頭足人グリロスの彩飾写本13点。頭と手足と獣が合体したシュールな怪物【第二弾】 | メメント・モリ -西洋美術の謎と闇-

頭足人グリロスの彩飾写本13点。頭と手足と獣が合体したシュールな怪物【第二弾】

Gorleston Psalter 1310 -

 頭と足が合体したような怪物のことを指す、グリロス(頭足人)。
 頭と足でなくともグリロスと呼ばれる者もおり、厳密に言えば頭部を色々なパーツと組み合わせて作る怪物とされています。グリロスはギリシア・ローマ時代の玉石彫刻から発生したと言われており、中世時代になってヨーロッパ全土へ広がっていきました。宝石の彫刻から始まり、壁や柱、彩飾写本の余白を埋める怪物として描かれ、北方ルネサンスの画家ヒエロニムス・ボスがグリロスを芸術まで高めていきます。絵画の世界へ進出したグリロスは、様々な形態となって美術界に時々姿を現すのです。
 第二弾である今回は、中世の彩飾写本に登場するグリロスをご紹介いたします。なお、画像の詳細は判然としなかったので、未記入とさせていただきました。ご了承ください。

おじさんの顎から逆さに足が生え、頭から腕が生えてお玉を握る。
引き締まった表情は歌舞伎(?)のようで、なんとも言われぬ
雰囲気を醸し出すグリロスです。
14th- British-Library

枢機卿のような帽子を被り、にょろっとした魚のような身体の
背中に翼。人間のような顔を持ち、獣や怪物の身体をしていたら
グリロスと定義して・・・いいのかな。(ぇ
London, British Library 1

頭にほっかむりを被り、水玉のズボンをはき、背中にねずみ(?)を
背負っています。子守をするおばちゃんのようなグリロスですね。
Pabenham-Clifford Hours, England ca. 1315-20

にやりとしや表情で、尻尾は立派なVサイン。
足取りも軽そうです。なにかいい事があったのでしょうか。
The Maastricht Hours’, Liège 14th century

頭は帽子を被った老人、身体は首長竜のようにびよーんとして
おり、足と尻尾は獣。この怪物を冗談として描いたのか、「最果ての
地にはこのような怪物がいるのかも」と思って描いたのか・・・。
manuscript2

色彩豊かで丁寧に描かれたグリロス。
老人の顔に腹の顔、そして尻尾の顔。行動すると喧嘩になりそうな
状態ですw これを思い付いた作者さんの想像力に感服します。
manuscript

弓を握り、お尻では別の顔がラッパを吹く。
攻撃と鼓舞が両方できるなんて一石二鳥!便利だ!(ぇ
The Maastricht Hours’, Liège 14th

グリロス二人が何やら喧嘩中のようです。「あんたバグパイプの
演奏がヘタすぎ!」「なんだってーお前の指揮がヘタじゃないか!」
と言い争いになっているのかな・・・?
'The Maastricht Hours', Liège 14th

水玉の巨大カタツムリに攻撃しようとしている、馬型の騎士グリロス。
盾にだって生命が宿っています。この盾、もしかしたらメデューサが
付いたアイギスよりも強いかも!?
hero-snail-knight

四つん這いのグリロスのお尻に付く顔。大きなお口からは
ひょっこり人間の半身が飛び出ています。
これは身体の一部なのか、はたまた食べちゃった犠牲者なのか・・・。
Gorleston Psalter 1310

パリーン!!
おじさんグリロスが壺を持って不毛な戦いをしていますが、
なんだかゆるい戦いに見えます・・・^^;
between 1320 -40 London, British Library

こっ・・・これはキモいっ!(汗)
真っ赤な唇を持った禿げ頭の老人。頭から直接生える足。
日本の妖怪に通ずるお姿に思えます。
お寺に出てきても違和感なさそうだ・・・・。
London, British Library

男女のグリロスがにらめっこ。
グリロスだって夫婦喧嘩をする時があるのです。
Marginal drollery 1260-70

 禿頭の老人のグリロスが日本の妖怪に似ていると描きましたが、他にも日本で登場してもおかしくないようなグリロスがちらほらといます。偶然そんな雰囲気になってしまった可能性もあるものの、ほとんど接点がなかった時代に双方が似通うのは面白いですよね。西洋の人達と、日本人が考える未知の怪物は案外近しいものがあるのかもしれません。むしろ、実際にそんな怪物がいたのでは!?←ぇ

→ 【第一弾】グリロスについての絵画を見たい方はこちら

コメント

  1. 管理人:扉園 より:

    >> オバタケイコ様へ
    こんばんは^^
    ご返信が遅くなり申し訳ないです(汗)お久しぶりです!
    私は非常事態宣言中ドタバタしていましたが、ようやく一息つけるくらいになりました。
    オバタ様も大変な時期だとは思いますが、決して無理はせずご自愛くださいね。
    共にコロナを乗り切りましょう!
    グリロスを見ると、なんだかほっとしますよね。私の癒しですw
    本を読んだりネットを見ながら「美術館とか外国に行きたいなぁ…」としょっちゅう呟いてます^^;
    本当に申し訳ないですが、記事投稿はもう少し先になりそうです(> <) その時はよろしくお願いします…!

  2. オバタケイコ より:

    ご無沙汰してます。その後、お元気にしていますか?コロナで大変な世の中になってしまいましたね。。。
    改めて見返したら、とっても面白くて。(^^♪
    お腹に顔のあるグロリス、本当に丁寧で綺麗ですね!真っ赤な唇を持った禿げ頭の老人は水木しげるの妖怪みたいですね。
    またいつかお話し出来るの楽しみにしています!

  3. オバタケイコ より:

    ご無沙汰してます。その後、お元気にしていますか?コロナで大変な世の中になってしまいましたね。。。
    改めて見返したら、とっても面白くて。(^^♪
    お腹に顔のあるグロリス、本当に丁寧で綺麗ですね!真っ赤な唇を持った禿げ頭の老人は水木しげるの妖怪みたいですね。
    またいつかお話し出来るの楽しみにしています!

  4. 管理人:扉園 より:

     >> 美術を愛する人様へ
    こんばんは^^
    私が足おじさんを最初に目にして思い付いた妖怪が、「子泣き爺&ぬらりひょん」でした。
    確かに足の様子が尻目にも通じますね。
    後ろを向いたらお尻に巨大な目が!?キ、キモい!^^;
    人間は神が創造した存在で、動物よりも優れているという思想を当時の人は持っていました。
    人と動物を融合させて怪物を作り上げ、人間の優位性をぶち壊しているという点で、さかさまの世界と言えるのかもしれません。
    人間と動物のハイブリッドは双方の境界を曖昧にし、神に反する卑しい存在なのだから、美しく均整がとれるのはあり得ず、滑稽でアンバランスであるべきだという考えが根差しているように思います。
    (と書きましたが、作者さんがどれだけ凄いグリロスが描けるか半ば挑戦しているような作品も有り得そうですね^^;絶妙なバランスで変なのを描くぜ!みたいな…w)

  5. 美術を愛する人 より:

    こんばんは。
    最後のにらめっこグリロスが可愛いです。
    最後から二番目の頭から足おじさん、顔だけ見ると「ぬらりひょん」的な印象ですが、最初に見たときに思いついたのが何故か「尻目」でした。あれも相当ヘンテコな妖怪だと思います。
    それにしても、「なぜそこにそのパーツをつけた!」と言いたいアンバランスなものが多いですね。
    あえて均整のとれたデザインの美しい怪物にしなかったのも、さかさまの世界の一部なのでしょうか?

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