトリビュートともなっています。
→ アトリビュートについて知りたい方はこちら

「ポンペオ・バトーニ作  18世紀」
アクティウムの海戦の後、捕虜となったクレオパトラがオクタヴィアヌスに
嘆願しているシーン。彼はカエサルの養子であったので、「私はカエサルの
愛人だったのよ。だから、許・し・て」と言っているのでしょうか。

「Louis Gauffier 作  1787-88年」
こちらも捕虜中のクレオパトラがオクタヴィアヌスに助けを求めています。
史実は分かりませんが、もしかしたらここでもお色気作戦が発動した
かもしれません。彼はそれには引っかからなかったようです。

「ポンペオ・バトーニ作  1763年」
愛人アントニウスはクレオパトラが死去をしたという誤報を受け、自害を
図ります。アントニウスは瀕死の状態で彼女の元へ届けられますが、
その腕の中で息を引き取ります。絵画だと脇腹の辺りから流血していますね。

「アルテミジア・ジェンティレスキ作  1593‐1653年」
愛しい人の死を受け、クレオパトラも死ぬ決意をします。一説には
贈答品のイチジクの中に毒蛇を忍ばせ、身体を噛ませて死亡したと
伝えられています。噛まれた場所は腕や胸とされています。

「ピエール・ミニャール作   1635年」
絵画では二人の侍女も描かれることが多いです。一人はクレオパトラと
共に自害しました。足元にはイチジクが入った籠があります。
赤と青の対比が鮮やかな作品。

 紀元前に生きた王女クレオパトラは多くの謎をはらんでいます。「クレオパトラの鼻がもう少し低ければ、歴史は変わっていただろう」という言葉を哲学者パスカルは残しましたが、彼女の容姿が鼻梁が高くてすこぶる美人だったという記述は見あたりません。パスカルが生きた17世紀には、もう半ば伝説の人物になっていたのです。
 また、蛇の毒での自害は実際数時間から数日かかってしまうそうで、実際は服毒自殺なのではないかという説が有力になっています。確かにイチジクに潜ませていた蛇を胸に噛ませて死亡、なんてドラマチックな創作物語のように感じます。胸に噛ませる、という部分もセクシーなクレオパトラのイメージと結びついて、後年作られたもののように思えます。クレオパトラはイエス・キリストよりも古い人物なのだから、物事が歪曲化されたり、尾ひれ背びれが付いても不思議ではありませんね。

→ クレオパトラの死の絵画をもっと見たい方はこちら

 

【 コメント 】

  1. 管理人:扉園 より:

     >> 美術を愛する人様へ
    こんばんは^^
    拝見してくださりありがとうございます!
    モロー氏の作品は煌びやかで美しいですよね。
    濃厚な雰囲気のある独特のタッチで、彼の作風はサロメやクレオパトラなどの美女にふさわしいように感じます。
    ゼウスとセメレーの作品は本当に緻密で眺めるのが楽しいです^^
    ですね。現代のクレオパトラの印象はエジプトメイクをした黒髪のおかっぱ美女という感じだと思います。
    当時の流行ヘアーを取り入れた結果というのははじめて知りました…。
    絵画では色白の金髪美女で描かれる場合もありますが、ギリシャ人でしたから、実際はギリシャ彫刻のような褐色の髪に彫りの深い顔立ちだったのかもしれません。
    クレオパトラは当時の画家の流行や美意識が反映されていると思うと、面白いですね^^

  2. 美術を愛する人 より:

    こんにちは
    モローさんの作品が見たくなって色々見させていただいています😺
    近々画集もインターネットで探そうかと思っています…
    クレオパトラの作品はどれもゴージャスでほとんどがエキゾチックですね!
    モローさんの作品もやっぱり独自の世界観があってクレオパトラの雰囲気がすごく出てると思います、細かい部分まで見たくなるんですよね✨
    クレオパトラといったらおかっぱみたいな黒髪ストレートのイメージだったんですが、
    高校時代に塾で見たBBCのドラマではクレオパトラは無造作な短髪(だった気がします)だったので「あれ?」と思って先生に話したら、
    「昔にその当時の流行の髪型で映像化したからそれがイメージになったのかもね」と仰っていて納得した記憶があります💃
    今回の作品の数々を見ていてもそうですね、髪型は多種多様…(?)
    しかもちょっと前に知ったのですが彼女はギリシャ人なので西洋風なクレオパトラさんも描かれていて、元は我々のイメージとは少し違うのかもしれませんね😸

  3. 管理人:扉園 より:

    >> 季節風様へ
    こんばんは^^
    カバネルの作品はオリエンタルな雰囲気が濃く、鮮やかな色彩で美しいですよね。
    よく調べてみたら「死刑囚に毒を試すクレオパトラ」という題名でした。
    クレオパトラ様はソファーにのんびり座り、「あら、あの毒は思ったより時間がかかるのね」とか言っているのでしょうかね^^;
    そうなんですね!
    美容の為に真珠を溶かした説もあるのですか。
    真珠の成分は炭酸カルシウムのようですが、身体にはいいのかしら…?
    アントニウスはローマとしての立場よりもクレオパトラを選んだ為、「女王に骨抜きにされた男」という印象が強いですね。
    政治的には器が大きくなかったかもしれませんが、クレオパトラが亡くなったという誤報で悲しみの末自死したあたり、悲劇の登場人物のような、情に厚く激情型の人物だったのかもしれません。
    カエサルはクレオパトラを愛しつつも、野望に忠実だったというか、政治を行い国を動かす事を優先した「現実的」な人物だったのだと思います。

  4. 季節風 より:

    アレクサンドル・カバネル作のが私のイメージに合い好きです。「初期のクレオパトラの日常」という感じがします。運ばれている人や倒れ込んでいる人は女王の命令で毒の人体実験をさせられているのではと思うんです。服毒自殺も考えねばならないほどクレオパトラは命を狙われる存在だったということです。誤解だったら申し訳ないです。
    真珠を溶かして飲むと色白になると言われていたからという説もあります。日本的イメージの真珠がクレオパトラのアトリビュートなんですか、むしろ私は嬉しいです。
    シーザーとオクタヴィアヌスは色香に惑わされなかったということでアントニウスより器が大きいのではないですか?シーザーは確かにクレオパトラを愛したけどアントニウスほど情けないことになっていないのでは。これも私が無知なせいかもしれませんが。

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