寓意画(ぐうい)はアレゴリーとも呼ばれ、複雑で難しい概念を、擬人化したり象徴を使用することよって絵画で表わす美術の形態の一つです。 → 寓意画について詳しく知りたい方はこちら
一年は365日12か月で表わされ、春夏秋冬の四季があります。また、一日は午前中、午後、夕方、夜などに分けられます。これらは地球の自転や公転に関係する事象で、人類が現れる以前から繰り返されてきました。風景画を描けば時期や時間帯の状況は伝えられますが、「季節」という概念そのものを表現することはできません。春の恵み深さ、柔らかさ、暖かさなどを伝えられるよう、画家たちは象徴や図像、道具や人物を駆使し、自然界の事象を表現しようと努めました。
春夏秋冬と時間に関する寓意画、13点をご覧ください。
「フレデリック・サンディーズ作 1865年 春の寓意」
春の擬人化である女性が、自然の美しい息吹と共に立っています。
春と言えばやはり草木の芽生えや蝶々ですね。
「Robert Tournieres 作 1718年 春の寓意」
こちらの春の擬人化の女性は花のアーチの中で、花を摘んでいます。
右上に心霊写真のように写っている人面は天使?それともお花の妖精?
「Hans Zatzka 作 1859‐1945年 春の寓意」
春の陽気の中で、セクシーな女性が天使と一緒にたわむれています。
裸婦+寓意画な感じですね。
やはり春は平和的で、命の生誕を表している作品が多いです。
「ホアン・アントニオ・リベラ作 1819年 夏の寓意」
爽やかな青い衣装に身を包んだ女性が、火と花を持っています。
天使達は豊作物を持ち、からっと乾いた夏の空気を伝えています。
日本の夏と違い、西洋の夏はさっぱり涼し気ですね。
「Anne-Louis Girodet de Roussy-Trioson 作 1767-1824年 秋の寓意」
秋の擬人化である女性は髪の毛から作物を落とし、
母乳を出しています。足元には葡萄のような果実と犬がいます。
犬は忠義を象徴し、牧羊犬は収穫と密接に関係しているので、
描かれたのでしょうか。
「Anne-Louis Girodet de Roussy-Trioson 作 1800‐02年 冬の寓意」
春夏秋の女性続きに対して、冬は老人の姿として描かれます。
やはり命を育む女性は豊穣の象徴となり、年老いた老人は
一年の終わり(死神)として扱われがちなのでしょうか。
老人が壺と角笛のようなものを持ち、雪を降らせようとしています。
「アブラハム・ブルーマールト作 1564‐1651年 冬の寓意」
背中を丸め、わびしく食事を取っている老人の姿。
寓意画ではないような気がしますが、アレゴリーとして紹介されていた為、
掲載しました。確かに真冬の厳しさや寂寞感が表れているように感じます。
それより、箸のような道具が気になります・・・。
「フィリップ・ハモジェニーズ・コールドロン作 1884年 午前中の寓意」
神話でもあるように、午前中は一日の始まりであり、復活の時でもあります。
素敵な女性がピンクの花と共に描かれ、彼女の目線はこれから何かが
始まる予感を覚えさせます。春とよく似た感じですね。
「セバスティアーノ・リッチ作 1698年 昼の寓意」
最も太陽の光が入る昼は、神の御力が強まる時。昼を象徴する
光属性の者は、夜を象徴する闇属性の者を倒しています。
真ん中の子供がライダーキックをしているように見えます(笑)
「Sebastiano Ricci 作 1698年 夕方の寓意」
夕方になると一転。やっている事が恐ろしくなります。
天使が矢を地上へ向かって落としています。ヨハネの黙示録的な
人類の終末と、一日の終わりが近い夕方を関連付けているのでしょうか。
「アントン・ラファエル・メングス作 1765年 夕方の寓意」
こちらの麗しき天使さんも、笑顔で矢を落としまくっています。
やがて全人類に来るべき災厄を象徴しているようで、ぶるぶるです。
→ ヨハネの黙示録について知りたい方はこちら
「Michelangelo Maestri 作 1779-1812年 夜の寓意」
夜の寓意は魔物的なものが出るかと思いきや、そうではありませんでした。
地球儀のような物を持ち「眠りなさい・・・」とばかりに夜の寓意の女性が
抱えています。子守歌のような優しく神秘的な作品です。
「ヤン・ファン・デ
ン・ヘッケ作 1611-51年 夜の寓意」
こちらは意味深げな夜の寓意画。中央の女性は月の寓意で、抱っこ
している赤ちゃんは月の満ち欠けか、夜から朝の移り変わりを象徴しており、
少年と老人は年月の移り変わりで経る年齢を表していそうです。
円を形作っている天使はみんな眠っています。
個人的に一番印象に残ったのは、天使が矢を落としている夕方の寓意です。夕方には負のイメージがなかったので、「西洋の人はこのような印象なんだ!」と驚きました。移りゆく曖昧な中間である存在は、恐ろしいイメージを抱きがちなんでしょうかね。その絵画を現代の日本で当てはめるとしたら、真夏の紫外線でしょうか。がんがんと降り注ぐ危険な紫外線は、天使が笑顔で降り注がせる矢と同じ攻撃力を持っていそうです・・・。熱中症、脱水症状、日焼け、シミ。黙示録並みに恐ろしい症状ばかりです。気を付けなきゃ。
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