盗賊(強盗)の絵画13点。旅人や貴族の身ぐるみを剥ぐ、西洋の追い剥ぎの悪しき姿 | メメント・モリ -西洋美術の謎と闇-

盗賊(強盗)の絵画13点。旅人や貴族の身ぐるみを剥ぐ、西洋の追い剥ぎの悪しき姿

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 土地が開拓されていなかった時代、都市から都市への移動は命がけの行為でした。自然の猛威や猛獣なども危険で気を付けるべき存在ですが、最も厄介な存在は盗賊(追いはぎ)達でした。彼等は何名かでグループを作って旅人を狙い、凶器で脅して身ぐるみを全て奪うのです。
 山の中に拠点を置いて通行人を襲う盗賊を山賊、海で船を使って他の船を襲撃する盗賊を海賊と呼び、戦争に参加した傭兵も強盗に変貌することがありました。旅の途中の農民や貴族を襲うだけではなく、村まるごとを襲い、略奪するものも現れました。そうなったら人々は逃げるしかなく、全てを奪い尽くされてしまうのです。
 北方ルネサンスや近代の画家が描いた、強盗の絵画13点をご覧ください。

 

「ピーテル・ブリューゲル(子)作 1564 – 1637年」
旅をしている最中の夫婦を襲う盗賊たち。祈って命乞いをする
二人に対し、三人の盗賊は取り囲んで「金目の物全てよこせ!」と
言っているのでしょうか。ガラが悪すぎます。

「ヤン・ブリューゲル(父)とセバスティアン・フランクの共作 16世紀」
ブリューゲル兄弟そろって強盗の絵を描いてますね・・・。
戦争で雇った国外の傭兵の中には、仕事がなくなると強盗へと
変貌し、近くの村を襲って盗みを働いた者もいました。

「作者不詳のフランドル絵画  17世紀」
こちらの作品は強盗が小さな村で略奪を行っていますね。
現代では考えられない村単位での略奪が、当時各地で起こって
いました。農民たちは成す術もなく、折角貯めた家畜や財産、
食糧などを根こそぎ盗られてしまったのでした・・・。

「作者不詳のフランドル絵画  17世紀」
盗賊達の狙いは旅人や農民だけではありません。移動中の貴族も
標的にしていました。馬車に乗った貴族たちの元に、三人(?)の
盗賊が襲い掛かっていますね。貴族たちは身を守る為、用心棒を
雇ったりしなければなりませんでした。

「作者不詳のフランドル絵画  17世紀」
しかし、用心棒を雇うお金の無い一般市民が旅に出る際は、盗賊に
出会わないよう祈るしかありませんでした。
老人だろうが女性だろうがお構いなし。多勢に無勢ではぎとります。

「ダヴィド・ヴィンケボーンス作  1576-1632年」
「巣の強盗」という題名。正しいかは分かりませんが、鳥の巣を
盗もうとしている男を注意している二人の男性。その後ろに
忍び寄って財布を盗む小男・・・。もしかしたらこういう盗みの
手口があったのかもしれませんね。

「ダヴィド・ヴィンケボーンス作  1576-1632年」
教会前には貧者や病気の者、障害を持つ者が集まり、食料などの
施しを貰おうと押し寄せています。強盗の作品ではありませんが、
彼等は食糧を奪い合い、殴り合っているようです。
他の人が貰った食糧を奪う者がいそうですね。

「作者不詳のドイツ出身の画家作  19世紀」
貴族の青年が山へ猟に出ていたのでしょうか。しかし、犬は殺され、
武器は取り上げられ、山賊達にナイフで脅されてしまっています。
このまま身ぐるみを剥がされ、「おたくの坊ちゃんを返して欲しくば
金を寄こせ」って身代金の要求をするんですかね・・・(:_;)

「Heinrich Buerkel 作  1802-69年」
こちらも移動中の貴族を標的にした盗賊たち。まず一人が馬車の
前に出てきて馬を停止させ、仲間達が一気に襲い掛かるという
戦法なのでしょうか。集団で来られたらひとたまりもありませんね。

「ウィリアム・ストラット作  1852-87年」
オーストラリアのビクトリア州でゴールドラッシュが起きた時、
その金を求めて強盗が頻発したそうです。金を採掘した裕福層の
人達を縛り上げ、金を奪う盗賊達。欲は人を狂わせます。

「ウィリアム・フリス作  1819-1909年」
17世紀イギリスで有名な盗賊にクロード・デュバルという者がいました。
フランス人の彼はかなりの伊達男で女性に優しく、100ポンド奪った
後にダンスを申し入れたという伝説もあるとか。赤い服のデュバルが
女性のハートを射止めようとしていますね・・・。

「テオドール・ヒルデブラント作  1829年」
「強盗」というダイレクトな題名の作品。40~50代の男はライフルを
手に持ち、鋭い眼差しを横へ向けています。これから襲おうと
している相手を見ているのでしょうか。強盗を主役にした肖像画は
この時代になってから表れたようです。

「カール・フリードリヒ・レッシングの追随者作 19世紀頃」
こちらも強盗を描いた作品。これまで強盗=悪人というイメージが
強い作品ばかりでしたが、この男性は子供の肩をそっと抱いています。
強盗にも家族がおり、生活をしていく為には仕方がないという
メッセージを添えた、ロマン的な雰囲気を称えた作品ですね。

 「追いはぎ」と言いますと、個人的に芥川龍之介の「羅生門」を思い出します。教科書に載っていたのですが、死体から髪を抜く老婆のシーンと、下人(主人公)が老婆の衣服を奪うシーンにはぞっとさせられました。日本でも旅人の身ぐるみを剥いでしまう「追いはぎ」は存在していました。彼等は悪人ではあるとは思いますが、かつては羅生門の下人のように真面目に働いていた人だったのかもしれません。それが何かのきっかけで盗みを働き、それが常習化して強盗に変貌してしまう・・・。
 現代日本にこそ山賊や海賊はいなくなりましたが、空き巣やあらゆる詐欺、時には恐喝を使って財産を奪おうとする人は存在します。相手の手口をしっかりと把握し、大切な財産を狙われないようにしていきたいですね(>_<)

 

【 コメント 】

  1. 管理人:扉園 より:

    >> 映画好き様へ
    こんばんは^^
    今「藪の中」の物語をwikiで読んだのですが、なかなかのエグイ荒んだ物語ですね^^;
    でも、人間の性根って案外そんな感じかもしれませんね…。
    「七人の侍」タイトルは有名でもあらすじを始めて知りました。←ぇ
    西洋の傭兵が村を襲ったように、日本も戦にあぶれた武士崩れの盗賊が村を略奪していたのですね(> <) 教会の施しは無料で食べ物がもらえるので、平民が乞食や障害者になりすましてもらおうとしたり、外部の者がもらおうとしたり、奪い合いが起こったりしたそうです。 (その為に教会側は地域の乞食の登録バッジを渡し、それを付けた者のみに施しを分けたという話もあります) 強盗や盗賊ではありませんが、人間のやましい心が垣間見える作品だったので、掲載してしまいました^^;

  2. 映画好き より:

    私も、『羅生門』を思い出しました。
    ちなみに、黒澤明監督の映画『羅生門』は芥川の『藪の中』がベースになっていて、こちら『藪の中』のほうもなかなかの悪党ぶりです。(映画を観たのはだいぶ前、小説を読んだのは最近なので、小説のイメージのほうが残ってる。)
    ああ、黒澤監督映画でいうと、『七人の侍』に出てくる野武士の集団も近いかも。戦国時代というのは、村の秩序が荒れた時代でしたから……ちゃんとした領主がいればいいのですけどね。
    ……って、教会前の乱闘? も、ここに入れてしまうのですかっ(・o・);

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