新約聖書の「ヨハネの黙示録」によると、大天使ミカエルと配下の天使たちは、サタン(ルシファー)とその部下たちと激しく戦い、彼等を地の底へと突き落としたとされています。サタンはかつて美しい天使であったものの、堕天使となり邪悪なる悪魔と変貌したのでした。サタンは竜や怪物、人型の悪魔として表現されています。
善なる勝利と悪の敗北。その勧善懲悪の栄光なるエピソードは多くの画家に描かれ、教会を彩っています。では、涼し気な表情のミカエル様が、色々な個性的な姿をしている悪魔(サタン)をひたすら踏みつける絵画12点をご覧ください!
「マルティン・デ・ソリア作 1459-60年」
黄金の鎧に身を包み、半目で見下すミカエル様。
このサタンの切なそうな表情よ…。絶望の様子です。
本体もお腹も哀れなお顔をしています。
「フアン・デ・ラ・アバディア作 1486年頃」
頭を掴み腹を膝で抑えて、がんじがらめにするミカエル様。
赤い顔の悪魔は「もう駄目ぽ…」という感じの、諦め顔。
「Maestro De Los Florida (Juan De Bonilla?) 1442-78年」
白い怪物のようなサタンを突き刺し、既に殺めてしまって
いるミカエル様。悪魔を見ようともしない、涼し気なお顔です。
「ミゲル・ヒメーネス作 1475-85年」
くるくるヘアーに孔雀のような翼の、
個性的なミカエル様。目が怖いですw
悪魔も巻貝と鶏と赤鬼が混ざった
かのような、超個性的なお姿です。
「バルトロメ・ベルメホ作 1468年」
鮮やかな赤紫のマントが美しい、半目のミカエル様。
あれ、烏帽子!?めっちゃ平安時代の日本人に見える!
スペインの画家さんなので、イスラム文化の影響で
東洋風に見えるのかしら。
「ゴンサロ・ペレス作 15世紀」
ミカエルさんの纏う布が、なんだか和柄に見えてきてしまう…。
サタンも東洋寄りの雰囲気が出ていますね。
こちらの画家さんもスペインバレンシア出身なので、
イスラムの影響を受けているのかしら。不思議な世界観です。
「フアン・デ・フランデス作 1460-1519年」
銀色の甲冑に身を包む、少年のようなミカエル様。
被害者は水かきのある獣のような悪魔。本当に色々な姿で
表されていますね。当時に考えられていた悪魔の姿が、
多様であったことが窺われます。
「イタリアの工房の画家作 17世紀後半頃」
ミカエルとサタンの作品を見ていると、サタンとしての悪魔を
描いていたのか、象徴としての悪魔を描いていたのか微妙な
ものがありますね。こちらのザ・小物!みたいな悪魔とか^^;
「ひぎゃああ」っぽい顔を見つめていると、じわじわ来ます…。
「ジュリオ・チェーザレ・プロカッチーニの工房作 17世紀前半頃」
全力の雄叫びを上げる悪魔と、涼し気に天を見上げるミカエル様。
「天へ帰ったら、一回お風呂入ろうかな」なんて考えている
のかしら…。(ぇ
「南ドイツの出身の画家作 1600年頃」
割と軽装なミカエル様。両性具有の悪魔を、地獄へと突き
落とそうとしています。山羊のような角、両性など、悪魔
バフォメットを彷彿とさせますね。バフォメットはテンプル騎士団が
崇拝していたとされた悪魔です。(濡れ衣だった可能性大です…)
「クリストフ・シュヴァルツ作 16世紀頃」
細長い槍をぶす~!っとお腹に刺す、女性のような姿のミカエル様。
周囲にお供も連れ、余裕の微笑みです。背後の布が羽衣に見えて
仕方がありません…。北欧やフランスに羽衣伝説によく似た民話が
あるので、もしかしてその影響…!?(ぇ
「ベンジャミン・ウエスト作 1776年」
炎の槍?の武器と鎖を手に持ち、優雅に踏みつけるミカエル様。
翼の生えたおじさん風悪魔は、やめてくれ~!と大絶叫。
時代が変わり姿形や画風は違えども、踏みつけは共通です。
時代が経るにつれ、訳が分からない化け物から人型に変化しているのが分かりますね。あと、地面での踏み踏みから、空中での踏み踏みに変化し、躍動感が生まれています。中世ルネサンスは怪物を地面で踏みつける、バロック以降は人型を空中で踏み堕とす。
全てがそれに当てはまるわけではないと思いますが、中世ルネサンスでは物語より「善なる天使の勝利、悪なる悪魔の敗北」という宗教的なメッセージを強調させるためにこのような形式となり、バロック以降は宗教よりも「物語」としての表現が生まれ、劇的に表現されるようになったためと考えられます。
また、ミルトンの「失楽園」が出た事も起因していそうです。失楽園が出版されたのは1667年。この頃、悪魔側のサタンに脚光が当てられ、ただの悪のやられ役ではなく、自由意志を持った気高きやられ役として登場しています。ルネサンス以降、時代は自由の表現を求め始めます。その思想がサタンを化け物ではなく、人型へと変えていったのではないでしょうか。
→ サタンを踏みつけるミカエルの絵画第一弾を見たい方はこちら
→ ミルトンの「失楽園」についての絵画を見たい方はこちら
→ 叛逆天使の墜落についての絵画を見たい方はこちら
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