トーナメント(馬上槍試合)の絵画13点。中世に流行った騎士による命がけの真剣勝負 | メメント・モリ -西洋美術の謎と闇-

トーナメント(馬上槍試合)の絵画13点。中世に流行った騎士による命がけの真剣勝負

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 トーナメント(馬上槍試合)は中世時代に流行った、騎士の技術を争う模擬戦です。
 日本語では馬上槍試合と言われていますが、団体戦や個人戦、馬上戦から徒歩戦、槍以外の武器の使用など様々なバリエーションがありました。団体戦はトゥルヌイ、個人戦はジョストと呼ばれています。「実技の練習や勇敢さをアピールする軍事演習」という名目ではありますが、初期の段階では命を落とす者が数十人単位で出たり、倒した相手の武具や馬を奪ったり、捕虜にして身代金を要求するという事が行われていました。時代が経るにつれて、騎士道精神が考えられるようになり、形式化されていきました。

 トーナメントは12世紀に人気を博して西洋中で行われていました。しかし、過度の人気ぶりに騎士の本来の仕事である「国や宗教の防衛」がおろそかになったり、死者が出たりすると、各地で「トーナメント禁止令」が出はじめます。13世紀になるとトーナメントの一部であった一騎打ち形式のジョストが盛んに行われるようになり、トーナメントから分離するようになりました。14世紀になるとトーナメントは廃れ、ジョストだけが生き残りました。イングランドでは1342年に、フランスでは1379年に催されたのがトーナメントの最後でした。一方、ジョストは17世紀頃まで残り続け、一時は廃れたものの現代まで伝統が伝えられています。
 では、トーナメントについての絵画13点をご覧ください。

 

「フランス出身の画家より  1400年頃」
甲冑に身を包み、細長い槍で互いを突き刺そうとしている騎士。
相手に突撃し、落馬を免れた者がまた方向転換をして次の相手を
決め、突撃。それを繰り返して残った陣営が勝利するようです。
騎士の喉に刺さっているように見えますが、大丈夫なのかしら・・・。

「写本の挿絵より  15世紀」
こちらは一騎打ち形式のジョスト。後ろで次の順番を待っているよう
ですね。武器は刃を鈍らせたり、木製にしたり、専用の防具を付けたり
と対策はなされたそうですが、事故はたびたびあったそう。

「ニュルンベルクの写本挿絵より  16世紀後半₋17世紀半ば」
試合は自己アピールする格好の場。貴族達は少しでも目立とうと、
派手な格好をして登場する者もいたようです。頭に鳥かごだと!?
マリー・アントワネットが最初ではなかった!

「騎士道の叙事詩「ヴォルムスの薔薇園」挿絵より  1420年」
こちらの二人の頭もなかなかの派手さです。この格好で動きづらく
なかったのでしょうか。首を振ると右の頭のわんちゃんが邪魔して
来そうですよねw

「マネッセ写本のマスター作  1305-15年」
美しいご婦人方を前に、戦う二人の騎士。「ほら、やっぱり右の
御方が勝ったわ」「きゃー格好いい!」「頭が孔雀みたいで素敵!」
なんて事を話し合っているのでしょうか。試合に優勝した男性は
女性にモテモテだったのでしょうかね。

「中世写本の挿絵より」
激しく戦い合う二人の騎士。けれど、観戦者達は「おおー!」と
興奮するどころかかなり無表情ですねw この騎士達は前座なのか、
ジョスト試合には飽きたのか、敗者の命が心配なのか、画家が
「これでいいや」とぱぱっと描いてしまったのか。気になるところです。

「Jehan Froissart’s Chroniques の挿絵より  15世紀」
中世の画風であるにも関わらず、遠近感の試みが成されており、
ルネサンスの風が感じられます。狭い木枠の中で剣で戦う二人。
建物内の若者が矢で騎士を指しているようですね。ボクシングの
ように判定勝ちとかがあったのかしら。

「ストラダヌス作  1555年」
フィレンツェのサンタ・クローチェ聖堂で行われた試合。
ジョストと紹介されていましたが、明らかに乱戦状態ですねw
トーナメントが廃れた16世紀だし・・・。これはジョストと呼んでも
いいのかしら?定義が曖昧なのかもしれませんね。

「フランスの国立図書館にある写本より」
写本のページで一騎打ちを行う半人半獣の怪物二人。
怪物までジョストをやるなんて、それだけ人気が凄かったのでしょうね。

「フランスの国立図書館にある写本より」
これは本当の試合ではなく象徴的な作品で、左の騎士は輝く愛を、
右は黒ずんだ欲望を表しています。二人が戦った結果は・・・。
なんと愛が負け、冷たい水に落とされてしまいました。そんなー!

「Cesare Auguste Detti 作 1847-1914年」
トーナメントは廃れ、ジョストは人気が低迷しましたが、歴史を
残そうとジョストは行われ続けました。20世紀にも試合はあった
ようですね。多くの観戦者の前で、いざ始まろうとしています。

「Cesare Auguste Detti 作 1847-1914年」
自分の陣営の旗を振り、従者を引きつれて馬で厳かに入場する
騎士を描いております。従者の衣服もルネサンス風に固めて
いますね。左上には国王夫妻らしき人もおり、大規模な試合
である事が伺えます。

「エドワード・ヘンリー・コーボールド作  1840年」
黄金の甲冑に身を包み、ポーズをとる騎士。絵画の為に着せたのか、
はたまたジョストの優勝者だったのでしょうか。武器と甲冑を
合わせたらかなりの重量になりそうです。一番凄いのは馬のような。

 現代におけるジョストは、ルネサンス祭りなどイベントの一つとして開催されている他、国際ジョスト連盟 (International Jousting Association) がルールを定めたスポーツ競技として行われています。かなりの数の国が参加しているようです。2019年もしっかり開催されていました。写真や動画を見るだけでも迫力があるので、実際に目の当たりにしてみたいですね!

→ 国際ジョスト連盟の公式HP<英語>
→ 国際ジョスト連盟in USA の公式HP<英語>

 

【 コメント 】

  1. 管理人:扉園 より:

     >> 美術を愛する人様へ
    こんばんは^^
    現代のボクシング等の格闘技でも危険があるのに、武器を使った一騎打ちは考えるだけでもぞっとしますよね。
    なるほど、鳥籠セットは貴婦人への贈り物という可能性ありそうです。
    試合前に鳥籠を頭から外し、「俺の華麗な活躍を見てくれ!」とキザに微笑んで貴婦人に鳥籠を捧げる騎士。
    そんなシーンが頭に浮かんできそうです。
    もしかしたら逆に貴婦人から送られ、「俺は彼女のプレゼントを付けて戦うぜ!」というアピールという可能性も!?
    古代ローマの剣闘士と同様に、槍試合の優勝者は貴婦人に人気が出て、贈り物がどっさりと送られてきそうですね^^;

  2. 美術を愛する人 より:

    当時の一騎打ちを再現した映像を見ると、安全に配慮してすら怖いし痛そうだしで、本物だったら見ていられそうにありません。
    でも、鳥籠頭の甲冑は当時の本物を見てみたいです。隣の像もなかなかすごいです。
    さすがに試合時点では重心が狂いそうですし、頭から取り外したと信じたいですが。
    もしかして鳥籠と鳥のセットで、意中の貴婦人に贈ったりもしたのでしょうか。

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