ヒエロニムス・ボスの工房、または追随者の作品15点。怪物やモンスターが大流行! | メメント・モリ -西洋美術の謎と闇-

ヒエロニムス・ボスの工房、または追随者の作品15点。怪物やモンスターが大流行!

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Follower of Hieronymus Bosch 1561 - コピー

 北方ルネサンス時代のネーデルラント(オランダ)出身の画家、ヒエロニムス・ボス(ボッシュ)は奇妙な怪物画を描いたことで有名です。→ ヒエロニムス・ボスの絵画を見たい方はこちら
 ボスは代々画家の家系で、父親、祖父も画家であったようです。当時、画家はれっきとした職業であり、王族や貴族などに受注依頼されて絵を描き、工房で親方を筆頭に何名かの弟子が働いておりました。ボスも工房の親方であり、弟子を抱えていたと思われます。ボスが描く独特の怪物画は人気が高く、スペイン王室から受注があったほどです。ボスの絵画の噂は徐々に広がっていき、生前から死後の数十年の間に、多くの追随者を生み出しました。ルターの宗教改革の影響によってボスの絵画の何枚かは永遠に失われてしまい、真作とみなされている作品はたった20数点とされていますが、追随者の作品は数多く存在しています。ボスの怪物のエッセンスはブリューゲルらに受け継がれ、今に至っております。
 ボス作ではないけれど、ボス工房や追随者の作品である15点をご覧ください。


 

かつてボスの真作と思われていた作品


「手品師  1510-20年」
前まで私もボス作だと思っていましたが、調査の結果、工房か追随者の
作品の可能性が高いそうです。ペテン師に騙されている男の口から
蛙が出て、その背後では男が金貨を盗もうとしています。
Hieronymus_Bosch

「聖アントニウスの誘惑  1510-15年」
こちらも真作と信じていた作品。工房か追随者作のものだと知って
少しショック・・・。迫りくる怪物たちをじっと耐え忍んでいます。
→ 聖アントニウスの誘惑の絵画を見たい方はこちら
Hieronymus_Bosch 1

「最後の審判  1500-1525年」
過去の文献ではこちらをボスの真作としていましたが、
調査により追随者の作品と判明。日本画の妖怪のようにも見える
怪物たちが暗闇の中をひしめき合っています。
Follower of Hieronymus Bosch 1500-25

「最後の審判 15-16世紀」
ボス工房の作品。これも長らく真作と思われてきました。
ボス調の怪物がびっしりと描き込まれています。
→ 最後の審判の絵画を見たい方はこちら
Bosch_laatste_oordeel_drieluik

「十字架を担うキリスト  1515-20年」
ゴルゴダの丘へ向かって歩き続けるキリストと、極悪の人相の男たち。
傍らにはひっそりと聖ヴェロニカが聖顔布を持っています。
この作品もボスの追随者の作品です。
Hieronymus Bosch school 1515-20


ボス工房


「トゥヌグダルスの幻視  1490-1500年頃」
2017年の展覧会「ベルギー奇想の系譜」展で日本へやって来る
作品。工房の作品だから、もしかしたらボス師匠がアドバイスしたり
一筆入れているかもしれません。
→ 「ベルギー 奇想の系譜」展について知りたい方はこちら
Follower_of_Jheronimus_Bosch

「東方三博士の礼拝  1500-1549年」
ボスの真作によく似ている構図で、工房が描いています。
同様のモチーフの絵画が欲しい、と依頼があったのでしょうか。
Follower_of_Jheronimus_Bosch_1500-50


ボスの追随者


「荊冠のキリスト  1533年以降」
キリストを中央にして、カリカチュアのような悪どい人相の男を配置する
という作品は、ボス以降流行りました。この作品は絵の中央左下に
ボスの名前でサインを描いているので、混乱を招く原因に。
Follower of Hieronymus Bosch 1530

「Jan Mandijn作 聖アントニヌスの誘惑 16世紀」
学者のような男の顔面を中央に、怪物のオンパレード。
彼はボス風の怪物を取り込みながら、自らの画風を表に出しています。
Jan Mandijn - The Temptation of Saint Anthony

「作者不明 キリストの辺獄降下  1575年」
辺獄は天国の地獄の中間であるはずが、怪物だらけの地獄バリバリに
なっております。口を大きく開けたモンスターがチャームポイント。
→ キリストの辺獄降下の絵画を見たい方はこちら
Christ In Limbo by Hieronymus Bosch, 1575

「作者不明 聖アントニウスの誘惑 16世紀?」 
ボスの怪物によく似たモンスターが、アントニウスの周囲に取り巻いています。
若干構図にばらつきがあり、怪物をもっと増やしたりまとめて欲しかったところ。
Hieronymus_Bosch follower

「卵でのコンサート   1561年」
黄身は「愚者」を象徴し、彼等は寄り集まって無意味な俗世の歌を
奏でようとしており、愚者の船と似たような風刺を含んでいます。
失われたボスの作品の唯一のコピーではないかと、考えられている作品。
Follower of Hieronymus Bosch 1561

「地獄  1490-1510年」
黒子のようなグリロス(頭足人)が二体、手前で歩いています。グリロスは
中世写本でも登場しますが、油彩画で表したのはボスが最初であるとされています。
→ グリロスの絵を見たい方はこちら
Followers of Hieronymus Bosch 1490-1510

「天国  1520年」
ボスの快楽の園の不思議な建築物をより集めて描いてしまった作品。
工夫して配置しているとは思いますが、どうしても原作品のコピーだと
見てしまいます。
School of Hieronymus Bosch  1520

「最後の審判  1465-1516年」
快楽の園の地獄を、自分なりにアレンジして描いちゃった!といった
感じの作品。ちょっとずつ変えてはいても、そのままだ!失礼だとは
思いますが、中国製のドラ〇もんを思い出してしまった・・・。すみません。
Circle of Hieronymus Bosch 1465-1516

 いま紹介した作品は、ボスの生前と死後しばらくの間に描かれた作品の一部です。
 まだ他にもありますし、この時代以降にもボスの怪物を摸倣した作品をあげれば、きりがありません。それだけボスの作品は衝撃的であり、先進的であったのでしょう。彼の異名に「シュールレアリスムの先駆者」というものもあり、その偉大さがよく分かります。


▽参考文献

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