ラグナロクが起こる以前、神々の間で大事件がありました。それは光の神バルドルの死。
バルドルは主神オーディンと妃フリッグの息子で、皆から愛されていました。しかし、彼は悪夢にうなされるようになります。母は深く心配し、世界のあらゆるものに対し「息子を決して傷付けない」という誓約をさせました。何に対しても無敵になったバルドル。神々はそれを確認しようと、石や武器など何でも投げ付けました。傷一つ付かない彼を見て、神々は大喜びをしました。
ですが、狡猾の神ロキはそれが面白くありませんでした。彼はヤドリギだけ契約していないことをフリッグから聞き出し、ヤドリギを引っこ抜いて、バルドルの弟(双子の弟という説も)であるホズの元へ歩み寄ります。ホズは盲目の為、隅に立っていました。ロキは満面の笑みで彼の肩に手を置き・・・。
バルドルの死の絵画11点を見ながら、北欧神話の物語をお楽しみください。
「E・ボイド・スミス作 1902年」
どんな攻撃をされても傷一つ付かないバルドル。
神々は笑い合ってバルドルに矢を射かけています。
しかし、老婆のふりをしてホズに近付く狡猾な神の姿が・・・。
「アーサー・ラッカム作 1901年」
「お前だけ参加できないのは寂しいだろ?俺が場所を教えてやるよ。
ほら、これが武器だ。投げてみろ」
ロキは言葉巧みにホズにヤドリギを握らせ、バルドルに標準を合わせます。
「Humphries(?)作 20世紀」
呼吸を、止めて一秒。狙いを定めて投げるがいい、ホズよ!
「エミール・ドプラー作 19世紀後半-20世紀前半」
瞬間、ヤドリギは放たれた・・・。
「エミール・ドプラー作 19世紀後半-20世紀前半」
ホズが放ったヤドリギは、あやまたずバルドルの心臓に刺さりました。
彼はばったりと倒れ、命を落としてしまいます。
神々は静まり返り、深く嘆き悲しみました。
「クリストファー・エカスベア作 1817年」
ホズは事態を察し逃げ出すものの、オーディンの息子ヴァーリによって
殺されます。騙されただけでとんだとばっちりですが、
殺害者は復讐されるのが当然という風習なのです。
「ジョージ・ライト作 1902年」
犯人のロキはこっそりと姿を消してしまいました。
ヤドリギで作られた武器は矢であったり槍だったりと
文献が一定しておらず、様々に描かれます。
「W. G. コリングウッド作 1908年」
冥界へ行ってバルドルを蘇らせるよう頼んでも、受け入れられませんでした。
彼の遺体はショック死した妻と豪華な副葬品と共に船に乗せられ、
火を放たれて海上へ流されました。
神々や巨人の誰もが死を悲しんだとされています。
「Gordon Browne作 1913年」
へへん、俺には当たらないよ~といった余裕の表情のバルドル。
こんな態度をされたら、腹立ってぶっ刺したくなるのも分かるような。
「18世紀のアイスランドの写本」
手が90度に折れたバルドルの胸をぐっさりと貫通。そそのかし中の
ロキがホズにキッスして見えるのは私だけではないはず・・・。
「オスロ市庁舎にあるレリーフの一部」
不謹慎かもですが、この作品を見て思わず笑ってしまいました。
バルドルの顔が音楽家ショパンに見えるし、後ろのロキが赤茶の
じいさんだし、服ないし・・・。シュールすぎるレリーフです。
バルドルの死後、オーディンの息子ヘルモーズがスレイプニルに乗って冥界へ行き、女王ヘルにバルドルを蘇らせて欲しいと交渉を持ちかけます。彼女は「世界中のあらゆるものがバルドルの死の為に泣くというのなら、返してやってもいい」と言います。神々は世界中を周り、生き物から無機物まであらゆる物体にバルドルの為に泣くことを約束させます。しかし、ただ一人老婆に変装したロキだけが涙を流さず、バルドルの復活は叶いませんでした。
光の神がいなくなり、神々の国アースガルズに暗雲が垂れ込めていきます。やがて世界は永遠の冬に覆われ、神々の終焉ラグナロクが起こるのです。
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