あけましておめでとうございます。2020年最初の記事はこちらになります。
太陽の輝き〈Splendor Solis〉は、15世紀のドイツの錬金術師であるサロモン・トリスモジン〈Salomon Trismosin〉 に由来する、美しい挿絵が描かれた錬金術のテキストです。
最古のものは1532〜35年にドイツ語で書かれたもので、世界中に写本が20種類ほど存在します。写本の挿絵は22枚存在し、動物や植物が描かれた装飾用の枠と、錬金術的な象徴に満ちた図版で構成されています。
それらは錬金術による死と王の復活(卑金属からの金の物理的変換のプロセス)や、両極端の性質を持った存在の統合を表しており、フラスコ内部の生物達それぞれが、惑星に関連付けられているそうです。男女が一体となって両性具有となり、魂の卵が産まれ、その創造の象徴である卵に色々施し、孵化させることで完全ともいえる存在が生じる・・・とのこと。いかんせん知識不足で、詳しいことは分からず仕舞いで申し訳ありません^^; 挿絵の神秘的な美しさをお楽しみください。
また、これから紹介する挿絵は1582年の大英博物館の写本のものを掲載しております。では、「太陽の輝き」の挿絵13点をご覧ください。
「太陽の輝き」の一枚目。赤い垂れ幕の前にある太陽や王冠、
盾などといったモチーフ。背後では男性二人が会話しています。
上の文字の「Arma Artis」はラテン語なら「武器の技術」または
「女の芸術」・・・。いや、やっぱり分かりません^^;
錬金術師然とした老人がフラスコを手に持ち、そこから文字が
書かれたリボンが出ています。錬金における格言なのかな?
周囲の動物や植物が美しいですね。
月を象徴する女性と、太陽を象徴する男性。真逆の存在である
双方が結婚し、同一になることで化学反応が生じ、奇跡的な
効果を発揮すると考えらえていました。
このお二人は何やら言い争っている様子ですが・・・^^;
鳥が飛び交う木の下で話す哲学者。何を説いているかは
分かりませんが、木の根元に王冠があることから、王政や国の
ありようを語っているのかも。いや、錬金術的には木から鳥を
蒸発させろとか?画面の下側では女性たちが入浴中。
謎の赤と黒の怪人が沼から出現し、天使が衣を渡そうとしています。
色々投入した混合液から、価値ある物質を抽出した瞬間を
表そうとしたのでしょうか。
お顔が二つある天使が卵と鏡のようなものを持っています。
この人物は両性具有(アンドロギュノス)とされ、男と女が
統合された完全体とみなされています。そこから生じた卵から、
より崇高なものが孵化するのです。
憤怒の表情で剣と生首を持つおじさんと、足元に転がるバラバラ死体。
死体はどうやら王であるようで、王の象徴である物質をバラして
首だけ入手しろというメッセージ、なのかな?
五右衛門風呂のような釜で煮られる老人の頭にとまる鳥。
青年はふいごで火力アップを図っています。これは「よく物質を煮てね」
という意味なのかな?枠や背景の描写が美しいだけに、
情景のシュールさが際立っていますねw
ケルベロスのような三頭の怪物がフラスコに入れられ、周囲には
人々が戯れているようです。このフラスコシリーズは7枚存在し、
それぞれ惑星を象徴しているとのこと。
こ、これは何の惑星なのだろうか・・・。
こちらも惑星シリーズ。若い王子のような男性がフラスコに入り、
周囲で漁が行われています。
太陽が沈み、今まさに闇の世界へと切り替わろうとしている
瞬間。昼と夜の境界線である夕方は逢魔時と呼ばれ、魔物が出たり
災いが生じると考えられておりましたが、この挿絵は何を象徴
しているのか・・・。この境目こそ重要なのでしょうか。
子供達が元気いっぱいに動き回り、男女が世話をしているようです。
普通に考えれば子供を大切に、とかですが、錬金術的に考えると、
卑金属でも黄金が生じる、とか賢者の石が生まれるとかの意味合い
なのでしょうかね。
そして、太陽は登るというラスト挿絵。
文献の題名が「太陽の輝き」であることからも、太陽が重要視されている
かが分かりますね。この挿絵通りに事が運べば、錬金や賢者の石を
作るのも容易い・・・のかも?
何やらWikiによると「太陽の輝き」の挿絵に、有名画家であるアルブレヒト・デューラー、ハンス・ホルバイン、ルーカス・クラナッハ(父)の三名が関わっているとのこと。私の検索不足でどのように、どの部分で関わったのかは分かりませんでしたが、挿絵部分を手掛けたのだと思います。よく見てみると、裸婦の入浴や子供の描写はクラナッハっぽいし、細密な動物や植物画はデューラーが手掛けたとしても納得できます。ホルバインは肖像画のイメージが強く、どこを描いたのかはわけ分かりませんが・・・。
本を完成するまでに、この三名の画家だけではなく多くの職人達の技術があったのだと思います。職人が力を合わせ、一つの作品を完成させる。これもまた、崇高な錬金術の御業であるのではないでしょうか。
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