海上を歩くキリストの絵画12点。暴風荒れる中しずしずと進み、使徒ペトロを導く | メメント・モリ -西洋美術の謎と闇-

海上を歩くキリストの絵画12点。暴風荒れる中しずしずと進み、使徒ペトロを導く

スポンサーリンク
Juius Von Klever

 十二使徒と共に宣教し、徐々に信徒を増やしてきたイエス・キリスト。
 彼は少しのパンと魚で4~5000名程の群衆を満腹にさせる、という奇跡を行うと群衆はどよめきました。「彼こそ救世主メシアだ!王にしよう!」と。「世界を我々のものにしよう!」と言い出すものもあらわれました。キリストは群衆の邪な考えを感じ、人々を解散させて弟子達に船に乗り、ガリラヤ湖を渡ってカファルナウムへ行くように言いました。キリストは一人山に登り、神に祈ります。

 弟子達の乗った船は湖の真ん中あたりまできました。天気が悪く波はうねり、進むのに一苦労です。その時、使徒の誰かが「幽霊だー!」と叫びました。見ると、暗闇の水面に何者かが近づいてきます。皆、大パニックです。
 すると何者かは「安心しなさい。恐れることはありません」と言いました。ペトロ(ペテロ)は勇気を振り絞り「主よ。水上を歩けるよう、命令してください」と答えました。ペトロはゆっくりと水上を歩いてキリストの元へ行こうとしますが、暴風を感じて怖くなってしまった途端、沈み始めてしまいます。「主よ!」とペトロが助けを求めると、キリストは彼の手を掴み「信仰の少ない人よ、疑いに負けたのは何故ですか?」と問いかけました。
 二人が船に乗り込むと、暴風がやみました。船はするすると岸へと近付いていきます。弟子達はその奇跡に驚き「確かにあなたは神の子です」と敬意を表しました。
 海上を歩くキリストとペトロの絵画12点をご覧ください。



「Amedee Varin 作 1860年」
弟子達が嵐の中、船を必死に漕いでいると、海上にイエスの
姿が!何事もなく歩いてくる彼の姿に弟子たちは驚愕します。
この作者さんは妖精さんとかの可愛いイラストを描いています。
このような伝統的な作品も素敵です。
Jesus Walking on the Water, Amedee Varin 1860

「作者不詳 彩色写本の挿絵」
「主よ、私に歩けるようご命令を…」とペトロは彼の元へ
恐る恐る進みます。装飾写本のゆるーい波、こじんまりとした
船が良い味を出していますね。キリストの笑顔が爽やかw
Anonymous

「作者不詳 彩色写本の挿絵 1386年」
群衆に食べ物と与えるキリストと、海上徒歩の二つのシーンが
描かれています。ペトロの足どうなっちゃった!?
なんだかレトロな漫画でありそうな、全速力で走る渦巻の足
っぽくて可愛らしいですねw彼は必死です!
Anonymous Peter and Jesus Walk on Water illumination  1386

「作者不詳 14世紀」
一生懸命、海上を歩くペトロ。あと少しの距離を、そろり
そろりと進みます。あら、キリストもう上陸しちゃってますよ!
というか湖がこぢんまりサイズ!
Anonymous 14th

「ティントレット作 1575-80年」
陸地に立つ中「私のもとへ来なさい」というキリスト。
勇気を出して船から足を出すペトロ!
Jacopo Tintoretto - Christ at the Sea of Galilee 1575-80]

「アレッサンドロ・アローリ作 1535-1607年」
キリストの手を掴むペトロの表情が、まさに奇跡に対し
畏敬の念が感じられますね。
St. Peter Walking on Water, by Alessandro Allori 1535–1607

「フランス出身の画家作 17世紀」
「恐れる事はない」と沈みそうなペトロの手を取り、陸へと
導くキリスト。彼の深紅の布にも重力は存在しません。
17Th Century French Old Master

「コンラート・ヴィッツ作  1444年」
牧歌的な風景の中、弟子達は漁をやっちゃっておりますw
こちらも上陸しちゃったキリスト。
あぷあぷしてるペトロを助けてあげて!今にも溺れそうよ!
La Pêche miraculeuse, 1444. Huile sur bois

「アレッサンドロ・マニャスコ作 1740年」
大胆な筆致で描く二人のドラマ。上の作品ののんびりとした
空気とは異なり、嵐のなか霊的な力でペトロを救い上げて
いますね。後ろの弟子達の「奇跡だー!うおおー!」という
歓声も聞こえてきそう。
1740 ALESSANDRO MAGNASCO

「Paul BrillとFrederik van Valckenborch作 1595年」
背景を描くことに力点を置いた作品ですね。波や雲の荒れ具合が
感じられます。それにしても画家の皆さん、キリストとペトロと
船の距離感が結構近い・・・w
Christ Walking on the Sea of GalileeBril, Paul 1595


「フランソワ・ブーシェ作 1766年」
劇の一幕を見ているかのような、ドラマチックな構成ですね。
この状況だとモーセみたいに海も割れてしまいそう・・・。
天使さん達も奇跡を祝福しにやってきています。
St. Peter Invited To Walk On The Water 1766

「ギュスターヴ・ブリオン作 1863年」
ペトロ、いっぱい歩きましたね!聖書の記述通りに描くと、
これくらいの感覚になりそうな予感がします。この作者さんは
ドラマチックな構成よりも記述を重視したのかな。
GUSTAVE BRION (1863)

「ユリウス・フォン・クレーファー作 1850-1924年」
夕日を背に、厳かな雰囲気で荒々しい海を歩くキリスト。
遠くに使徒の乗った船が見え、神聖な存在が起こす奇跡、
という劇的な物語の始まりが感じられます。
Juius Von Klever

 パンや魚を民衆に配ったあと、イエス・キリストはひとり山に登って父なる神に祈りを捧げています。使徒たちはガリラヤ湖を進んで真ん中あたりまで来て、奇跡を目撃しています。調べてみると、ガリラヤ湖は南北に21km、東西に13kmの大きさであるそう。記述によっては使徒達は5~6km進んだと書かれているので、東西に進んでちょうど真ん中あたりに来たという感じですね。

 古代の船の平均速度は3ノット(5.5km/h)程度であるそうですので、嵐にもまれて全然進まない事を考えると湖の半分に到達する地点6kmを3時間くらいはかかったのではないでしょうか。(めっちゃ推測ですが)
 一方、キリストはガリラヤ湖の岸の近くの山に登り、祈りを捧げてから徒歩で湖の真ん中へと向かっています。山が標高500mくらいだとしたら、登って祈って降りるのに2時間くらいは経過していると思います。(通常の登山する人だと片道1時間300mくらい、健脚家だと500mくらいだそうですので・・・)人の徒歩はおおよそ(2.9~3.6km/h)であるそう。山の麓から湖の真ん中まで歩いてくるとなると、7kmくらいはありそうなので、歩いてくると2時間はかかってしまいます。合計4時間。

 使徒達が全然進まなくて4時間かかって6kmを進んだのか、キリストがめっちゃ急いで3時間ほどで山も湖も早足で制覇してしまったのか・・・。もしくは御力でワープしたのか・・・。
 奇跡のお話でこんな考察をするのはいけないと思いつつも、気になっちゃいますw


 

【 コメント 】

タイトルとURLをコピーしました