【絵画11点】トリニティ顔。神とキリストと聖霊が三位一体となり、頭に三つの顔を表現 | メメント・モリ -西洋美術の謎と闇-

【絵画11点】トリニティ顔。神とキリストと聖霊が三位一体となり、頭に三つの顔を表現

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 三位一体。それは「神 (父)」「キリスト(子)」「聖霊」の三体を合わせると、「唯一神」となると言った考え方です。
 キリスト教は唯一神の宗教です。多神教の神は悪魔とみなし、キリスト教の教える神のみが「神」と考えておりました。しかし、キリスト教徒はふと考えました。キリストは神の子なら神か?自らの内に住んでいる聖霊も神?いや、世界を支配している神こそ神じゃないのか?あれ、三人も神がいるぞ!この問題は様々に解釈され、ほとんどの思想は異端とされました。
 こうして考え出された結論が「三位一体(トリニティ)」でした。全て一緒にしてしまえばいいじゃん!という訳です。三つの物が合体して大きなロボットになる!と言った感じです。神、キリスト、聖霊は三つで一つとなり、これを完璧なる神の象徴として多くの画家に描かれることになりました。
 この三体を別々に描く者もいましたが、これらを一つとして表す為に「一つの頭で三つの顔」として描く者もいました。トリニティな作品11点をお楽しみください。

 

「アーニョロ・ガッディ作  14世紀」
これは三体を別々に表した作品。父なる神が神の子を支え、
十字架の上には聖霊の象徴である鳩が止まっています。

「作者、年代共に不明」
家族団欒をしているかのような和める三位一体。
太陽が神、子羊がキリスト、鳩が聖霊です。

「ピーテル・クック・ファン・アールスト作  16世紀半ば」
ゲームパッケージや映画ポスターのような三位一体。
個人的に絵柄や構図がとても好きです。

「Artus Wolffort 作  1620年」
全員カメラ目線で、ブロマイドのような三位一体。
この写真が売られていたら、思わず買ってしまうかも・・・(笑)

「スペインのシトー修道会の教会絵画  1570年」
三つの存在が一つとなりました。顔が三つになっているのが分かります。
中央の図式は「三位一体の盾」と呼ばれており、西方教会によく見られます。

「ペルーのクスコ工房  18世紀」
植民地初期、アメリカに渡った画家が描いたものと思われます。
眉毛や髭が繋がっているのが図式っぽくて面白いです。

「ロシアのイコン  年代不明」
上と同じように、両側の顔は横向きではなく正面向きでついています。
眉毛と髭がくっつき、前髪が可愛らしい感じになっています。

「Gregorio Vásquez de Arce y Ceballos 作  1680年」
三位一体の三角パワーを発している完璧なる唯一神。
足元の首だけの天使(ケルビムかな?)がちょいと不気味です。

「ネーデルラント絵画  1500年頃」
この作品は両側の顔が横向きで表現されておりますね。
案外こちらの方がマイナーなんです。

「作者不詳  1542年?」
ワイルドな三位一体。全ての顔がカメラ目線なので、
部屋に飾っていたら何かが起こりそうです。

「オーストリアのヘルブルン宮殿にある絵画」
じっと見ていると目の錯覚が起こって来そうな三位一体。
唇の赤さがなんか怖い・・・!この存在が歩いてきたら、倒れる自信がある!

 昔「トリニティ・ブラッド」という吸血鬼と人間の戦いを書いた小説があり、管理人は三位一体という言葉をそこで知りました。中世ヨーロッパ風の世界観と、美麗なイラストで大好きな作品だったのですが、作者である吉田直氏の夭逝でラストを迎えないまま終わってしまいました。本当に残念です。
 昔から好みは変わっていないけれど、段々と好みがエスカレートしているなぁと実感しています。これからも管理人はエスカレートしますよ!(え

→ < 画像元のサイトはこちら(英語) >

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【 コメント 】

  1. 管理人:扉園 より:

    >> 美術を愛する人様へ
    キリストの三面はちょっと恐いですよね…^^;
    十一面観音とか千手観音の方がお顔や身体が凄いのに、造形美を感じますね。
    私個人としては、仏教の方々は元々このような姿だから違和感がなく、キリストは通常の顔に慣れている中でいきなり三面の顔を見たから、違和感を覚えるのかもしれません。
    あと、キリストの三面は目を共有しており中途半端に三面だから、より不気味さを感じるのではないでしょうか?

  2. 美術を愛する人 より:

    日本人は阿修羅や十一面観音などで顔が多い仏に慣れてますが、3つの顔があるキリストはここで初めて見ました。
    阿修羅は美しいのに、三面キリストは不気味に感じるのはなぜでしょう。

  3. 管理人:扉園 より:

    >> 美術を愛する人様へ
    ご訪問ありがとうございます。
    お役に立つ事ができてこちらも嬉しいです^^
    三位一体の表現は近代の劇にも影響を与えているのですね。
    シュールや不気味さの中に、どこか神秘性が感じられます。
    三つの顔(鼻)は花嫁に対する理想の完全体として用いられているかもしれませんね。
    仏教では十一面観音や千手観音など、多顔ではなく多頭の表現となり、十一面観音は「四方八方の人を救済する為に多頭になった」とされているので、由来が全く違います。
    男女の顔と身体が合わさった「アンドロギュノス」の方は完全体として表現されていて、興味深く思います^^

  4. 美術を愛する人 より:

    三位一体の絵画、初めて見るものばかりでした。自分ではたどり着けない美術の世界を教えていただいてありがとうございます。
    下記のサイトの写真は、フランスの作家、ウジェーヌ・イヨネスコの不条理劇「ジャック、または降参」のワンシーンです。右が主人公のジャックで、「僕のお嫁さんは鼻が3つなきゃ嫌なんだ」とゴネたら、本当に鼻が3つの女の子が来た、という次第。こういうストーリーと、それに対応する衣装とは、三位一体のキリストの顔を知っているからこそ出てくるイメージなのでしょう。女性のマスクはバケモノ感がなく、ちょっとコケティッシュに出来上がっています。
    http://www.roger-viollet.fr/fr/asset-128436-jacques-ou-la-soumission

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