ロミオとジュリエット(ロメオとジュリエットとも)は、16世紀後半に書かれたシェイクスピアの戯曲です。
14世紀のイタリアのヴェローナが舞台。神聖ローマ帝国の皇帝フリードリヒ2世と、ローマ教皇グレゴリウス9世は互いに対立しており、皇帝派と教皇派に分かれて熾烈な戦いを繰り広げていました。モンタギュー家とキャピュレット家もその例に漏れず、互いを憎み合っていました。
モンタギュー家の息子ロミオはある日友人と共にキャピュレット家に侵入し、ジュリエットと出会います。たちまち恋に落ちた二人は修道士ロレンスの元で結婚の誓いを立てます。しかし、そのすぐ後にロミオは争いに巻き込まれ、親友を殺されたロミオは怒りのあまり、キャピュレット夫人の甥を殺めてしまいます。そのせいでロミオは都市を追放され、ジュリエットはヴェローナ大公の親戚パリスと婚姻を勧められるも拒否した為、家から勘当されかかります。
困ったジュリエットはロレンスに助けを求めます。修道士は「薬で仮死状態となって葬られ、迎えに来たロミオと共に此処から逃げなさい」と提案しました。それに賭けた彼女は2日間仮死になる薬を飲み、霊廟に葬られました。しかし、ロミオへの伝達が上手くいかずに彼はジュリエットが本当に亡くなったと思い込みます。そして毒をあおって息絶えてしまったのです。仮死状態から目覚めた時、ジュリエットはロミオの亡骸を発見し、自分も短剣で胸を刺して生を終えたのでした。この痛ましい事件があり、いがみ合っていた両家は和解をしたとされています。
悲恋の代表格ロミオとジュリエットの絵画13点をご覧ください。
「ハインリヒ・フォン・アンゲリ作 1840-1925年」
キャピュレット家の舞踏会に忍び込んだロミオは、違う女性に恋
していたにも関わらず、ジュリエットを目にした途端恋に落ちて
しまいます。彼女も一目惚れをし、二人はバルコニーで愛を
語らいます。赤いカボチャパンツのロミオですねw
「Henri-Pierre Picou 作 1824-95年」
バルコニーからの遠距離キッス。出会って数日間逢瀬して、二人は
愛を深めた・・・。なのかと思ったら、出会っていきなりキスして、
翌日に結婚するというスピード感。早すぎるって!
「作者不詳 19世紀頃?」
まるで聖母マリアのように慈悲深くロミオを抱きしめるジュリエット・・・。
彼女は14歳になったばかりだそう。中世時代から考えれば、
もう大人なのね。現代で言えば中学生なのだけれども。
「フランチェスコ・アイエツ作 1791-1882年」
窓際での熱い抱擁にキス。ロミオは若い初々しい青年の場合と、
ちょっと年上の男性の場合がありますね。そういうロミオは16歳の
設定なのだとか。これで16歳だって・・・!?
「ベンジャミン・ウエスト作 1738-1820年」
愛の詩人にでもなっていそうなロミオ。二人の味方である乳母が
誰かが来ないよう見張っていてくれているようです。
いちゃいちゃしているなぁ・・・。
「マザー・ブラウン作 1761–1831年」
修道士ロレンスに頼み、出会って翌日には結婚式を挙げる二人。
早すぎるというツッコミは置いておいて、二人は晴れて夫婦と
なったのでした。ロレンスはこの二人が両家を和睦に導いてくれる
と期待していたのですが・・・。
「Thomas-Francis Dicksee 作 1877年」
そんな二人の元に不幸が起こります。成り行きでロミオはキャピュレット
家の甥を殺し、追放となりました。更に、ジュリエットの元には縁談話が。
ロミオと永遠に会えなくなってしまうと嘆いた彼女は、ロレンスの
元へ相談に行きます。
「ウィリアム・ジェームス・グラント作 1829-66年」
ロレンスは「仮死状態になる薬を飲んで家族に死んだと思わせ、
霊廟でロミオと再会して共に逃げなさい」と提案します。ジュリエットは
この危険な賭けに逡巡するものの、やる事にしました。
ジュリエットさん、目がマジです。
「フレデリック・レイトン作 1856-58年」
薬を飲み、48時間の仮死状態となったジュリエット。
家族はそんな事つゆ知らず、一人っ子の愛娘が亡くなったと思って
酷く悲しみます。そうして彼女は霊廟へと葬られます。
「ヨハン・ハインリヒ・フュースリ作 1809年」
しかし、その計画はロミオへと渡っていませんでした。手紙を託された
使者は検疫官によって足止めされていたのです。ロミオの従者の
方が彼女の死を報告し、ロミオはジュリエットの元で毒をあおって
命を絶ってしまったのです。
「フレデリック・レイトン作 1855年」
ジュリエットが仮死から覚めた時、目に飛び込んできたのはロミオの
遺体。ロレンスが事情を話して彼女を逃がそうとしますが、
ジュリエットはロミオの短剣を拾い、胸に刺してしまったのです。
この悲劇により両家は和解したのでした。
「グスタフ・クリムト作 1886年 シェイクスピア劇場の壁画(部分)」
クリムトはオーストリアのブルク劇場の天井に三点の作品を描きました。
これはその中の一つ。ロミオとジュリエットの演劇を観客が鑑賞
しているようです。かなり近くから鑑賞できたんですね。一番右側の
首襟をしている男性が、クリムトの自画像だとされているそうです。
「マザー・ブラウン作 1761–1831年」
こちらは俳優のプロマイド絵画と言った感じで、ロミオ役の人が
とされています。このような絵画が劇場のポスターになったのかな。
シェイクスピアの物語の多くは既存の神話や文学を下敷きにして作られており、このロミオとジュリエットもギリシャ神話の「ピュラモスとティスベ」がベースになっているとされています。
隣人同士のピュラモスとティスベはいつのまにか愛し合うようになっていましたが、家は折り合いが悪く、二人の愛を反対していました。ある日、彼等は駆け落ちをしようと、ニノスの墓所で合おうと約束します。最初に着いたのがティスベでしたが、そこへ血まみれのライオンが現れて彼女は慌てて逃げ出します。その際にベールが脱げてしまい、ライオンはそれにじゃれついて何処かへ行ってしまいました。
何も知らないピュラモスが到着し、血で汚れたベールを発見。ティスベはライオンに喰われてしまったと思いこんだ彼は、絶望のあまり短剣で自害。隠れていた場所から出て来たティスベは絶命した恋人を見て、その短剣で自害してしまったのでした。
物語の複雑性や死の経緯こそ違うものの、よく似た構成をしていますね。猛獣に喰われてしまったと思った、というのは何だか現実にありそうで怖いです。このギリシャ神話の物語から幾つもの類似作品が現れ、このロミオとジュリエットという傑作品は生まれました。
その類似作品の中には、ロミオが毒をあおろうとする瞬間に、ジュリエットが目覚めてハッピーエンドという結末のものもあるそうです。個人的にはそれでいいかもと思うのですが、やはり心に響く作品は悲恋ありきなのでしょうかね・・・。
→ シェイクスピアの他の戯曲の絵画を見たい方はこちら
【 コメント 】