ディオゲネスの絵画12点。アレクサンドロス大王を唸らせた古代ギリシアの哲学者 | メメント・モリ -西洋美術の謎と闇-

ディオゲネスの絵画12点。アレクサンドロス大王を唸らせた古代ギリシアの哲学者

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Diogenes lantern search honest 17th attributed to Mattia Preti -

 ディオゲネスは紀元前4世紀の古代ギリシアの哲学者で、アンティステネスの弟子、ソクラテスの孫弟子とされています。キュニコス派(犬儒派)の思想を守り、彼は「徳」を積むことが人生最大の目的であり、肉体的、精神的な鍛練を重んじ、清貧することが重要だと考えました。物を所持することを拒否した彼はぼろを着て放浪し、大樽もしくは甕(かめ)を住処としていました。犬のような生活を送ったとされていた為、「犬のディオゲネス」とも呼ばれたのです。

 有名なエピソードとして以下があります。ある日、アレクサンドロス大王がディオゲネスの元へ訪れます。彼は日向ぼっこをしていました。大王が「何か望むものはないか?」とたずねたところ「そこは日陰になるからどいてください」と答えました。その後少し会話をし、大王は去り際に「私がアレクサンドロスでなかったら、ディオゲネスになりたい」と感心の言葉を残したそうです。このエピソードは、何名もの画家によって描かれています。他にもディオゲネスは様々な逸話を持っています。

 しかしながら、彼の最期に関してははっきりしていません。タコを食べて当たったからとも、犬に足を噛みつかれたからとも、息を止める修行をしたからとも言われているのです。犬のディオゲネスと言われた彼が、犬によって殺められてしまったとしたら、皮肉ですね…。真相は闇の中です。
 では、ディオゲネスに関する絵画12点をご覧ください。



「ジョヴァンニ=ベネデット・カスティリオーネ作  17世紀」
ディオゲネスの逸話の一つ。彼が日中にランプを灯して歩き
回っているので「何をしているのだ」と誰かが聞きました。
彼は「誠実な人間を探しているのだ」と答えました。
左側の奥に、ランプを持ったディオゲネスがいますね。
Castiglione Giovanni Fable of Diogenes 17th

「ヤーコブ・ヨルダーンスの工房作 1593-1678年」
ランプを持って探した彼ですが、嫌な人間しかいなかったそう。
絵画のディオゲネスは「お主は誠実か!?」と私達に語りかけて
いるようですね。誠実、では、ありたい、ですけれども…w
Jacob Jordaens Studio 1593-1678 Diogenes Honest Man

「ヨハン・カール・ロト作 17世紀」
この逸話により、ディオゲネスのアトリビュート(持物)として
ランプ(カンテラ)がよく描かれます。何も持たず何も隠さない
彼は、私達の心を見透かそうとランプを掲げます。
17th Johann Carl Loth

「Giovanni Battista Langetti 作 1625-76年」
賢者然とした老人のディオゲネス。
他の哲学者と同様に、若者の姿で描かれることはほぼないです。
Diogenes  by Giovanni Battista Langetti

「サルヴァトル・ローザ作 1650年頃」
手で水をすくって飲む少年を見て「わしはまだ甘かった!」
と唯一持っていたコップを投げ捨てたという逸話もあります。
どこまでも物に固執せず、使わないことを貫きます。
Salvator Rosa Diogenes Casting away his Cup 1650頃

「Ivan Philippovich Tupylev 作 1758-1821年」
コリントスにやってきたアレクサンドロス大王。
ディオゲネスが挨拶に来ないので、大王自ら赴きます。
「望むものは?」という問いに、彼は「日陰だからどいてくれ」
という傍若無人ともとれる発言をします。
Alexander Great Diogenes at Corinth  Ivan Philippovich Tupylev

「ガエターノ・ガンドルフィ作 1792年」
逸話によると場所は体育場の隅とされているのですが、
ディオゲネス=大樽というイメージが先行してしまい、
殆どの絵画は大樽を描いています。
Diogenes and Alexander Gaetano Gandolfi  1792

「ドイツ出身の画家作 17世紀」
「私は大王だ。恐くないのか?」と問うとディオゲネスは
「あなたは良い人ですか悪い人ですか?」と問い返します。
「無論、良い人だ」「ならば、どうして恐れるのでしょう」
このやり取りに、大王は感服してしまったのです。
German School 17th Alexander Great Discovers Diogenes

「ジャン=レオン・ジェローム作  1860年」
珍しくイケメン風に描いていますね。乞食生活を続け
「犬のディオゲネス」と呼ばれたことで、傍には4頭の犬が
います。彼に対し敬意を感じる、知に満ちた作品です。
Jean-Léon Gérôme 1860

「エドウィン・ランドシーア作 1848年」
もう全部が犬になっちゃいましたw 白のわんこが大王で、黒の
わんこが「日陰にするな」と言っているのかな。手前には
カンテラが描かれています。ユーモラスな作品ですね。
Edwin Landseer Alexander and Diogenes 1848

「マクシミリアン・ピルナー作 1893年」
このわんこ噛みそう!逃げて逃げて!
上の女神様はディオゲネスの真理の正しさの祝福と、
天上への招待(死)の二つを表しているのかしら。
Diogenes, 1893 by Max Pirner

「マッティア・プレティの追随者作 17世紀」
映画のポスターであるかのような、素敵な一枚。
ディオゲネスの姿はキリスト教における隠者と結びつけられ、
宗教的な正しさ、真理も表現しているのかもしれません。
Diogenes lantern search honest 17th attributed to Mattia Preti

 ディオゲネスは哲学者プラトンを目の敵にしていたようで、様々な喧嘩(?)エピソードが残されています。プラトンは正義や徳、善を理知的に追求する哲学思想の持主で、政治や教育に熱心でした。
 

 ディオゲネスがイチジクを食べていると、プラトンに会ったので「分けてあげてもいい」と声をかけました。プラトンがもらって食べると「全部食べてもいいとは言っていないぞ」と言ったというエピソードや、プラトンが友人を家に招いた際、ディオゲネスは絨毯を踏みつけて「君の虚飾を踏みつけているのだ」と言ったので、プラトンはそれに対し「君は見栄を張っていないと見せかけることによって、多くの見栄をかえってさらしているのだ」と反論したエピソード。

 また、プラトンが講義で「人間とは二本足で歩く動物である」と定義すると、ディオゲネスは「ならニワトリも人間か」と言い返しました。それを受けてプラトンは「人間とは二本足で歩く毛のない動物である」と定義すると、ディオゲネスは羽をむしった鶏を持って教室に現れ「これが人間だ」と言ったのです。そのため、プラトンは「平たい爪をした」という言葉を付け加えることになったのでした。

 なんというか、難癖つけまくりですねw プラトンも負けじと言い返してはいるものの、ディオゲネスの難癖パワーには少し押され気味に感じます。個性が爆発している哲学者、ディオゲネスなのでした。

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