【絵画12点】 愚かと賢さは紙一重の宮廷道化師。おどけながら進言する名役者の姿 | メメント・モリ -西洋美術の謎と闇-

【絵画12点】 愚かと賢さは紙一重の宮廷道化師。おどけながら進言する名役者の姿

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 宮廷道化師は中世~近代の西洋において、王や貴族などの支配者層に仕えるエンターテイナーです。
 彼等は主人を楽しませる為に、物語を語ったり、歌や音楽、ジャグリングやアクロバット、奇術など様々な芸を披露しました。また、そのパフォーマンスに風刺も織り交ぜ、当時のニュースや人物を笑いものにしました。
 地位が低く人々に小馬鹿にされる職業でしたが、相当の切れ者ではないと宮廷道化師は務まりません。時には国の状勢を見透かし、王に正しいアドバイスを与えることも必要とされていたからです。
 今回はおどけと真面目が交錯する、宮廷道化師の姿を見ていきましょう。

 

「1450-60年の時祷書の挿絵」  
王に進言する道化。王の政策に対する自由な言動は宮廷道化師のみが
許されていました。たまに批判しすぎて叱責されることもあったそう。

「ウィリアム・メリット・チェイス作  1875年」
お酒を大事そうに注ぐ宮廷道化師。この一杯が旨いんだよなぁ・・・と
いった感じです。洋服や靴のもふもふ質感の表現が見事です。

「Eduardo Zamacois (Y Zabala) 作  1868年」
cochonnet というゲームで遊んでいる宮廷道化師たち。
手前二人が喧嘩を始めて、小人さんはやれやれまた始まったか、
奥のおじさんは楽しそうに行方を見守るといった感じでしょうか。

「G. Eudrian 作  年代不明」
マンドリンを弾きながら、全力で歌を歌っている道化師さん。
絶妙なバランスで座っている姿が素敵です。

「ユディト・レイステル作  1625年」
見ているこちらも楽しくなりそうな快活な表情。
上の道化師さんとマンドリン共演をして欲しいです。

「ディエゴ・ベラスケス作  1635年」
フェリペ四世に仕えた宮廷道化師、パブロ・デ・バリャドリードさん。
衣装こそ派手ではないですが、堂々とした身振りは道化らしさが。

「ディエゴ・ベラスケス作  1645年」
王に仕えた小人症の宮廷道化師、セバスティアン・デ・モーラさん。
握りしめた手と投げ出した足が、いじらしく感じします。

「Igor Maikov 作   1966年」
背筋を丸め、寂しく縫い物をしている道化師。
服が破れてしまったのでしょうか。小さくなった背中がなんとも切ない。

「ジョン・ウィリアム・ウォーターハウス作  19世紀後半-20世紀前半」
道化師だって深く悩む時があります。国の行く末を案じているのか、
自らの境遇を悲観しているのか。物憂げな表情がイケメンです。
からの・・・。

「ハインリヒ・フォークトヘトル(息子)作 1513 – 1568年」
笑う道化。

「Jacob Cornelisz. van Oostsanen 作  1500年」
笑う道化。

「作者不明 ネーデルランド絵画  15世紀」
笑う道化。

 これで笑ってしまった方は、もう道化の術中にはまっています。
 「笑う道化」という題名の三作は作者こそ異なるものの、かなりのインパクトを持っています。ですが、案外宮廷道化師の本性を一番表している表情じゃないでしょうか。ふざけていて、器用そうで、ずる賢そう。愉快で愚か者だけど、時には狡猾な切れ者になる。そういった、場をかき乱すトリックスター的な側面を上手に表現しているように思います。そういった性格を魅力的に思うのは、私だけじゃないはず。

→ ポーランドの宮廷道化師スタンチクについて知りたい方はこちら
→ 道化の即興劇コンメディア・デラルテについて知りたい方はこちら

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【 コメント 】

  1. 管理人:扉園 より:

     >> 季節風様へ
    こんばんは^^
    「ジョーカー」は見てはいませんが、風刺の効いた虚しく悲しい物語のようですね。
    笑いと悲しみ、愛と憎しみは表裏一体であるが故に、同居してしまうのかもしれません。
    宦官は道化の役割とは異なりますが、権力者の近くにいた存在として、また蔑まれていた存在として似通っていますね。
    西洋中世の時代は障害のある者を道化として置き、権力者を楽しませるという感じで、社会的地位としては底辺でしたが、時代を経るにつれて道化の地位は上がっていき、ポーランドのスタンチクは王に信頼され、様々なアドバイスを与えていたようです。
    愚かとされていた道化が賢者となり、時代によって様々な様相を見せるのは面白いですよね。

  2. 季節風 より:

    「ジョーカー」という映画が話題になっています。
    ジョン・ウィリアム・ウォーターハウス作 の道化師はイケメンなのにどういった経緯で道化師になったのか、少し悲しそうです。
    中国の宦官は出自も低く身体的に蔑まれていました。それでも誰より皇帝の傍にいる宦官は賄賂を贈られたり権力を持っていたともされています。ですがヨーロッパの宮廷道化師はそんなイメージが無いような・・・彼らは賢いゆえに心の内は計り知れないと思います。

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