ピエタは聖母子像の中で、十字架から降ろされたキリストの遺体を抱くマリアの姿を表した作品のことを指します。哀れみ、慈悲という意味を持ち、ぐったりとした息子を母が抱きかかえており、悲しみや慈悲の表情を浮かべています。絵画、彫刻において人気のある主題であり、たくさんの作品が残っております。
ピエタを描いた絵画12点を見ていきましょう。二人の表情に注目です。
「ドイツの画家 1500年頃」
十字架降下とピエタが一緒になった作品。黒い衣服に身を包んだ
マリアがキリストの死を悲しんでいます。キリストの傍らにはドクロが。
「フランスの画家 1390年頃」
キリストを中心に、皆が悲しみの表情を浮かべています。
マリア様、空気椅子ですか?
「Jacques Stella 作 17世紀」
血だらけになってしまった息子をぎゅっと抱きしめ、悲しみに暮れる
マリア。傷口が痛々しいです。
「フランドルの画家 16世紀」
半目でカメラ目線の、なんとも言えない表情をしたマリア。
キリストの表情が安らかに見えます。
「After Annibale Carracci 作 17世紀」
マリアは悲しんでいるというより、慈悲の表情を浮かべており、
キリストも安らかに眠っているようです。殺された悲惨さより、
死後の復活を予告させるような作品です。
「ウィリアム・アドルフ・ブグロー作 19世紀後半」
深い悲しみに沈んだ目を、こちらに向けているマリア。
世間を呪っているように見えてしまうのは、気のせいでしょうか・・・。
「エル・グレコ作 16世紀後半-17世紀前半」
無表情なマリア様。
悲しみが深くなりすぎると、表情が消えてしまうといいますが・・・。
「アンソニー・ヴァン・ダイク作 1629年」
マリアは天を仰いで「なぜ殺したの?」と、神に問うているかのようです。
ダイクはルーベンスの弟子で、最も優れた弟子と言わせしめたほど。
「ピーテル・パウル・ルーベンス作 1612年」
師匠の作品。彼の方が現実よりの描写のような気がします。
血の気の失せたキリストに、マリアまでが死人のような表情になっています。
「Theodor Baierl 派の作 20世紀」
ガリガリに瘦せ、死後硬直を起こしかけているキリストを
ぎゅっと抱きしめるマリア。キリストの半目が恐いです。
「コズメ・トゥーラ作 1460年頃」
キリストがミイラみたいで、こ、恐い!
マリア様は我が子の悲惨さを直視できず、目を背けています。
「Anna Dorothea Therbusch 作 18世紀」
マリアがドーム状になって、キリストが生首になっちゃった!
ピエタが図式化し、こういった描写も生まれました。
ピエタは慈悲、哀れみだけではなく、敬虔の聖母、嘆きの聖母とも解されています。単に親子関係としてのマリアとキリストから見たら「嘆きの聖母」が当てはまるように思いますが、ピエタは個人の魂の救済を願い、前で祈ることを目的として作られておりますので、祈りを捧げる者から見たら「慈悲、敬虔」の方が正しいように思います。
画家によってマリアの表情が変わるのは、親子間を重視しているのか、第三者の鑑賞者を重視しているのかといった違いがあるように感じ、興味深いです。
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