クレオパトラの死の絵画14選。絶望した女王は自らの身体を毒蛇に噛ませ、命を絶つ | メメント・モリ -西洋美術の謎と闇-

クレオパトラの死の絵画14選。絶望した女王は自らの身体を毒蛇に噛ませ、命を絶つ

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 クレオパトラは紀元前に生きた、プトレマイオス朝の最後の王女です。
 彼女は18歳で王位に付き、他の兄弟と政権争いをしながら国を動かしていきます。ポンペイウス(子)やユリウス・カエサル、アントニウスらと関係を持ち、カエサルとの間に息子カエサリオン、アントニウスとの間に双子の男女と男子の三人の子供を生みました。しかし、ローマで台頭してきたオクタヴィアヌスとの海戦に敗れ、クレオパトラの立場は危機的状況に陥ってしまいます。愛人アントニウスの死を受けて、彼女も命を絶つことを決心し、自らの身体に毒蛇を噛ませ、息絶えてしまいます。まだ39歳でした。
 美女の代表格となっている王女の死は、多くの画家が取り上げました。毒蛇に噛まれて命を絶とうとしているクレオパトラの絵画、14点をご覧ください。
→ クレオパトラについて、もう少し詳しく知りたい方はこちら

「ドメニコ・マリア・ムラトーリ作  1720年」
オクタヴィアヌスの捕虜となっていたクレオパトラは、アントニウスの死を
受けて自らも蛇の毒によって命を絶ちます。毒蛇は贈答品のイチジクの
中に仕込ませてあったと言われており、絵画では黒人の子供がそれらしき
実を抱えています。クレオパトラの足元には毒蛇がいます。

「レジナルド・アーサー作  1892年」
この近代絵画はエキゾチックで妖艶な雰囲気で、シーンを描いています。
右の籠にはイチジクの葉が置かれており、クレオパトラは胸に蛇を
噛ませています。伝承は腕か胸かどちらかなのですが、絵画の多くは
胸の方を採用しています。

「ジャン=アンドレ・リクセン作  1846‐1925年」
上の作品の侍女は全身で悲しみを表現していますが、この侍女は亡く
なっているようです。作品によって女王と共に息絶えている侍女と、
生きている侍女の二人描かれることがあります。死後までお世話をする
為に、共に逝くことは当時の風習としてあったのでしょうか。

「アルテミジア・ジェンティレスキ作  1630年」
枕に肘をかけ、眠るように亡くなっているクレオパトラ。
白いシーツには小さく蛇が描かれ、二人の侍女は深く悲しんでいます。
劇的ではなく、静寂に満ちた作品。

「Louis Jean Francois Lagrenee 作 1725–1805年」
こちらは映画のワンシーンのような、動的な作品。オクタヴィアヌスは
両手を広げて驚き、双対的な侍女とクレオパトラを見ています。
左側の扉から光が差し込み、女王を照らすことによって劇的な
シーンを演出しています。

「Guido Cagnacci 作 1658年」
こちらは一風変わったクレオパトラの死。
王座に座った少女のようなクレオパトラの腕には蛇が噛みつき、
その周囲にお付きの人が取り囲んでいます。背景は真っ黒であり、
人々が舞台劇をやっているように感じます。

「アンドレア・ソラーリ作  16世紀」
クレオパトラの死のモチーフは彼女の肖像画としても機能し、
毒蛇はクレオパトラのアトリビュートになりました。蛇の頭を掴み、
その牙を物憂げに眺めている女王は、今何を想っているのでしょうか。

「ドメニコ・リッチオ作 1552年」
ちょっと筋肉質なクレオパトラの腕に毒蛇が噛みついています。
ミケランジェロの影響を受けたことがひしひしと感じられますね。

「ピーテル・パウル・ルーベンス作  1615年」
クレオパトラとして紹介されていましたが、行為が不明な為に
断定できません。これは、蛇の毒を強くしているのでしょうか、
それともご飯をあげているとか・・・?←ぇ 分かりません(; ;)
それにしても、ルーベンスの女性はたくましい身体をしていますよね。
言っては大変失礼ですが、蛇握り潰しそうです。

「グイド・レーニ作  1639年」
心臓を指さし、蛇によって鼓動が止まることを暗示しています。
男を手玉にとった女性というより、聖女のように感じられます。
ローマを変えた女性ルクレチアにも通じる作品。
→ ルクレチアについて知りたい方はこちら

「ハンス・マカート作  1840‐84年」
とてもオリエンタルな雰囲気の中、女王は最期を遂げようとしています。
一人の侍女は既に息絶え、左側の炎は吹き消されるかのように
横になびいています。

「ハンス・マカート作 1880-4年」
マカートさん再び。アップの姿でクレオパトラの妖艶さを出しており、
死というテーマというより、セクシーさや美しさを前面に表していますね。
また、クレオパトラはどの死因が一番美しいかを確かめる為、侍女達で
実験していたという噂があります。どこまでもこだわりますね・・・。

「Benedetto Genari 作  1563-1658年」
傷跡から滴る血を描くのは、意外にも珍しいです。蛇に噛まれると
血がどばどば出るんですかね・・・?(恐)
こちらの作品もセクシー路線に走っていますね。

「Benedetto Gennari 二世 作 1674-75年」
豊満な身体を晒し、死を迎えるというより挑発しているように思えて
しまいます。蛇はおまけと化していますね。話の主題からそれて
肉体美へと走ってしまう、セバスティアヌス現象が起きているような・・・。
→ 聖セバスティアヌスについて知りたい方はこちら

 クレオパトラの死を題材にしている絵画は、紹介しきれないくらい多くありました。
 画家によって作品は十人十色なのですが、プトレマイオス朝の最後の女王という歴史的な観点より、いかに蛇に噛まれたクレオパトラをセクシーに描けるか、という主眼にシフトしてしまっている絵画が幾つかあるように思います。美を表すのが美術という考え方もあるかと思いますが、肉体美だけにこだわってしまい、クレオパトラの心情や葛藤を描いていないのも、なんだか勿体ないなぁ・・・という風に感じてしまいました。

 

【 コメント 】

  1. 管理人:扉園 より:

     >> もち様へ
    こんばんは。
    クレオパトラは蛇ではなく服毒自殺では、という話は聞いていましたが、こんな詳細な話があるのですね!
    確かに、教授の話には説得力があります。
    ヘビ毒と聞くと、数時間で命を落としそうな雰囲気がありますが、アレクサンドリアのコブラは数日かかるとは…。
    それは私だって嫌ですね^^;
    アヘンとドクニンジンとトリカブト。見るからに猛毒そう…。
    歴史を揺るがせたエキゾチックな美女の自害という劇的なテーマでは、芸術家はやはり、服毒より蛇を選んでしまいそうですね。

  2. もち より:

    どうも、もちです。
    クレオパトラと毒蛇について調べてみました。
    アントニウスの後を追うようにクレオパトラが自殺したのは紀元前30年8月12日のこと(享年39歳)。アスプコブラに腕または胸をかませて自殺したというのが古来からの通説です。
    トリーア大学の歴史学者Christoph Schaefer教授らは、アレクサンドリアで古代の医学に関する文献にあたり、ヘビ専門家の協力も得て、クレオパトラはヘビにかまれたのではなく毒をあおって自殺したと考えるに足る証拠を得たそうです。
    「美ぼうで知られていたクレオパトラが、時間がかかり外見を損なう死に方を選ぶとは考えにくいです。彼女は美しいまま亡くなって、死後も伝説的美人としての評判を保ちたいと考えたでしょう」とSchaefer教授はドイツのテレビ番組で語っています。
    「おそらくクレオパトラはアヘンとドクニンジンとトリカブトの混合薬を飲んだと思われます。これは当時、わずか数時間で痛みもなく死ぬことができる調合として知られていました。ヘビにかませたのでは、死ぬまでに数日間に渡って苦しむことになります」
    たしかに服毒自殺の方が現実的な気がしますが、芸術作品の題材としては劇的なヘビによる自殺の方が魅力的かもしれませんね。
    長文失礼しました。

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