クー・フーリンの挿絵13点。光の神ルーの息子である、ケルト神話の荒ぶる英雄 | メメント・モリ -西洋美術の謎と闇-

クー・フーリンの挿絵13点。光の神ルーの息子である、ケルト神話の荒ぶる英雄

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Joseph Christian Leyendecker Cuchulain in Battle 1911 - コピー

 クー・フーリンはケルト神話に登場する半神半人の英雄です。
 光の神ルーが父で、母はコノア王の親族デヒティネ。ある日、王宮からデヒティネと50名の乙女が消えてしまい、三年間行方知れずでした。彼女達はルーの屋敷に住んでおり、王が国に戻るよう言うと、デヒティネは赤ん坊を渡したのです。彼は「セタンタ」と名付けられ、後に英雄クー・フーリンとなったのです。
 クー・フーリンは「クランの猛犬」という意味で、少年の時に獰猛な猛犬を簡単に殺したことからそのあだ名が付けられました。青年となった彼はフォルガルの娘エメルに求婚するも、断られてしまいます。その為、影の国の女勇者スカアハの元で修行することにしました。

 その後、彼は師匠に槍ゲイ・ボルグを授けられ、一人前となってエメルと結婚を果たしますが、コノートの女王メイヴが立派な牛を奪おうと進軍してきたのです。クー・フーリン以外の武人たちは呪われて進軍できない状態にあった為、彼一人で対抗しました。その力は凄まじく、敵は次々と倒されていきます。しかし、「毎日一人の戦士を出してクー・フーリンと一騎打ちをさせる。その間は進軍しても良い」という契約が為され、クー・フーリンは歴戦の勇士だけではなく、修業時代の親友までをも、手に掛けなければならなくなったのです。長い間続いた戦争もクー・フーリン側の勝利に終わりました。
 ですが、プライドを深く傷つけられた女王は、クー・フーリンを暗殺しようと次々と刺客を送ったのです。彼は自らの死期が近い事を悟り、王や妻に別れを告げました。クー・フーリンは敵に奪われたゲイ・ボルグに胸を刺されて絶命してしまいます。倒れないように自らの身体を柱でくくり付けるという、英雄らしい最期でした。
 では、クー・フーリンの挿絵12点と、1点の彫刻をご覧ください。




「ステファン・リード作  1904年」
宴会に遅れてやって来たクー・フーリンは、安全の為に配置されていた
凶暴な番犬を簡単に倒してしまいます。賞賛の言葉を浴びせる
人々でしたが、無防備になってしまったので代わりにクー・フーリンが
番人となることに・・・。クー・フーリンという名はこれに由来しています。
Stephen Reid from Eleanor Hull   1904

ステファン・リード作    1904年」
少年のクー・フーリンは王に騎士にさせてくれるよう望み、渋る王に
自分の馬鹿力を見せつけます。納得した王は彼を騎士とし、武器と
戦車を与えたのでした。
Stephen Reid 1904

ハロルド・ロバート・ミラー作   1905年」
クー・フーリンは妻にするなら彼女しかいない!とフォルガルの娘
エメルに告白をしますが「勇者でなければ了承しません」という言葉を
いただきます。女性に囲まれ非難されているワイルドなクー・フーリン。
なんか可哀想な状況になっています・・・。
 Millar from Charles Squire   1905

ステファン・リード作   1873‐1948年」
修行を決意した彼は、影の国の女性スカアハに師事します。
フェルディアと親友となったり、師匠の妹と争ったりしながら成長して
無事に一人前となり、槍ゲイ・ボルグを授けられて彼女と結婚します。
Stephen Reid

「J. C. Leyendecker 作  1911年」
しかし、平和な国家に危機が訪れます。立派な褐色の牛を求めて
コノートの女王メイヴ率いる大軍が押し寄せて来たのです。
戦乙女のような、格好いい女性として描いていますね。
 Leyendecker  1911

ステファン・リード作   1873‐1948年」
味方軍は呪いに侵されており、動ける騎士はクー・フーリンたった一人。
陥落は楽勝かと思いきや、彼がめちゃくちゃ強い。一人で何百人もの
敵をなぎ倒していきます。
Queen Maeve meets with Cuchulain Illustration by Stephen Reid

ウィリー・ポガニー作  1943年」
平常、彼は17、8歳の美少年にしか見えません。しかし、ひとたび
戦闘となると、髪は逆立ち、全身が膨張して光り、片目は頭にめり込んで、
片目は頬まで飛び出すという恐ろしい姿に変貌します。
敵は恐ろしさのあまり、何百人もがバタバタと死んでしまったとか・・・。
1943   Willy Pogány

ステファン・リード作    1904年」
最強無敵なクー・フーリンを陥れようと、女王は彼の親友である
フェルディアを差し向けます。始めは「戦いたくない」と遠慮がちに
戦っていましたが、次第に運命を受け入れ、本気になって戦い、
クー・フーリンは親友を殺めてしまうのでした。
Ferdia Falls at the Hand of Cuchulain  Stephen Reid 1904

「E. Wallcousins  1905年」
親友が死に、自身も重傷を負っていたのでクー・フーリンは気絶して
倒れてしまいます。本望そうな表情を浮かべるフェルディアを抱く、
無念げなクー・フーリン。ぐっと胸にくる作品ですね。
 Wallcousins Cuchulainn Carries Ferdiad Across the River 1905

J・C・ライエンデッカー作  1911年」
意識を取り戻したクー・フーリンは、呪いが解けた自軍と共に戦い、
遂に女王の軍を打ち倒します。「命は助けて」という言葉を聞いて
女王を許したのですが、それがクー・フーリンの破滅の始まりでした。
Joseph Christian Leyendecker Cuchulain in Battle 1911

ステファン・リード作    1904年」
女王が差し向けた刺客の中に、妖術師の兄弟がいました。彼等は
悲惨な幻覚を見せてクー・フーリンを苦しめ、衰弱させます。日々の
戦いに疲れ果てていた彼は、死期が近い事を悟ります。
そして、遂にゲイ・ボルグが自身の胸に深々と突き刺さったのです。
Stephen Reid in Eleanor Hull's , 1904

「作者不詳  1983年頃」
彼の死の直前、一羽のカラスが肩に止まりました。このカラスは
死の女神モーリガンの化身であり、クー・フーリンが過去にモーリガンの
傷の手当てをしたことがあった為、サポートしてくれていたのでした。
'Death of Cuchulain, 1983 - artist unknown

オリバー・シェパード作  1911年」
彼はこぼれ出た内臓を水で洗って腹に収め、最後に水で喉を潤して
から、柱のような石に自らの身体をくくりつけました。
こうしてクー・フーリンは英雄らしく、立ったまま亡くなったのです。
The Dying Cuchulain by Oliver Sheppard (1911)

 ヘラクレスにオデュッセウス、シグムンドにシグルズ、アーサー王にローラン・・・。西洋中に英雄は多しと言えど、恐ろしい容貌の英雄ランキングはクー・フーリンが栄光の一番でしょう。
「骨は皮膚の中で回転し、全身は膨れ上がって光りに包まれ、口は耳まで裂け、衣服ははじけ飛び、踵とふくらはぎは裏返り、逆立つ髪からは血がしたたり、片目は骨の奥に引っ込み、もう片方は頬から飛び出るほど巨大化する」

 最初この記述を見た時、余りの凄まじさに吹き出しそうになりました(笑) 文章を順番に想像していくと、クー・フーリンはとんでもない化け物になってしまう…。親友のフェルディアさんはよくこの状態のクー・フーリンと相まみえながら戦いましたね。見慣れたものだったのでしょうか…。また、戦闘モードクー・フーリンは敵味方の区別もなく殺戮を繰り返すベルセルク状態となるので、若い女性の裸の集団を見せて通常モードに戻すこともありました。怪物状態のクー・フーリンといえど、うら若き男性なんですね(ノωノ)



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