イグナチオ・デ・ロヨラの絵画13点。ザビエル達とイエズス会を創設した元軍人の聖人 | メメント・モリ -西洋美術の謎と闇-

イグナチオ・デ・ロヨラの絵画13点。ザビエル達とイエズス会を創設した元軍人の聖人

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 イグナチオ・デ・ロヨラ(1491-1556)はイエズス会の創設者の一人であり、初代総長の修道士です。
 バスク地方のギプスコアにある城で生まれた彼は、12兄弟の末っ子でした。15歳の時に親戚の騎士の従者のとなり、20代後半の頃には軍人として各地を転々としていました。しかし、1521年に行われた戦争で銃弾が足に当たり、父の城で療養を余儀なくされました。
 療養中にロヨラはキリストの物語や聖人伝を読み、聖人達の生きざまに感銘を受けます。その時から彼の夢は「聖地に赴いて異教の者をを改宗させたい」となったのでした。ロヨラはそれからベネディクト会修道院を訪れて世俗的な生との決別を誓い、啓示を受けました。

 教養と神学を知る為にアルカラ大学とパリ大学で学び、その間に6名の同志を得ました。1534年にロヨラと6名の仲間はモンマルトルの丘に登り、今後7人は同じグループとして活動し、神に生涯をささげる誓いを立てました。これがかの有名なイエズス会の始まりで、その中にはフランシスコ・ザビエルもいました。教皇パウルス3世に修道会としての認可をもらい、ロヨラは初代総長となりました。 
 ロヨラは会員達を各地に派遣して、一般学校と神学校を創設させます。そして1548年に著書「霊操」が出版されました。そこには霊的指導を求めて来た人に対して行った、一連の黙想のテーマ集が書かれています。1556年にローマで死去(マラリアという説があります)。その66年後に聖人として列聖されました。
 では、イグナチオ・デ・ロヨラの絵画13点をご覧ください。

 

「フランシスコ・デ・スルバラン作  1598-1664年」
セピア調のロヨラさん。手の上に浮いているのは「IHS」の文字で、
Iesus Hominum Salvator (人類の救い主イエス)の頭文字だと
されており、イエズス会の紋章にもなっています。

「作者不詳  16世紀頃」
鎧を着たロヨラさん。元軍人ということだけあり、彼は信仰の中にも
軍事的なルールをとり入れ、イエズス会は教皇に絶対的な服従と
自己犠牲をすることを決め、「教皇の精鋭部隊」とも呼ばれました。

「Claudio Coello 作  1680-83年」
三連祭壇画の中央パネル。法衣を来て後光を輝かせたロヨラさん。
本に書かれた文字はラテン語で「神のさらなる栄光の為に」という
意味のようです。イエズス会の標語でAMDGと略せるそう。

「ピーテル・パウル・ルーベンス作  1600年頃」
こちらのルーベンス作のロヨラさんも同様の文字が書かれた
本を持っていますね。赤の法衣の質感がリアルで美しいです。

「ピーテル・パウル・ルーベンス作  1577-1640年」
ルーベンス二枚目。金の衣装を着て高らかに説法をしていますね。
しかし、手前には暴れていたり虫の息状態の民衆達がいます。
おそらくロヨラさんの奇跡で悪霊憑きや病気を治してもらおうと
殺到した様子なのだと思います。

「ミゲル・カブレラ作  1695-1768年」
彼は戦争で足を怪我してしまい、それが元でキリスト教の
道へと進むことになります。その時にマリア様が現れる幻視を
したのでした。ベッドの横に出現です。

「ミゲル・カブレラ作  1695-1768年」
ミゲルさん二枚目。聖書を持ち、天高く登っていくロヨラさん。
足元で踏まれている男は蛇がにょろっと出ているし、悪魔なのかな?
悪魔を踏んづけて下僕化していますね。

「フランシスコ・デ・ゴヤ作  1775-80年」
な、なんだろう。この何とも言えない雰囲気を持った肖像画は。
元軍人という力強さというより、「神を信じ、服従し、自己犠牲し、
異教を改宗させなさい」と目力で訴えかけられているような・・・。

「ドメニキーノ作  1622年」
キリストと神の姿を幻視するロヨラさん。彼の著書「霊操」は瞑想の
手引きが書かれており、罪の認知と懺悔、キリストの救済の観想、
キリストの受難の観想、キリストの復活の観想を四週間に渡って
行うそうです。そうすれば「真の自己」を覚醒させられるとか。

「ホアン・デ・ヴァルデス・リール作  1660年」
ローマで見たという幻視を描いた作品。ロヨラさんは「霊操」で
語った瞑想を行うことにより、キリストや聖霊と交流する事が
できるようになったそうです。結構ありありと見えてますね。

「Francisco Herrera (父) 1622年」
こちらも幻視の世界へと誘われているロヨラさん。天使達が
いっぱい歓迎しております。それにしても、どの絵画もヘアーが
このような感じなのですね。本当にそうだったのかな・・・。

「Cornelis Schut (父)作  1597-1655年」
ロヨラさんはマラリアに罹り、ローマで病死したとされています。
享年64歳でした。しかし、後に聖人として列聖され、彼の意志は
イエズス会の会員達に現代にまで受け継がれています。

「Diego Díez Ferreras 作  1675年」
信徒と思われる女性の元へ現れ、聖なるビームを放つロヨラさん。
背後には大天使が控えており、椅子で悪魔や死神を踏んづけて
いますね。柱や天使が持つ盾にはイエズス会の言葉が書かれています。

 イエズス会の総長として歴史の教科書に載っていたロヨラさん。しかし、私は「イグナティウス・ロヨラ」という名前で覚えました。イグナティウスはラテン語で、イグナチオはそのスペイン読み。彼はスペイン出身なのでそれに合わせよう!ということで「イグナチオ・デ・ロヨラ」と最近になって呼ばれるようになりました。

 時代は変わるようで、現代の教科書ではリンカーンを「リンカン」、ルーズベルトを「ローズベルト」と表記しているようです。・・・え!?リンカン!? 話しはずれますが、ヒエロニムス・ボスも一昔前はヒエロニムス・ボッシュと呼ばれていて、オランダ読みのボスで統一されましたしね・・・。
 あと、カタカナだと表記がバラバラの画家がいますよね。ボッティチェリもボッティチェッリやボッティチェルリと書かれますし、ラファエロ・サンツィオもラファエロ・サンティと書かれるし・・・。カラヴァッジョもジョットも表記がばらばらです。口語を文字に表すからこうなっちゃうんでしょうけれど、カタカナは難しいですね。

 現在の教科書ではロヨラさんはどの名前になっているのかな・・・。教科書で「イグナティウス」になっていて、テストで「イグナチオ」と書いたら不正解になったら酷いですよね。イグナチオでも正解なんだ!と先生に文句を言ってくださいw

→ フランシスコ・ザビエルについての絵画を見たい方はこちら

 

【 コメント 】

  1. 管理人:扉園 より:

     >> 豊臣秀吉を「藤原秀吉」と書いてバツもらった人様へ
    こんばんは^^
    竹千代は徳川さんの方でしたか!
    ぐわぁー知ったかぶりして、めっちゃ恥ずかしいです(/ω\;)
    ロヨラさんの記事で日本史トークw
    いえいえ、こちらこそ正しい知識が危ういんで沈黙を守ります^^;

  2. 豊臣秀吉を「藤原秀吉」と書いてバツもらった人 より:

    あ、また訂正。
    官職ですね、位階じゃなくて^^;
    それと、竹千代は徳川家の嫡男の幼名です( ̄▽ ̄)
    すみませぬ、数だけ見るとコメント数すごいけどふた開けてみたらこんなトークしてるっていうw
    そろそろ黙ります^^;

  3. 管理人:扉園 より:

     >> 豊臣秀吉を「藤原秀吉」と書いてバツもらった人様へ
    こんばんは^^
    知らなかったー!
    豊臣秀吉の幼名は竹千代だったという事は知っていたのですが、色々と改名をしていたのですね。伊達政宗もそんな沢山名乗っていたとは。
    日本史はまったく分かりませんです(^^;

  4. 豊臣秀吉を「藤原秀吉」と書いてバツもらった人 より:

    あ、わかりにくいボケなので自分で解説。
    関白の位階を得るために、藤原姓を名乗る必要があったので、藤原秀吉……
    というやつですw
    他にも、伊達政宗が秀吉から羽柴姓をもらって羽柴越前守と名乗っていたり……徳川の時代になってからは松平陸奥守だったり……
    名前ってややこしいです。

  5. 管理人:扉園 より:

     >> 豊臣秀吉を「藤原秀吉」と書いてバツもらった人様へ
    こんばんは^^
    名前欄を信じかけましたw
    ちなみに私はヴァスコ・ダ・ガマを忘れて、回答にコロンブスと書いておいた人ですw
    袁世凱はユワンシーカイって言うんですか!
    中国語読みで書いたとは、その友人はよほど歴史が好きだったのですね。先生を試す為に書いたのでしょうかw
    先生も正解を付けるあたり流石です。
    キリスト教から見たら、異教は全て「地獄行き」ですからね^^;
    やはり救済の為に正しい方向へ導こう!という良心からの行動なのだと思います。
    幾らかの偏見はあり、強引であるにせよ…。
    「ロビンソン・クルーソー」はあらすじだけで詳しくはないです…(汗)←ぇ
    映画だと多少現代的な脚色がなされているのかな?
    現代ではメディアで様々な異教や異文化を知る機会が多くなりましたが、モニター越しで頭で理解するのと、実際に体験して尊重するのでは大いに違いますよね。
    郷に入っては郷に従えと言いますし、異文化を間近に見ても自然と受け入れられる人になりたいです。
    (ロヨラさんを否定するわけではありませんよ^^;)

  6. 管理人:扉園 より:

     >> 美術を愛する人様へ
    こんばんは。
    おお、イグナティウス仲間ですね^^
    彼は裏表のない豪胆で実直な性格だったようで、行くぞー!と決めたら攻めまくったのだと思います。
    ザビエルさんはわざと剃って剃髪(トンスラ)にしたって感じなのですが、ロヨラさんは天然っぽいですよね^^;
    きっと反射して、光り輝くコロナが自然体で形作られて見えたのかもしれません…。←ぇ

  7. 豊臣秀吉を「藤原秀吉」と書いてバツもらった人 より:

    訂正です。『ロビンソン・クルーソー』ですね。

  8. 豊臣秀吉を「藤原秀吉」と書いてバツもらった人 より:

    中学のときの友人から聞いた話なのですが、
    「テストで袁世凱のところをユワンシーカイって答えた友達がいて、何人だよってバカにしてたら正解でびっくりした。向こうの発音をカタカナで表したんだってね」
    と。
    そういえば教科書にも、日本語読みと現地の読み(カタカナ表記)の両方が載っていたような気もするなあ……(笑)
    異教徒を改宗させたい……というと、される側からすると「え」と思わなくもないですが、する側は良心からなのでしょうね。もちろん、交易目的とかはあるにせよ。
    以前観た映画(だったと思う)の『ロビンソンク・ルーソー』では、宗教が押しつけではなく、異教の尊重みたいな要素が描かれていてびっくりしましたが。(原作は未読ですが、あれはキリスト教的なお話らしいですね。)
    あ、そうそう。名前欄に書いたの、嘘です( ̄▽ ̄)←

  9. 美術を愛する人 より:

    こんばんは。
    イグナティウスの方で覚えた世代です。
    元軍人だったのですね。世界のあちこちに修道士派遣したのも初代からの攻めていこう精神だったのでしょうか。
    しかし頭髪のせいか後光が別の意味に見えるのがちらほら…
    天使の輪などの円環型のコロナはかなり偉大な表現方法だったのかもしれません。

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