サタンを踏むミカエルの絵画12点。微笑む大天使は悪魔を足蹴にする【第二弾】 | メメント・モリ -西洋美術の謎と闇-

サタンを踏むミカエルの絵画12点。微笑む大天使は悪魔を足蹴にする【第二弾】

スポンサーリンク
Juan de la Abadía 1486

 新約聖書の「ヨハネの黙示録」によると、大天使ミカエルと配下の天使たちは、サタン(ルシファー)とその部下たちと激しく戦い、彼等を地の底へと突き落としたとされています。サタンはかつて美しい天使であったものの、堕天使となり邪悪なる悪魔と変貌したのでした。サタンは竜や怪物、人型の悪魔として表現されています。
 善なる勝利と悪の敗北。その勧善懲悪の栄光なるエピソードは多くの画家に描かれ、教会を彩っています。では、涼し気な表情のミカエル様が、色々な個性的な姿をしている悪魔(サタン)をひたすら踏みつける絵画12点をご覧ください!



「マルティン・デ・ソリア作 1459-60年」
黄金の鎧に身を包み、半目で見下すミカエル様。
このサタンの切なそうな表情よ…。絶望の様子です。
本体もお腹も哀れなお顔をしています。
Zaragoza Museo - San Miguel arcángel

「フアン・デ・ラ・アバディア作  1486年頃」
頭を掴み腹を膝で抑えて、がんじがらめにするミカエル様。
赤い顔の悪魔は「もう駄目ぽ…」という感じの、諦め顔。
Juan de la Abadía 1486-

「Maestro De Los Florida (Juan De Bonilla?)  1442-78年」
白い怪物のようなサタンを突き刺し、既に殺めてしまって
いるミカエル様。悪魔を見ようともしない、涼し気なお顔です。
MAESTRO DE LOS FLORIDA  JUAN DE BONILLA DOC 1442–78

「ミゲル・ヒメーネス作 1475-85年」
くるくるヘアーに孔雀のような翼の、
個性的なミカエル様。目が怖いですw
悪魔も巻貝と鶏と赤鬼が混ざった
かのような、超個性的なお姿です。
Miguel Ximénez (1475-1485)

「バルトロメ・ベルメホ作  1468年」
鮮やかな赤紫のマントが美しい、半目のミカエル様。
あれ、烏帽子!?めっちゃ平安時代の日本人に見える!
スペインの画家さんなので、イスラム文化の影響で
東洋風に見えるのかしら。
Bartolomé Bermejo St Michael Triumphs  Devil 1468

「ゴンサロ・ペレス作 15世紀」
ミカエルさんの纏う布が、なんだか和柄に見えてきてしまう…。
サタンも東洋寄りの雰囲気が出ていますね。
こちらの画家さんもスペインバレンシア出身なので、
イスラムの影響を受けているのかしら。不思議な世界観です。
Gonzalo Perez 15th

「フアン・デ・フランデス作 1460-1519年」
銀色の甲冑に身を包む、少年のようなミカエル様。
被害者は水かきのある獣のような悪魔。本当に色々な姿で
表されていますね。当時に考えられていた悪魔の姿が、
多様であったことが窺われます。
Angel, Salamanca, Spain

「イタリアの工房の画家作 17世紀後半頃」
ミカエルとサタンの作品を見ていると、サタンとしての悪魔を
描いていたのか、象徴としての悪魔を描いていたのか微妙な
ものがありますね。こちらのザ・小物!みたいな悪魔とか^^;
「ひぎゃああ」っぽい顔を見つめていると、じわじわ来ます…。
Saint Michael Archangel, Italian school end of 17th

「ジュリオ・チェーザレ・プロカッチーニの工房作 17世紀前半頃」
全力の雄叫びを上げる悪魔と、涼し気に天を見上げるミカエル様。
「天へ帰ったら、一回お風呂入ろうかな」なんて考えている
のかしら…。(ぇ
Studio of Giulio Cesare Procaccini

「南ドイツの出身の画家作  1600年頃」
割と軽装なミカエル様。両性具有の悪魔を、地獄へと突き
落とそうとしています。山羊のような角、両性など、悪魔
バフォメットを彷彿とさせますね。バフォメットはテンプル騎士団が
崇拝していたとされた悪魔です。(濡れ衣だった可能性大です…)
South German Painter 1600

「クリストフ・シュヴァルツ作 16世紀頃」
細長い槍をぶす~!っとお腹に刺す、女性のような姿のミカエル様。
周囲にお供も連れ、余裕の微笑みです。背後の布が羽衣に見えて
仕方がありません…。北欧やフランスに羽衣伝説によく似た民話が
あるので、もしかしてその影響…!?(ぇ
Christoph Schwarz

「ベンジャミン・ウエスト作  1776年」
炎の槍?の武器と鎖を手に持ち、優雅に踏みつけるミカエル様。
翼の生えたおじさん風悪魔は、やめてくれ~!と大絶叫。
時代が変わり姿形や画風は違えども、踏みつけは共通です。
Benjamin West 1776

  時代が経るにつれ、訳が分からない化け物から人型に変化しているのが分かりますね。あと、地面での踏み踏みから、空中での踏み踏みに変化し、躍動感が生まれています。中世ルネサンスは怪物を地面で踏みつける、バロック以降は人型を空中で踏み堕とす。
 全てがそれに当てはまるわけではないと思いますが、中世ルネサンスでは物語より「善なる天使の勝利、悪なる悪魔の敗北」という宗教的なメッセージを強調させるためにこのような形式となり、バロック以降は宗教よりも「物語」としての表現が生まれ、劇的に表現されるようになったためと考えられます。

 また、ミルトンの「失楽園」が出た事も起因していそうです。失楽園が出版されたのは1667年。この頃、悪魔側のサタンに脚光が当てられ、ただの悪のやられ役ではなく、自由意志を持った気高きやられ役として登場しています。ルネサンス以降、時代は自由の表現を求め始めます。その思想がサタンを化け物ではなく、人型へと変えていったのではないでしょうか。


→ サタンを踏みつけるミカエルの絵画第一弾を見たい方はこちら
→ ミルトンの「失楽園」についての絵画を見たい方はこちら
→ 叛逆天使の墜落についての絵画を見たい方はこちら


【 コメント 】

タイトルとURLをコピーしました