マティアス・グリューネヴァルトは16世紀に活躍したドイツの画家です。代表作は表紙の作品「イーゼンハイムの祭壇画」。美術を知っている方は見たことがあると思います。中世時代のキリスト像はリアルを排し、抽象的な画風を好みました。ですが、この祭壇画に書かれたキリストはとにかくリアルです。傷口、膿、爛れなど細部な部分まで精密に描かれており、当時としては斬新だったことでしょう。教会に来てこの祭壇画を見た礼拝者は、キリストの凄惨な姿にショックに言葉も出なかったに違いありません。
グリューネヴァルトの迫真に迫る絵画を見ていきましょう。
「イーゼンハイムの祭壇画(第1面) 部分 16世紀」
がっくりとうなだれた頭部と突き刺さった茨の破片。腹部の傷は見ているだけで痛い。
「イーゼンハイムの祭壇画(第2面) 16世紀」
傷だらけのキリストは無事に復活を果たします。受胎告知と出産、磔刑、復活が描かれています。
「イーゼンハイムの祭壇画(第2面) 部分 16世紀」
中央の祭壇画の左隅に登場する天使さん。個人的にこの方が大好きです。
「イーゼンハイムの祭壇画(第3面) 16世紀」
聖アントニウスの聖パウルス訪問と聖アントニウスの誘惑。
「イーゼンハイムの祭壇画(第3面) 部分 16世紀」
本来ならアントニウスさんが悪魔の誘惑を耐える場面なのですが、
怪物のリンチにあっています。髪ひっつかまれてボコボコです。
「イーゼンハイムの祭壇画(第3面) 部分 16世紀」
怪物アップ。肌の質感や牙などリアルはなはだしい。
右で鼻水を垂らしている怪物が気になるところです。
→ アントニウスの誘惑の絵画をもっと見たい方はこちら
技法は油彩とテンペラの混合技法で、ファン・エイクやヒエロニムス・ボス、ブリューゲルなどと同じです。油絵を薄く塗り重ねる技法なので、下地が透けて見え、グリューネヴァルトの作品の一部を見た人が「内臓のようだ」と言ったとか。本当に彼の作品の塗り重ねは美しいです。
ちなみに、マティアス・グリューネヴァルトという名は後世の著述家が間違って付けてしまったらしく、本名はマティス・ゴートハルト・ナイトハルトとされています。それなのに今ではグリューネヴァルトとして名前が通ってしまっています。マティスさん、とんだ災難ですね・・・。
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