消失した絵画13点。火事や地震、戦争や盗難により永遠に見られない幻の絵画 | メメント・モリ -西洋美術の謎と闇-

消失した絵画13点。火事や地震、戦争や盗難により永遠に見られない幻の絵画

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 現在、全国各地に美術館があり、沢山の絵画を鑑賞することができます。
 しかし、人間の長い歴史から生まれ出た作品から考えると、それらはほんの一部であり、火事や地震、戦争やテロ、盗難などで数多くの絵画が永遠に失われてきました。天災は避けようがないですし、宗教争いの人為的な破壊が今でも行われ続けています。また、美術品の盗難による被害額は、麻薬・武器輸出についで第三位だそうです。盗難された作品が見られるデータベースには約45000件もの登録がしてあるそうです。(2014年末の数字なので、もっと増えているかもしれません) 恐ろしい数字ですよね・・・。
 画家が丹精込めて、人生をかけて描いた作品が、思想に合わないからというだけで燃やされ、金になるからという理由で盗まれて売られるのです。本当にあってはならない事だと思います。池上英洋著『「失われた名画」の展覧会』と、サイモン・フープト著『「盗まれた世界の名画」美術館』の二冊の本を参考文献にして、永遠に失われた名画13点をお届けします。

 

地震により失われた作品

「ラファエロ・サンツィオ作  祭壇画を構成していた断片 1500-1」
イタリアのチッタ・ディ・カステッロのサンタ・ゴスティーノ教会に
飾られていた祭壇画ですが、1789年の地震によって大ダメージを
受けてしまい、バラバラになってしまいました。唯一残っている
断片がこちらの神とマリアさんになります。

 

火災により失われた作品

「ウジェーヌ・ドラクロワ作 ライオン狩り 1854-55年」
19世紀にボルドー美術館を襲った火災で、絵画の上半分が燃えて
しまい、修復不可能となってしまいました。躍動感あふれる馬や
人の様子は永遠に見られなくなってしまったのです。

「オディロン・ルドン作  ドラクロワに基づく模写 1860-70年」
しかし、幸いな事にドラクロワの作品をルドンが模写しており、
上部分はどのような姿だったという事を知ることができます。
現在、どちらの作品もボルドー美術館で鑑賞できます。

 

戦争、テロにより失われた作品

「ヘラルト・ファン・ホントホルスト作 羊飼いの礼拝 1620年」
1993年、フィレンツェのウフィツィ美術館に仕掛けられた爆弾テロに
より破壊されてしまった作品。今でもテロは世界各地で行われており、
本当にそんな事は止めて欲しいです・・・。

「ラファエロ・サンツィオ作  若い男の肖像」
1939年、ナチスドイツがチャルトリスキ美術館より略奪した作品。
ハンス・フランク総督が所有していたと思われましたが、終戦時に
見つかることがなく、行方不明となりました。イケメンが・・・。

「ピーテル・パウル・ルーベンス作  シレノスの行進」
ナチスドイツは略奪した絵画を都市に集め、高射砲塔の中や岩塩抗の
中に隠しました。しかし、1945年に首都がソ連に占領された時、
フリードリヒスハイン高射砲塔の中で大火災が発生しました。
そこで多くの絵画が犠牲となり、この絵画も灰となってしまいました。

「ピーテル・パウル・ルーベンス作  ラザロの蘇生」
こちらもフリードリヒスハイン高射砲塔で消息を絶ち、火災で
消失されたと考えられています。キリストが友人ラザロを復活させる
場面を燃やしてしまうなんて・・・(> <)
→ ラザロの蘇生についての絵画を見たい方はこちら

「カラヴァッジョ作  聖マタイと天使  1602年」
本来はローマのコンタレッリ礼拝堂に飾られる予定の作品でしたが、
天使がセクシーだった為に教会側は拒否。パトロンが買い取った後は
ベルリン美術館へ飾られ、その後テューリンゲン岩塩抗に保管され
たものの、それから行方不明となってしまいました。

「ファン・エイク兄弟作  ゲントの祭壇画の一部」
12枚のパネルからなる巨大な祭壇画ですが、1934年に左下二枚の
パネルが盗難にあってしまいます。(以下の作品)
右側は見つかりましたが、左側のみ行方不明となり、現在でも
レプリカで代用されています。

 

盗難より失われた作品

「レンブラント・ファン・レイン作 ガリラヤの海の嵐 1633年」
1990年にボストンのイザベラ・スチュアート・ガードナー美術館より
盗まれた作品。これ以外にも12点の作品と鷲のブロンズ像も
盗み去られ、現在でも作品は見つかっておりません。

「ヨハネス・フェルメール作  合奏  1660年代」
上記のレンブラントの作品と共に盗まれた絵画。フェルメールの
作品は知名度があってコンパクトなので盗難の対象にされやすい
のだそう。フェルメールさん可哀想・・・。

「カラヴァッジョ作  生誕 1609年」
殺人を犯して逃亡中のカラヴァッジョがパレルモに立ち寄り、わずか
一ヵ月くらいの期間で描いた作品。凄い技量ですね・・・。
ですが、1969年の夜中にマフィアによって持ち出され、
未だに行方不明となっております。

「グスタフ・クリムト作  女性の肖像 1916-17年頃」
1997年にイタリアのリッチ・オッディ美術館より盗まれた作品。
泥棒は閉館した美術館の屋根によじ登り、天窓から釣り糸を垂らして
絵画を釣り上げて盗んだそう。屋根に額縁が捨てられていたとか。
その技術は見上げたものですが、重罪です・・・。

「フランソワ・ブーシェ作  眠れる羊飼い  18世紀」
1996年にシャルトル美術館より盗難にあい、犯人は2001年に逮捕
されましたが、証拠隠滅を図ろうとした犯人の母親によって処分
されてしまいました。この作品以外にも処分してしまったそうで、
保身を図ろうとする身勝手さに憤りを覚えますね・・・。

 書籍に載っている作品だけでも相当な数があり、ご紹介した作品はほんの一部だけです。沢山載っている書籍でも「ほんの一部しか掲載していない」と明記されているのだから、失われた作品の多さが身に染みてきます。
 ちょっと前の事件で、外国で自撮りをしようとした人が作品にぶつかり、壊してしまう事件が幾つかありました。その中の一つの作品は年代物の聖ミカエル像であったそう。もしかしたら日本に伝わっていないだけで、もっと多くの作品が人の過失により失われているかもしれません。(美術館の展覧会を行う為の運搬ミスで、作品が壊れてしまったという話も聞いたことがあります・・・)
 海外の美術館の作品が日本の展覧会で観られることは素晴らしい事ですが、作品を守る為に、鑑賞者の私たちも気を付けなければなりませんね。絵画は画家が描いた魂であり、世界に唯一の存在。ありがたい気持ちで展覧会へ行きたいなぁ・・・と思います。
 以下の二冊が参考文献になりますので、興味を持たれた方はぜひ書籍を手に取ってみてくださいね^^

 

【 コメント 】

  1. 管理人:扉園 より:

     >> どこでも起こりうることなんですね。様へ
    こんばんは^^
    そうですよね。美術館って案外絵画との距離が近いように思います。(鑑賞者としては有り難いですが…)
    美術館や展覧会の種類によって厳しい場所と緩い場所があるような気がします。
    三菱一号館美術館だと、絵画を指さしただけで注意されたのですが、愛知県美術館だと近寄ってOK、指さしOKみたいなゆるーい感じでした。
    小さいお子様もいたことだし、絵画は大丈夫なのだろうかと少し心配にもなりました。
    花粉症は本当に大変だと思います(>_<) 私はまだ花粉症ではありませんが、そろそろ発症しそうで怯えています…。 美術館でくしゃみが出そうになると、向きも音も気を付けなければならないしで、神経使いますよね。

  2. どこでも起こりうることなんですね。 より:

    どこかで、美術館で興奮した観客が『ダナエ』の絵を傷つけたという話を聞いたことがあるような気がしますが、
    思えば美術館って、実物の絵の本当に近くまで寄って観られますし、すべての絵の前で学芸員さんが監視しているわけでもなく、そういうことってどこでも起こりうるのですね。
    お金があれば誰でも入れるから、知らずにペタペタ触ってしまう人とかいないんだろうかと、いつも思います(それはないか^^;)
    ちなみに私、この時季は花粉症がひどいので、鑑賞中にくしゃみが出そうになると絵から離れて、細心の注意を払って……(笑)

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