トリスタンとイゾルデの絵画11選。妙薬を飲んだ二人は禁断の愛を交わし、絶命する | メメント・モリ -西洋美術の謎と闇-

トリスタンとイゾルデの絵画11選。妙薬を飲んだ二人は禁断の愛を交わし、絶命する

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1916 John William Waterhouse -

 「トリスタンとイゾルデ」、もしくは「トリスタン物語」は中世時代から語り継がれている、悲恋物語です。
 起源はケルト(イギリス辺り)とされ、12世紀頃にフランスで物語としてまとめられて、13世紀頃にドイツや他の場所へと伝えられていきました。物語によって内容の変化がありますが、大筋はマルク王に仕える騎士トリスタンと、その王の妃イゾルデが愛の妙薬を誤って飲んでしまい、互いに惹かれ合って命を落としてしまうという話です。禁断の愛や悲劇をふんだんに盛り込んだこの物語は、現代でも人気があり、オペラや映画、歌劇や劇団となっています。
 中世と象徴主義の絵画をミックスさせながら、トリスタンとイゾルデの作品11点をご覧ください。なお、作品の場面と説明文が一致していない部分があるので、ご了承ください。


 

「Gabriel BISE 作(?)  15世紀」
マルク王に仕えるトリスタンは誇り高い騎士として知られていました。
王と結婚するのはアイルランド王女イゾルデだというお告げがあり、
トリスタンはそこへ向かいます。
15th century Gabriel BISE

「Runkelstein 城の壁画」
アイルランド国では狂暴な竜に悩まされており、「勝った者には王女を
与える」という布告を出していました。トリスタンは昏倒しながらも竜を
退治し、マルク王とイゾルデ王女を結婚させるよう持ち掛け、
アイルランド国王はそれを了承します。
Runkelstein Castle-tristan

「ハーバート・ジェームス・ドライパー作  1901年」
しかし、トリスタンは故郷への船中、イゾルデと共に媚薬を飲んでしまいます。
それは王妃から「マルク王との初夜に飲むよう」と言われて渡されたものでした。
二人は激しい情愛に囚われ、禁断の道を歩んでいきます。
Herbert James Draper 1901

「シドニー・メトヤード作   19-20年」
不倫は王を裏切り、騎士道を大きく外れる罪であるにも関わらず、二人は
王の目を盗んで逢瀬を重ねました。マルク王はトリスタンを信頼したかった
ものの、二人の不貞を確信してしまいます。
Sidney Harold Meteyard  19-20

「ジョン・ウィリアム・ウォーターハウス作  1916年」
マルク王はトリスタンを火刑にし、イゾルデをハンセン病患者の家に
閉じ込める事に決めました。トリスタンはそのことに気付いてイゾルデを
連れて脱出し、森へ隠れました。
1916 John William Waterhouse

エドモンド・ブレア・レイトン作  1902年」
しかし、トリスタンは騎士道精神に苦悩し、悩んだ挙句にイゾルデを
マルク王に返還し、自身はこの地を去ることに決め、王と和解しました。
イゾルデは裁判にかけられましたが、身の潔白を証明しました。
Edmund Blair Leighton's 1902

「August Spiess 作  1892年」
トリスタンはブルゴーニュへ付き、親友になった騎士の妹である「イゾルデ」
と結婚します。区別する為にヒロインは「金髪のイゾルデ」、彼女は
「白き手のイゾルデ」と呼ばれます。
August Spiess - 1892

「15世紀の彩飾写本」
ある日、トリスタンは瀕死の重傷を負ってしまい、治せるのは金髪のイゾルデ
だけということで彼女が呼ばれました。しかし、妻の騙しによってイゾルデが
此処へ来ないと思いこんだトリスタンは、ショックのあまり絶命してしまいます。
tristan   isolde  15

「フォード・マドックス・ブラウン作 1864年」
到着した金髪のイゾルデはトリスタンの亡骸を見て、悲しみのあまり
亡くなってしまいます。それを哀れんだマルク王は、二人の亡骸を
隣に葬りました。(トリスタンの顔が恐いです・・・)
Ford Madox Brown -- The Death of Sir Tristan 1864

「Rogelio de Egusquiza 作  19世紀後半‐20世紀前半」
互いの墓から生い茂った木は枝を伸ばし、絡みついて決して離れる
ことがなかったとされています。
Rogelio de Egusquiza

「サルバドール・ダリ作  1944年」
そして、ダリが描くとこんな感じに・・・。二人の面影はどこへいったのでしょう。
いや、ちょっと樹っぽい感じ?
Tristan and Isolde, 1944 - Salvador Dali

 本を読むと、マルク王可哀想!と、トリスタンお前ってやつは・・・!という感情が沸き起こります。
 信頼していた部下に裏切られ、妻に裏切られたというのに、二人の亡骸を哀れんで、隣に葬ってあげたマルク王の感情はいかばかりなものか。こんな寛大な王はそうそういるものではありません。マルク王と比較すると、どうしてもトリスタンが悪者に見えてしまう・・・。騎士道精神どっかに消えてます。白き手のイゾルデと結婚したのも、おいっ!ってなるし・・・。
 近代になって物語が改変されるようになると、マルク王が悪者になるバージョンもあり、物語がもっと純愛、悲劇の愛のような様相を帯びてきます。ワーグナーの歌劇「トリスタンとイゾルデ」では登場人物こそほぼ同じですが、全然違う内容になっています。禁断の愛に足を踏み入れるのは、気を付けた方がいいかもしれません。



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