ピーテル・ブリューゲル(父)の絵画15点。宗教と教訓とフランドルの民衆を描いた画家 | メメント・モリ -西洋美術の謎と闇-

ピーテル・ブリューゲル(父)の絵画15点。宗教と教訓とフランドルの民衆を描いた画家

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 ピーテル・ブリューゲル(父)は1525頃~69年にフランドル地方で活躍した北方ルネサンスの画家です。
 人気の高い画家なので、知っている方がほとんどなのではないでしょうか。宗教画と教訓、風刺画だけではなく、美しいフランドルの風景や当時のありのままの民衆を描きました。宗教や神話をモチーフにした絵画でも、伝統的なそのままの図式ではなく、独自の要素や当時の歴史的背景を取り込みました。ブリューゲルの描く怪物はヒエロニムス・ボスの影響も見受けられますが、彼は自らのものに吸収して、オリジナリティのある怪物に仕上げています。ブリューゲルの作品はバリエーションに富んでいて、多様性があります。しかし、彼の作品は民衆目線となって考えられ、どれも深いメッセージが込められているのです。
 民衆の画家、ブリューゲル(父)の絵画15点をご覧ください。

 

「農民の婚宴  1568年」
花嫁は画面奥の花冠をした女性ですが、花婿は隠れて見えません。
当時の主食はパンと粥とスープでした。

「農民の踊り  1568年」
民衆たちは貴族が踊るような優雅なダンスではなく、
日頃溜まっていた鬱憤(うっぷん)を晴らすかのような、
跳んだり跳ねたりする激しいダンスを踊りました。

「雪中の狩人  1565年」
ブリューゲルの作品の中で特に有名な作品。のどかな町へ帰って来た
狩人たちは、真冬のせいか、全く獲物が採れていません。
男たちと犬たちの背中が寂しく、冬の生きる厳しさを語ります。

「悪女フリート  1562年頃」
フリートはフランドルの諺に登場する女性で、自分を女主人と言い、
亭主を尻に敷く怖い妻でした。ブリューゲルは地獄の悪魔をも
恐れないフリートを描き、恐妻やそれを怖がる男性を風刺しました。

「死の勝利  1562年頃」
ペストや戦争で死亡率が非常に高かった当時、死を象徴する骸骨が
人間を襲う絵画「死の勝利」が流行りました。人々はこういった絵画を
見て、生ある内に善行を積み、天国へ迎えられるようにしたいと思うのです。
→ 死の舞踏、死の勝利の絵画を見たい方はこちら

「反逆天使の墜落  1562年」
神に反逆をしたルシファー(サタン)と、彼に追従した天使たちを
ミカエル率いる天使軍は倒し、地獄の底へ落とします。ブリューゲルの
作品は堕天使たちを異形の怪物に変化させています。
→ 堕天使の絵画をもっと見たい方はこちら

「バベルの塔   1568年頃」
旧約聖書に出てくる巨大な塔で、神に近付きすぎた為に神によって
建設を阻止させられてしまいます。この作品は2017年4月18日より
「バベルの塔展」として東京へやって来ています。
バベルの塔の絵画をもっと見たい方はこちら

「東方三博士の礼拝  1564年」
キリストが誕生した時に賢者たちが東方よりはるばるやって来て、
赤子のキリストを礼拝したという新約聖書の物語を描いた作品。
→ 東方三博士の絵画をもっと見たい方はこちら

「大魚は小魚を食う  1557年」
 こちらはブリューゲルが描いた作品。展覧会に来るのは
ピーテル・ファン・デル・ヘイデンがそれを見て、版画にしたものです。
右上には生足がきもかわいいタラ夫がいますよ~。

「イカロスの墜落のある風景  1558年」
ギリシャ神話のイカロスは太陽に近付きすぎ、命を落としてしまいます。
イカロスは右下に小さく描かれているだけであり、つつましく働いている
農夫と傲慢で死んだイカロスを対比させ、教訓的な意味を持たせています。
→ イカロスの絵画をもっと見たい方はこちら

「ネーデルラントの諺(ことわざ)  1559年」
この絵画には地方で語られていた諺が、約85種詰め込まれています。
頭を壁にぶつける、悪魔をクッションの上で縛る女など、面白い諺が
ありますので、調べてみるのも楽しいですよ。

「農夫と鳥の巣盗人  1568年」
「鳥の巣を奪う者が所有する」という当時の諺を描いた作品。一番乗りで
見つけたらその者の所有になるといった感じでしょうか。もたもたしていると、
中央の農夫みたいに川に突っ込むことになるという警句が込められています。

「怠け者の天国  1567年」
お腹一杯食べて寝る楽園のテーマが、16世紀の西洋では流行りました。
卵が歩いていたり、パンが乗っていたりと面白い絵画なのですが、
飢餓に苦しむ人の憧れの楽園と、暴食をする貴族階級への批判の両方が
読み取れます。

「盲人の寓話  1568年」
「盲人が盲人を手引きしたなら、二人とも穴に落ちるだろう」という聖書の
寓話を描いた作品。比喩的な意味ですが、ブリューゲルは不気味な
盲人を6人描き込み、逆にその意味を強めることに成功しています。

「人間嫌い  1568年」
下の文章には「この世は不実なので、我は喪に付す」と書いてあります。
隠者となった老人の足元にはまきびしが敷かれ、世界を象徴する悪どい
男が物を盗もうとしています。この世の不条理を描いた作品。

 ブリューゲルの人柄について、ファン・マンデルはこう言っているそうです。
「彼はもの静かな思慮深い人で、寡黙であった。しかし、仲間と一緒の時はよく冗談を言った。ときどき自分でたくらんだお化けや不気味な音を立てて、周りの人や弟子たちを驚かせることが好きだった」
 本当にそのような人柄だったかは断定できませんが、もしそうなら、ちょっと不思議な人の良い画家のおじさんと言った感じなのでしょうかね。私は気難しい人柄の印象を抱いていたので、びっくりです。
 色々な物語や知識、技術を教えてくれそうで、ブリューゲルと会話するのは楽しそうですね。反逆天使の墜落の怪物を描いているところをぜひ拝見させて欲しいです。個人的にはお化けや不気味な音を立ててくれるのは大歓迎ですよ!(笑)

→ ブリューゲルの画家一族について知りたい方はこちら

 

-参考文献「ピーテル・ブリューゲル ローズ・マリー・ハーゲン著」
「図説 ブリューゲル 風景と民衆の画家 岡部紘三 著」

【 コメント 】

  1. 管理人:扉園 より:

    >> 季節風様へ
    こんばんは^^
    ブリューゲルは比較的裕福な家柄ですが、たびたび下町に降りてきて、農民の暮らしをスケッチしたりイベントに参加したりしていたそうです。
    当時の農民は貧しい者が多くガリガリの人ばかりでした。
    「農民の婚宴」でブリューゲルが婚宴のテーマなのに料理を主軸にし、ふくよかな農民ばかりを描いたのは「食べ物こそ農民の求めるもの。これが理想の婚宴」という訴えが込められているように思います。
    裕福層は華やかだと思いますが、農民の宴は実際もう少し質素だったのかもしれません。
    「雪中の狩人」も、生活の厳しさひもじさを表現していると同時に、牧歌的で平和な雰囲気もありますね。たとえ厳しい生活でもたくましく生きる人々を描きたかったのかも。
    農民の「理想と現実」を知るブリューゲルならではの作品のように感じます。
    イカロスの扱いが雑ですよねw
    ブリューゲルにとってイカロスよりも、風景や農民の生活を描く方が大切だったの
    かもしれませんね(笑)

  2. 季節風 より:

    こんばんは。
    「農民の婚宴」の出来立て料理を運んでいる二人が大きく描かれているので大事な部分なんでしょうか。花嫁さんは奥の方で花婿さんの姿が見えないけど生き生きと温かみのある絵だと思います。
    「雪中の狩人」はタイトルまで美しいです。白い目の覚める世界で、遠くの小さい人たちはまるでスケートを楽しんでいるかのように見えます。厳しい冬の暮らしの絵だとは知りませんでした。確かにカラスが「お帰り」と出迎えてるのは獲物もなく帰ってきた狩人たちにはウンザリでしょう。
    「イカロスの墜落のある風景」は海も陸も農夫も美しいですがイカロスの描かれ方は酷くないですか。

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