ディエゴ・ベラスケスの絵画14点。バロックを代表するスペイン黄金時代の巨匠 | メメント・モリ -西洋美術の謎と闇-

ディエゴ・ベラスケスの絵画14点。バロックを代表するスペイン黄金時代の巨匠

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 ディエゴ・ベラスケス(1599-1660)は、バロック時代における画家です。17世紀スペインの最も偉大なる画家と言っても過言ではなく、多くの画家に影響を与えています。
 ベラスケスは南部の都市セビリアに生まれ、11歳頃に画家のフランシスコ・パチェーコに弟子入りしました。彼の仕事の呑み込みは早く、18歳の時には独立し、室内の情景や静物画を手がけました。翌年には師匠の娘フアナと結婚します。24歳に首都マドリードへ二度目の旅行した際、国王フェリペ4世の肖像画を描くことになりました。その出来栄えを気に入った王は彼を宮廷画家に任命し、それから37年間、ベラスケスは宮廷画家として働きました。

 彼の作品の特徴として、服のしわや装飾品、背景などを粗いとも言えるタッチで描くのに、遠目で見ると立体的、写実的に見えることです。「何でこのように見えるの?」と不思議に思ってしまう程、リアルに立ち現れてくるのです。それにより印象派の画家マネは彼のことを「画家の中の画家」と呼んで称賛したそう。ベラスケスは同時代の巨匠ルーベンスとも親交を持ち、イタリア旅行へと行った後、宮廷画家だけではなく王宮の重役に就くようになります。しかし、1660年にフランス国王ルイ14世の婚礼の準備をしていた際、突然病に倒れて亡くなってしまいます。享年61歳でした。
 独断と偏見に基づいてチョイスした、ベラスケスの絵画14点+αをご覧ください。

 

「卵料理を作る老女  1618年」
結婚した年の、19歳の時の作品。バロックの様式が色濃く表れて
おり、カラヴァッジョの影響が見て取れます。お婆様や卵、容器などが
上手すぎる・・・。これが19歳の作品だと・・・。

「シスター  1620年」
ベラスケスの祖父はユダヤ教からキリスト教に改宗したコンベルソと
される者で、コンベルソはスペインの異端審問所に目を付けられる
対象でした。その為、ベラスケスはその事をずっと隠し通していたそうです。

「鞭打ちの刑の後のキリスト  1628-29年」
宮廷画家であるベラスケスは聖画を幾つも手掛けています。
ユダヤの司教たちに捕まり拷問を受けたキリストは苦悶の表情を
浮かべています。右にいる少年は「キリスト教」の擬人化であり、
傍らにいる天使はその守護天使のようです。

「フェリペ四世の肖像画   1628年」
スペイン王。1621年から没年の1665年まで即位しており、
ベラスケスは37年間ずっと彼に仕えていました。芸術を深く愛し、
後のプラド美術館の基礎を作り、国民からは信頼された王でした。

「バッカスの凱旋  1629年」
この絵画はイタリア遠征の援助金を出してくれた、フェリペ4世の為に
描かれました。酩酊の神バッカスは酔っぱらい達に囲まれ、得意げに
冠を授けています。勝利の美酒といった感じですね。

「バルカンの鍛冶屋のアポロン  1630年」
バルカンはローマ神話に登場する火の神で、ヘパイストスと同一視
されています。アポロンは彼に妻ヴィーナスが浮気しているよ、と
伝え、バルカンは驚きの表情を浮かべています。この作品は
ルーベンスによる要請によって描かれたそうです。

「聖トマスの誘惑  1632年」
十二使徒の聖トマスではなく、神学者のトマス・アクィナスです。
神学に没頭しすぎたトマスを心配した両親は、女性を送って気をそちらに
引こうとします。しかし、彼は「誘惑には負けぬ!」と燃えたぎる薪を
握り締め、女性は怖すぎて逃走。天使が現れて彼を誉めた称えたそう・・・。

「宮廷道化師の Barbarroja   1640年」
本名El bufón Barbarrojaは、1633~49年の間にフェリペ4世のもとに
仕えた宮廷道化師です。真っ赤で奇抜な服を着ていますが、真面目そう
で頭が切れそうな人柄に見えますよね。

「宮廷道化師の Don Diego de Acedo   1645年」
ベラスケスは宮廷内にいる障害を持った方の連作を、敬意を持って
描いています。彼は恐らく小人症を患っている方だと思います。
背筋を伸ばし、誇り高い人物のように感じますね。

「宮廷道化師のカラバシラス   1639年」
彼は知的な病気を持っていたそうです。フェリペ4世のもとではこういった
特殊な人物が道化師として置かれました。ベラスケスは差別や色眼鏡
で見ることなく、ありのままの姿を描いたのでした。
→ 宮廷道化師についてもっと知りたい方はこちら

「アイソーポス  1641年」
彼は古代ギリシャの寓話作家です。代表的な作品は「イソップ寓話」。
アリとキリギリス、ウサギとカメ、オオカミ少年など、日本人にも馴染み
深いものばかり。彼は奴隷として売られたものの、語りの上手さゆえに
解放されたそうです。

「インノケンティウス10世の肖像画  1650年」
1644-1655年の間在籍したローマ教皇です。彼は神に使える聖者という
より、地位にのし上がった権力者という感じで、ベラスケスの絵画は
それを如実に表しています。伝説によるとこの絵画を見て本人が
「真をうがちすぎている」と言葉を洩らしたそうです。

「フランシス・ベーコン作  ベラスケスによる作品の習作  1953年」
いきなり20世紀の巨匠ベーコンの作品。恐怖の絵に興味がある方なら
知っているのではないでしょうか。彼は「叫び」というモチーフに魅了
されており、これは教皇の心の孤独の叫びを表しているそう。権力の
為に人を犠牲にし、孤立した彼の真意やいかに・・・。

「マリアナ・デ・アウストリア  1653年」
フェリペ4世の二度目の王妃。本来は王の息子のサルバタール・
カルロスと婚約していましたが、彼が早世した為、フェリペ4世の妃と
なりました。布やドレスなどにベラスケスの技巧がよく表れていますね。

「ヘルメスのアルゴス退治   1659年」
ゼウスに見初められた女性イオは妻ヘラによって牡牛に変えられ、
百目の巨人アルゴスに見張られてしまいます。イオを救う為、ゼウスは
ヘルメスにアルゴスを討伐させました。
→ ヘルメスのアルゴス退治についての絵画を見たい方はこちら

 宮廷画家として、王宮の役人として多忙を極めたベラスケス。彼の死因は一説に「過労死」とされています。ルイ14世の婚礼の準備に忙殺され、亡くなってしまったと・・・。しかし、現代においても脳梗塞や心筋梗塞など、突然死する要因はたくさんありますので、そう断言してしまうことは疑問に思います。ですが、過労死してしまう方は実際に多くみえますので、仕事の分量や社会体制、効率などを考え、皆でフォローし合わなければなりませんよね。ブラック反対!

 そして、来年はベラスケスが熱いです。2018年2月より、二会場で「プラド美術館展 ベラスケスと絵画の栄光」が開催されるのです!彼の作品7点がまとめて来日するそうで、目が離せない展覧会となっております!ぜひご確認ください^^

→ 「プラド美術館展 ベラスケスと絵画の栄光」の展覧会についての記事はこちら

【 コメント 】

  1. 管理人:扉園 より:

     >> お話聞いていたい人様へ
    こんばんは^^
    巡り巡っての到着嬉しいですw
    どんな作品やテーマを検索してもここへ行きつき、無限ループに陥るようにこれからも勢力拡大頑張ります(笑)
    私の作る卵料理は禍々しき未曽有の魔物なので、ベラスケスの輝く聖なる卵に撃退されてしまうのが運命なのです。←ぇ
    あの華麗なる形状は決して真似できません…。
    「プラド美術館展」へ向けた記事でしたね。
    予定が合わず展覧会行けなかったので、直接スペインへと出向きたい!w

  2. お話聞いていたい人 より:

    あ、これでしたか。
    (マルタさんとこでの返信見て、いったんウェブ検索に戻って、またこのサイトにたどり着きました 笑)
    怪物クッキーをおつくりになる扉園さんですから、きっと「ベラスケスの卵料理」もお上手におつくりになるのでしょう( ̄▽ ̄)
    プラド美術館展、ベラスケスのマルスやリベーラの決闘の絵を見た記憶が、よみがえってきます……( ̄▽ ̄)

  3. 管理人:扉園 より:

     >> 季節風様へ
    こんばんは^^
    美化された肖像画ではなく、ありのままの姿を描いたからこそ、芸術を愛するフェリペ4世はベラスケスを選んだのかもしれません。
    王家と道化を同等に真摯な姿勢で描いているのは、目上におべっかを使ったり、位の低い者を蔑んだりしない、ベラスケスの真面目で優しい性格が感じられるようですよね。
    マリアナ王妃、可哀想ですよね…。
    婚約者が亡くなってその親と結婚する羽目になるなんて、肖像画が仏頂面になってしまう気持ちも分かります。
    ラス・メニーナスは傑作ですよね^^
    愛くるしい姿だけに、21歳で夭逝する儚き人生に心が痛みます…。

  4. 季節風 より:

    ベラスケスは雇い主の国王の肖像画も王妃や教皇の肖像画も決して美化せず、お世辞が全くないんだと思います。一方で道化や体が不自由な臣下を描いた作品は優しさと敬意も感じます。
    王妃の仏頂面は美少年の婚約者が死んでフェリペ四世と政略結婚させられたせいでしょうか。でも彼女が産んだ幼い愛らしい王女(ベラスケス作)の絵も世紀の傑作ですね。

  5. 管理人:扉園 より:

     >> スペインで一日過ごせるならソローリャを観に行きたい人様へ
    1965年の映画ならそうですよね…。
    今度地元のレンタルビデオ屋であるか見てみようと思います。最新版の方もあるかな?
    7点もベラスケスの真作が観れるのは嬉しいですよね^^
    メニッポスのおじいちゃんの表情が飄々としていて素敵です。

  6. スペインで一日過ごせるならソローリャを観に行きたい人 より:

    サイト紹介ありがとうございます^ ^
    『気狂いピエロ』は、たぶんまだ保護期間中だったような……。
    ちなみに、去年新訳のデジタル修復版? が公開されました。
    来年の美術展も楽しみです(マルスが来るのは知らなかった!)。

  7. 管理人:扉園 より:

     >> スペインで一日過ごせるならソローリャを観に行きたい人様へ
    こんばんは^^
    「気狂いピエロ」って映画気になります…。
    冒頭にベラスケスの美術史の朗読があるんですか。調べてみたら結構シュールな内容ですね。クラシックな作品なのでネットで観れるかな?
    絵画には作者の人間性が現れますよね。皮肉や宣伝の目的で誇張した作品とは違った、ありのままを映そうとする真摯な目線がベラスケスの真面目さを物語っています。
    もし良ければベラスケスの作品が殆ど(?)載っている英語のサイトがあるので、見てみてください^^
    → http://viewshare.org/views/jmresti/the-paintings-of-diego-rodriguez-de-silva-y-velazq/
    PS.ソローリャ美術館も面白そうですね!
    ちなみに私はスペインで一日過ごせるなら、プラド美術館へ行きたいなぁ…。

  8. スペインで一日過ごせるならソローリャを観に行きたい人 より:

    ベラスケスといえば、
    ジャン・リュックゴダール監督の映画『気狂いピエロ』の冒頭で、
    ジャン・ポール・ベルモンドが美術本(エリ・フォールという人物の著書『美術史』第4巻の『ヴェラスケス論』の一部、らしい)を読むシーンがあって、印象に残っています。
    この記事を見て、悲惨な時代をロマンを交えずに素朴に写し取ろうとした? 彼のことが少しわかったような気がしています。
    映画のデジタルリマスター版公開時のパンフレットを読み返したところ、50歳過ぎの晩年の画風についても書かれていたので、もう少し観てみたいなーという気もします。

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