太古より、地球は地殻変動を繰り返して姿形を変化させてきました。大規模な火山噴火により大陸は海中より姿を現し、森林、草原、寒冷、砂漠など様々な地帯を生み出してきました。
地球に人類が出現してからも、火山や砂漠などの自然災害は猛威を振るい、時として人類の存在を脅かしてきました。熱気と砂塵が支配する砂漠地帯は人々を暑さや飢えで朽ちさせ、火山噴火は溶岩や煙などで多くの命を奪いました。イタリアのヴェスヴィオ火山は79年に大噴火してポンペイの町を呑み込み、同国にあるエトナ山も17世紀に多大な犠牲者を出しています。日本やインドネシア、フィリピンなどの全国の火山も同様に大噴火が起こり、犠牲者が生まれています。
そんな砂漠や火山などの自然に西洋の画家たちは魅了され、幾つかの作品が残されています。突如起こり迫りくる自然の脅威と、その中でたくましく生き文明を築いていく人々。
では、砂漠と火山噴火にまつわる絵画13点をご覧ください。
「ジェイコブ・ジェイコブス作 1812-79年」
夕暮れ時のギザのスフィンクスに近付いてくる砂嵐。
古代文明が残る砂漠で砂嵐が起き、人々は懸命に逃げ延びようと
しています。日没のように恐ろしい災害が起きようとも、
文明は滅びないというメッセージが込められているのでしょうか。
「カール・ハーグ作 1820-1915年」
砂漠での遭難。ラクダは倒れ、水袋は空になり、背景は海水。
たった一人残され、まさに四面楚歌の状態です。サハラ砂漠の
真夏は40℃以上になります。常に死とは隣り合わせなのです。
「ジャン=レオン・ジェローム作 1824-1904年」
砂漠のキャラバン(隊商)。荷物を積んだ駱駝の列は延々と続いて
おり、広大な砂漠を一歩一歩進んでいます。ただ、日が落ちかけた
奥に、砂嵐の予感が・・・。
「Frank Catano 作 1880-1920年」
砂漠の中のラクダの疾走。恐ろしい砂嵐が発生してしまいました。
砂嵐に呑み込まれると一寸先も見えず、命の危険が伴います。
「ヴィルヘルム・コタルビンスキ作 1848-1921年」
ラクダに乗る騎兵隊。激しい砂嵐の中、足元には一羽のカラスと
散らばった骨。彼等は遭難者を助けに来た救世主か、はたまた
商隊を襲う賊であるのか・・・。
「ジャン=レオン・ジェローム作 1824-1904年」
ここからは山にまつわる作品。シナイ山の頂に神が出現するのを、
イスラエルの民が目撃する場面です。古来より山は神の住まう場と
して神聖視されてきました。神の登場は噴火を想起させますね。
「Pierre Jacques Volaire 作 1771年」
ヴェスヴィオ火山の噴火を描いた作品。膨大な溶岩が流れている
中、左下には何名かの見物人がいるようです。危なすぎる!
「Pierre Jacques Volaire 作 1777年」
同画家が6年後に描いた作品。こちらもヴェスヴィオ火山です。
噴火山は遠景となり、近景には船や人々の暮らしが描き込まれて
いますね。山の麓にも町があり、呑み込まれているのが分かります。
「ジョセフ・ライト作 1774-6年」
イタリアのポルティチから見た、1771年のヴェスヴィオ火山の噴火。
暗闇の中から噴きあがる火柱。真っ赤な炎と黒煙が、禍々しくも
神秘的な雰囲気を醸し出しています。
「ルイス・ジーン・デプレ作 1743-1804年」
これまたヴェスヴィオ山の噴火。町並みの目と鼻の先で、
恐ろしい程の噴火を起こしています。雲の合間に雷が起こり、
実際に目の当たりにして描いたのが感じられます。
「ウィリアム・ターナー作 1817-21年」
イギリスの風景画の巨匠ターナーもヴェスヴィオ山の噴火を
激しいタッチで描いています。彼は1819年の44歳の時に
イタリア旅行へ行ったそうで、もしかしたらその時に噴火を目撃
したのかなぁと思われます。
「ヨハン・クリスチャン・ダール作 A Vezúv kitörése 1821年」
ノルウェーの画家ですが、ヴェスヴィオ火山を描いています。
彼も1821年にイタリアへ渡ったそうで、その時に山の状況を
見たのでしょう。大噴火とは言わないまでも、まだ熱そうな溶岩が
くすぶっています。すぐ近くには人が・・・。大丈夫なのかしら?
「ジョン・マーティン作 1821年」
ポンペイとヘラクレニウムの破壊という題の作品。ヴェスヴィオ山の
噴火を扱っていますがローマ時代にさかのぼっていますね。
描いた時代はダ―ルさんと同じ1821年なので、実際の噴火を見て、
ポンペイ崩壊の題材を描いたのだと思います。
日本の情報を見ていたら、紀元後のヴェスヴィオ火山の噴火は「79年のポンペイ崩壊と、432年、1631年、1822年、1944年」の5回しか載っていませんでした。紹介した画家の多くは18~19世紀の画家で、この年代を照らし合わせてみると、ほぼ被っていないことが分かりました。
「あれ、18世紀に一回も噴火していないの?この時代に噴火ってなかったのかな?画家は実際に見た訳ではなく、伝聞や文献、写真を見て想像したのかな?」と思ってしまいましたが、海外版のwikiで調べてみるとそうではありませんでした。犠牲が生まれていない噴火を含めると、1700~1800年の100年間の間に「18回」も噴火が起こっているそうです。5~6年に一回は噴火が起こっている計算ですね。ヴェスヴィオ火山ってそんなに噴火しているのですね。想像以上でした・・・。それだと、画家がこんなにも迫真に迫る噴火の絵画が描けたのも頷けますね。
【 コメント 】
>> ありがとうございます_(..)_様へ
こんばんは。令和時代もよろしくお願いします^^
一瞬「フランク片野って誰だ!?」と混乱しました(笑)
ラクダの絵、フランク・カッターノさんなんでしょうか…?
あ、いえやっぱり彼はフランク片野ですかね(違)
ターナーは汽車や船のイメージでしたが、火山も描いているのですね。
気になったので調べてみたら、怖い絵展にフレデリック・アンリ・ショパン作「ポンペイ最後の日」という作品が出展されていたようです。
うー…生で観たかったです(:_;)
テュポンは知っていましたが、エンケラドスは今初めて聞きました。(知識不足)
双方は同一視されているのですね。
エトナ火山の絵画もあったらいいな~とは思っていたものの、「載せたいな~」と感じた火山作品を集めていたらいつのまにかヴェスヴィオ火山オンリーになっていました(笑)
フランク片野さん(違)の絵、ターナーみたいで素敵ですね。
……と思ったら、火山のほうでターナー出てきましたか^^
シナイ山にポンペイと、聖書や歴史を題材にしたものもあるのですね。ポンペイ……あれ、「怖い絵」展かなにかで、ポンペイ関連の作品を見たかも?(うろ覚え聞き覚え 笑)
そういえば、シチリアのエトナ火山……
その噴火は、アテナ女神が封じたエンケラドスだとか、はたまたゼウスに敗れたテューポーンだとか……( ̄▽ ̄)
>> 美術を愛する人様へ
こんばんは^^
最近では阿蘇山が噴火しましたね。
(過去には御嶽山の噴火がありましたね…。ショッキングな事件でした)
ポンペイの事件も亡くなった方の過半数が煙による窒息だったようで、溶岩よりも煙や噴石による被害が多いのですよね。
派手な噴火より地味に見える噴火の方が「あ、大丈夫なのかな?」と侮ってしまい、そちらの方が恐ろしいような気がします。
能ある鷹は爪を隠すですね…。(なんか違う?)
私だったら噴火した途端に逃げてしまうと思います^^;
画家魂って凄いです。
>> 美術を愛する人様へ
こんばんは^^
砂漠は苛酷で恐ろしい場所だからこそ、妖しき異国情緒や神秘がひしめくオリエンタリズムが萌芽したかもしれませんね。
神が山から出現しているのを見ると、唯一神だとしても自然の猛威と結びついているのが分かります。
私達の日本も火山大国なので、絵画から火山の脅威や恐ろしさ、偉大さがひしひしと感じられますよね。
この記事を書いた後に、ポンペイの犠牲者についてのテレビをやっていて、火山の犠牲者を直接かたどった石膏像が脆くなった為に強化&復元するというプロジェクトでした。
ヴェスヴィオ火山の絵画を色々調べた後だったので、「この方達は絵画にある火山の煙で亡くなり、灰に埋もれてしまったのだな…」と感慨深くなってしまいました。
こんばんは。こういうテーマでの特集も面白いですね!
子供のころにちょうど雲仙岳の噴火があって中継報道されていました。
噴火といっても絵画や映画のように赤く派手に溶岩が吹き上がるとも限らないのか、灰色で地味に見えても怖いんだなと当時思ったのを覚えています。
絵を描くつもりでも実際に噴火に遭遇したら、いくら遠くても怖いのではないでしょうか……
砂漠の絵画はエキゾチックな感じですね!
とはいえ過酷な環境なのが伝わってきて緊張感があります…
火山の絵画は怖いですね!
真っ暗な中で火を吹いていて不気味で、そして力強い!
自然への恐れって不思議と感動と繋がりますよね
ヨーロッパの方の人たちにとって身近な(?)火山はやっぱりヴェスヴィオ火山ですけど、
みんな実際に見に行ったり描いたりして、しかもそれがどれも素晴らしいのは描く側にも観る側にもそういう感動があるからなのかもしれませんね