聖や闇の存在が、現代よりも深く信じられていた中世。
心を惑わし堕落させようと企む悪魔は、人々にとって脅威でした。甘言で誘惑して悪事を誘発させ、罪を犯させる。罪深き者は死後、天使の祝福を受けることができない。笑みを浮かべし悪魔は、穢れし魂を地獄へと連れていく。地獄へ落とされた者は永遠に責め苦を受け続ける…。
現世でも死後でも人々を苦しめる恐ろしき悪魔。本来なら醜くおぞましい姿です。ですが、中世のゆるふわな作風のせいで、悪魔がきもかわいいとさえ言える、ユニークなお姿になってしまっているのです。ブログの読者の方々にとって、中世のゆるーい作風はもうお馴染みですね(笑)
では、悪魔と住民にまつわる絵画11点をご覧ください。
「イングランドの写本の挿絵より 1320-30年」
死の間際にいる男性の元へやってきた悪魔。彼の魂を口から
取り出そうとしています。凄い形相で奥様が仰天中…。
こちらへ向かってあっかんべーをする顔、ストライプ柄の
服がチャーミングです。
「中世~ルネサンス期の書籍の挿絵?」
こちらも男性の魂を連れて行こうとする悪魔。男性は既に事切れ、
奥様とみられる女性は諦めの様相をしています。
中世の魂は小人として表現されます。
爬虫類と虫が混ざったかのような悪魔さんが可愛い。
「写本の挿絵より 12世紀」
魂をぐわしっと鷲掴みにしている悪魔さん。悲しんでいるどころか、
女性は喜んでいるように見えます。悪魔に持っていかれるくらい
だから、この男性はいい人ではなかったのかもしれません…。
「フランスのパリの道徳聖書の挿絵より 13世紀」
めっちゃ生真面目な表情で聖職者と思われる人の魂を取る
悪魔。この後、地獄行きなのは確定ですね…。
獣人っぽくて可愛らしい悪魔さん達です。
「彩色写本の挿絵より」
魂の首に縄を付け、配達する悪魔。女性たちは涙を見せています。
現代だと楽しそうに人々の魂を奪うイメージがあるのですが、
真面目に仕事をやっている感じですね。必殺仕事人です(?)
「マルティーノ・ディ・バルトロメオ作 15世紀」
赤ちゃんを取り換える悪魔、と紹介されていた作品。
悪魔は後光がある赤ちゃんを持ち、角がある赤ちゃんは揺り籠に
寝ています。妖精の民話チェンジリングと似た感じなのかしら。
聖なる子を奪われた両親の悲しみや如何に…。
「中世の写本挿絵より」
悪魔にめっちゃカツアゲされている青年(?)
どんな状況かよく分かりませんが、悪魔崇拝を強要している
感じなのかな?舌を出して「俺に従え~!」と恐喝中。
「写本の挿絵より 16世紀初頭」
お二人の恋を全力で応援している悪魔さん。
絵だけ見ると、爽やかな笑顔で物凄く良い悪魔に見えますね(笑)
悪魔が応援しているという事は、禁じられた愛なのかしら。
不倫とか…。
「中世写本の挿絵より」
奥様のお仕事の手伝いをしているようにしか見えない、心優しき
悪魔さん。桶を持って、一緒に何かをまぜまぜ。
このゆるーい姿で毒薬でも作っているのかもしれません…。
「Janíček Zmilelý z Písku 作(?) 1490-1510年」
頭だらけのとんでもない悪魔さんが、聖職者と思われる方々を
覆っています。人々は穏やかな顔をしているので、自分達が
悪魔の手中にあることに気付ていないようです。
悪魔さん達、半目で面白いお顔をしていますね^^
「中世彩色写本の挿絵より」
ぼこん!!「いい加減にしなさい」「ぎゃあああー!!」
人々をたぶらかしすぎて、天使さんに成敗される悪魔さん
なのでした…。
「悪魔に魂を売る」という言葉は、現代でも使われています。
悪魔と契約を交わし、対価として自らの魂を捧げる。代表的なものとしてファウスト博士の伝説、またはゲーテの「ファウスト」がありますね。主人公ファウストはメフィストフェレスに人生のあらゆる体験をさせるという事を条件に、魂を売ってしまいます。
悪魔と契約し、魂を売るという思想は中世には既にあったようです。悪魔の一部は多神教の神が変化したものであり、その影響があるのでしょう。北欧神オーディンと契約を交わし、力を与えられた代わりに破滅した戦士。そういった神話が下敷きとなった部分があると思います。
地獄へと連れられて行く哀れな魂は、闇の誘いに乗って罪を犯したのだから、悪魔に魂を売った者と言えるのかもしれませんね。闇の誘惑を条件として、魂は地獄へと落とされる。業が深いと永遠に出られませんが、煉獄ならチャンスがあります。
懺悔して罪を償えば、天使さんが悪魔を殴って退治してくれる…かもしれません?
→ メフィストフェレスについての絵画を見たい方はこちら
【 コメント 】