ヴィーナスの誕生の絵画13点。原初の神と泡より産まれ出た、愛の女神の大行進 | メメント・モリ -西洋美術の謎と闇-

ヴィーナスの誕生の絵画13点。原初の神と泡より産まれ出た、愛の女神の大行進

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 ヴィーナスの誕生は、ギリシャ神話の女神ヴィーナス(アフロディテ)が誕生する場面の事を指します。
 ヘシオドスの「神統記」によると、地母神ガイアは末子クロノスに鎌を渡し、夫である原初の王ウラノスの急所を切り落とすよう命じました。クロノスは父親の部分をざっくりと切り、この時流れ出た血から復讐の女神や巨人、精霊らが生じます。そして海に漂流していたその物の周囲に泡が集まり、泡から生まれたのがヴィーナスとされています。愛と美を司るヴィーナスとはいえ、物凄い産まれ方をしていますね・・・^^;

 漂流していたヴィーナスに西風ゼピュロスは魅せられ、彼女をキュテラ島やキュプロス島に運びました。島に上陸したヴィーナスは季節の女神ホーラ達に見つけられて衣装や飾りを付けられ、オリュンポス山へと行ったとされています。女性美を象徴する女神の誕生という主題は、ボッティチェリの代表作を筆答に何名かの画家によって描かれています。
 では、多くの海の神々に祝福されながら、どんぶらこっこと海を流れるヴィーナスの誕生の絵画13点をご覧ください。

 

「ポンペイの壁画  2世紀」
1800年以上も過去のポンペイの壁画に描かれています。
シャコガイのような巨大な貝に横たわるヴィーナス様。
右側の羽が生えた少年はおそらくキューピッド(クピド)。
鎌らしきものを持つ左の人物はクロノスなのかしら・・・?

「サンドロ・ボッティチェリ作  1485年頃」
美術の教科書に必ずや載っているであろうボッティチェリの代表作。
シャコガイ(?)の上に立ち、恥じらいを持って手と髪で隠しています。
ゼピュロスが運び、ちょうど島へと到着したようですね。ホーラさんが
衣服を着せてあげようとしています。

「フィレンツェの工房作  16世紀後半」
コントラポストで貝に立ち、手で隠すという行為はボッティチェリに
似ているものの、あまり隠せられていませんね・・・。
怪魚の顔が可愛いですね^^

「コルネリス・ド・フォス作  17世紀」
島に上陸した女神様。左の老人は海を司るネーレウス、女性は
ニュムペーなのかな?奥の男性はほら貝で歓迎しています。
この画家さんはルーベンスのお弟子さんだったようで、かなり
ルーベンスに近い作風をしていますよね。

「二コラ・プッサン作  1635-6年」
プッサンのヴィーナス様は数多の神々に大歓迎されていますね。
大パレードを催しているかのような状態です。左側の青いマントの
おじさんは海馬と三又の槍なのでポセイドンでしょうか。

「ジャン=バティスト・マリー・ピエール作  1714-89年」
貝に乗ってのんびりと航海中のヴィーナス様。
こちらは誕生したばかりで漂流しているというより、どこかの
女王様が他国見学へと移動している最中のようです。直射日光が
当たらないよう、キューピッド君は布を懸命に掲げてます。

「ジャン=バティスト・マリー・ピエールの追随者作  18世紀」
こちらは貝と西風ではスピードが足りなかったのか、ヴィーナス様
自らが謎の魚二匹を操縦中のようです。

「ノエル・ニコラス・コワペルの追随者作  18世紀」
貝だと固くて寝心地が悪かったのか、ベッドにリメイクしてしまった
ようです。操縦はキューピッドに任せ、寝ている間に島に到着です。
(島は噴火している最中のようですね)

「フランソワ・ブーシェ作  1703-70年」
ロココらしい、華やかさが前面に現れた誕生。
それにしてもヴィーナス様の腰かけ、岩肌が波に隠れているのか、
はたまた波が椅子として機能しているのか・・・。

「ジャン・オノレ・フラゴナール作  1753-55年」
ブーシェに並ぶ、ロココの巨匠フラゴナールもこのテーマを描いて
います。ヴィーナス様はお部屋でくつろぐかのように波間を
漂っております。海の波と泡がもっふもふのお布団みたいになって
いるのでしょうかね。

「Eduard Steinbrück 作  1846年」
三位一体を彷彿とさせるような(四かしら?)、一風変わった
ヴィーナスの誕生。美と愛の女神なのでセクシーな感じですが、
人物や天上を見上げる構成など、宗教画のようにも感じます。

「ウィリアム・アドルフ・ブグロー作  1879年」
セクシーなお姿を惜しげもなく晒したヴィーナス様。
(載せてもいいか迷ったけど載せちゃいました^^;)
二頭のケンタウロスやキューピッド、ニュムペーらが祝福中です。

「ギュスターヴ・モロー作  1866年」
モローのヴィーナス様に派手さはなく、静かに上陸したようです。
ただ島の住人のような人々に崇められております。
「豊穣と美のヴィーナス信仰」そのものを描いたという感じでしょうか。

 ギリシャ神話は様々な逸話の複合体であり、時系列を間に受けてはいけないと思うのですが、ヴィーナスが誕生したのはクロノスの幼少期時代ということになります。クロノスはゼウスを含む6名もの神々の父親であり、という事は、ヴィーナスはゼウスやポセイドン、デメテル、ヘラ、ハデスなどの神々よりも年上という事になってしまいます。(もしかしたらウラノスの部分から泡が生じ、ヴィーナスが生まれるまで凄い年月がかかったかもしれませんが・・・。それでも画家達がおじさんのポセイドンやケンタウロスを出現させているのに、違和感を覚えてしまうような気がします)

 これらの絵画を見る限り、画家達はヴィーナスに幼少期は存在せず、いきなり大人の美女の姿で出現すると考えられていたようです。ゼウスやアポロン、アルテミス、ヘルメス、アテネらは様々な誕生の仕方こそあれ、男女の間から生まれて幼少期が存在します。ヴィーナスは他の神と比べてもかなり特殊な産まれ方をしていますよね。(これまた西風が見つける間の漂流中が、かなり長かったという可能性もあり得なくはないですが・・・)
 他の神々より年上であり、更に特殊な産まれ方と成長の仕方をした。これらはヴィーナスの起源がギリシャ神話よりも更に古い女神様であるという名残なのかもしれませんね。

→ パリスの審判についての絵画を見たい方はこちら
→ ヴィーナスの愛人アドニスについての絵画を見たい方はこちら
→ 化粧するヴィーナスについての絵画を見たい方はこちら

 

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【 コメント 】

  1. 管理人:扉園 より:

     >> オバタケイコ様へ
    こんばんは^^
    ありがとうございます!そんなに家は広くありませんが意地でも飾っちゃいますw
    もし私が大金持ちであったら、全国のボスグッズ&怪物グッズをお取り寄せして、自宅に怪物ショップ兼カフェを作りたかったなぁなんて妄想しています^^;
    怪物好きの憩いの場を作りたかったです。
    その為に怪物クッキーを売りますかw

  2. オバタケイコ より:

    <快楽の園のほぼ原寸パネルを家に飾りたいです…>ワーッ!それは大胆な願いですね。美術好きでない人が見たら間違いなく引くでしょうね(;^ω^)いつか夢叶えて下さい!
    怪物クッキー売って稼ぐとか。。。

  3. 管理人:扉園 より:

     >> オバタケイコ様へ
    こんばんは^^
    豊穣と美を司るのだから、華やかで麗しい誕生の仕方の方が女神的にいいのではないかと思ってしまうのですが、なんというか直接的で生々しいですよね^^;
    そんなところが神話らしいと言えばそうかもしれません(笑)
    最初のURLで拝見できましたよ!わざわざ再投すみません。
    ゆる神秘風の可愛らしい作品ですね^^
    ボッティチェリの美しい構成とオバタ様の作風の暖かさがマッチして、癒されます。
    畳半畳あるプリマヴェーラのフローラは圧巻ですね!
    写真展の方に頼めば焼いてもらえるとは知りませんでした。
    処分してしまわれたのは、なんだか勿体ないです(> <) 怖いと言われてしまっても、いつか快楽の園のほぼ原寸パネルを家に飾りたいです…^^;←ぇ

  4. オバタケイコ より:

    失礼!先程貼ったURLが無効だったようで、これなら行けるかな?見れなかったらごめんなさい!https://oakpinkfloyd.eshizuoka.jp/

  5. オバタケイコ より:

    ヴィーナスが海に捨てられた男根の泡から生まれたのを知った時は衝撃でした(*_*)ボッティチェリが好きで、以前個展で『ヴィーナスの誕生』を少し漫画チックに描いた作品がすぐ売れました。⇒https://oakpinkfloyd.eshizuoka.jp/e2008010.html
    大昔、20代の頃地元の商業施設でボッティチェリ作品の拡大生写真展をやっていて、『プリマヴェーラ』の花を撒くフローラ?の顔の拡大写真に一目惚れして、写真家に頼んで10万かけて焼いて貰いました。畳半畳はある巨大フローラの顔写真。うちに来る友人がみんな怖いというので、10年ほど飾って処分してしまいました。。。南無阿弥陀仏。

  6. 管理人:扉園 より:

     >> 毛皮を着た……様へ
    こんばんは^^
    ダブルヴィーナスの奇跡のコラボを描く第一号にぜひなってください!w
    流石ですね!お詳しい。
    漂っているのは確かだけど、時系列的を判定するのは難しいのですね。
    とあるテレビで「ヴィーナスの誕生」は「ヴィーナスの移動」を描いた作品だから、明確には題名が間違っているという事をやっており、なるほどと思いました。
    漂っている間に子供→大人になったという可能性の方があるのかもしれません。
    イリアスだとディオネの娘とされてるのですか…知らなかった。
    なんと!あれはホタテガイだったのですね^^;
    しかもヴィーナス的な意味(?)のメタファーがあったとは。
    十二使徒のヤコブはホタテ貝をアトリビュートとしていますが、まさか…そんな……(違
    アテナ様の誕生も衝撃的ですよね。
    一応ゼウスの中でぐんぐんと成長したから子供時代はあったのだと解釈(笑)
    アテナの誕生、ちょっと記事にするには少ないかも^^;
    でもヴィーナス様に対抗する為、もしかしたらアテナ特集で紹介するかもしれません!(あくまでかもしれませんw)

  7. 毛皮を着た…… より:

    さすがに、「ヴィーナスフライトラップアネモネと戯れるヴィーナス」を描いた画家はいなかったか。(ぇ
    ギリシャ神話のアプロディテが生まれるきっかけになった海へ放られたメドス、これはご明察の通り、『神統記』によると、しばらく海を漂っていたようです。どのくらいの間かはわかりませんが……
    同書によると、エロス(愛)とヒメロス(欲望)がお供をした、ということになっていますが、彼らはすでに生まれているので、結局のところ、時系列はわかりませんね……
    ちなみに、『神統記』ではアプロディテは海の泡から生まれたということになっていますが、より前の時代に歌われた『イリアス』ではディオネの娘ということになっています。
    もひとつちなみに、描かれている貝はシャコガイではなく、ホタテガイの一種だそうな。メタファーですね( ̄▽ ̄)
    ……アテナがゼウスの頭から生まれてくる説、「ミネルヴァの誕生」ってのも画題としてあるけれど、検索して大量に出てくるという点ではヴィーナスの勝ちですな( ̄▽ ̄);

  8. 管理人:扉園 より:

     >> 美術を愛する人様へ
    こんばんは^^
    ヴィーナスの誕生のテーマはボッティチェリの印象が強く、貝に立っているとばかり思っていましたが、結構楽しげに皆で移動する作品があって面白いですよね。
    どんぶらっこっこ繋がりの桃太郎(笑)
    おじいさんおばあさんが巨大なシャコガイを拾って開けてみたらヴィーナスがっ!
    という物語でも違和感がないような…w←ぇ
    確かにキュベレーとの繋がりありそうですね。
    どちらも豊穣の女神&チョンパですし…。
    私もちらっと調べてみたのですが、キュベレーは古代の女神でガイアやレアーやデメテルに影響を与えたとされ、ヴィーナス(アフロディテ)はメソポタミア神話のイシュタル、シュメール神話のイナンナから派生した女神とされているそうです。
    ただ、イナンナ女神はちゃんと母親の胎内から誕生しており、大陸を渡るヴィーナスの特殊な誕生との接点は見受けられません。
    ヴィーナスの豊穣の女神としての性質はそこから受け継がれたのだと思いますが、イシュタル&イナンナはチョンパの話も確かなかったはず(?)なので、そこはキュベレーの性質が混じり込んだのではないかと私は思いました。

  9. 美術を愛する人 より:

    こんばんは。
    どんぶらこっこと漂う女神様……なんだかのんびりしてかわいいですね。
    ボッティチェリの絵が桃太郎誕生に見えてきたような。
    男性のシンボルチョンパといえばキュベレー思い出しますが、繋がりはあるのでしょうか。
    調べてもそれらしい記述は見つからなかったのですが、キュベレー同様に起源が他の地域由来なら、海を渡ってきたのも納得行くかもしれません。

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