魔笛の絵画12点。真実の愛と光と闇の神秘が語られた、モーツァルトの喜劇オペラ | メメント・モリ -西洋美術の謎と闇-

魔笛の絵画12点。真実の愛と光と闇の神秘が語られた、モーツァルトの喜劇オペラ

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 「魔笛」は1791年にモーツァルトが作曲した生涯最後のオペラです。舞台は古代エジプト。
 ある日、王子タミーノは大蛇に襲われてしまいます。夜の女王の従者三名に助けられた彼は、女王から「娘のパミーナがザラストロに誘拐された、救い出してきて」と依頼されました。タミーノはそれを引き受け、魔法の笛と鳥を捕まえる男パパゲーノと共にザラストロの神殿へと向かいました。そこでタミーノは本当の悪者は夜の女王であることを知ります。タミーノはザラストロの部下モノスタトスに捕らえられてしまったものの、タミーノとパミーナは初対面で恋に落ちてしまいます。

 ザラストロは真実の愛の為に、タミーノとパパゲーノに「沈黙の試練」を与えました。すぐに了承したタミーノに対し、渋るパパゲーノは「若い娘パパゲーナを与えよう」と言われて納得しました。沈黙を守るタミーノの元に夜の女王の従者たちが現れ、沈黙を破ろうとしますが失敗します。その頃、パミーナの元へ夜の女王が登場し、「ザラストロを刺しなさい。さもなくば縁を切る」と娘へナイフを渡しました。パミーナは悩み、ザラストロに相談すると、彼は「この神殿は復讐をしない」と諭すのでした。
 試練中で口を閉ざすタミーノにパミーナは嫌われたと思い、自害を考えます。一方、パパゲーノは老婆から変身した若い娘パパゲーナを見るや否や恋に落ちていました。しかし、「まだ早い」と彼女は神官たちによって連れ去られ、パパゲーノも自害しようとします。

 ナイフで自害しようとしていたパミーナはタミーノの元へ連れられ、誤解が解けます。二人は魔法の笛を使ってその後の試練もやり遂げました。パパゲーノも魔法の鈴を使って無事にパパゲーナと再会し、喜び合います。夜の女王は寝返ったモノスタトスと共にザラストロの神殿へ襲撃しますが、光に勝つことはできませんでした。ザラストロはイシス神とオシリス神を讃え、若きカップル達を祝福したのでした。
 では、「魔笛」の作品12点をご覧ください。

 

「フランスの工房作  年代不詳」
魔笛を吹くタミーノと、花を持つタミーノ?
焼き物でできた飾り板の魔笛。装飾が美しいですね。

「イタリアの工房作  18世紀」
鳥を捕まえる職業のパパゲーノ。自分が鳥人間になっちゃって
いますね(笑) 彼は道化的存在で、ズルをしたりおどけたりと
人々を笑わせてくれます。

「作者不詳  18世紀頃の挿絵?」
タミーノが魔笛を吹くと、森の獣たちが集まってきたという場面かな?
獣にしてはゾンビ的な人間ですけれど…。

「作者不詳  18世紀頃の挿絵?」
タミーノとパミーナが出会い愛し合ったものの、ザラストロに
試練を与えられるという場面。滝と火山噴火の双極により劇的な
演出をしていますね。

「フランスの工房作  年代20世紀?」
魔笛のセットデザインを描いた作品。設定に忠実でザ・エジプト!
という感じですね。タミーノとかパパゲーノとか名前がイタリアなので
エジプトのイメージが未だに沸きません^^;
(タミーノとパミーナの名前がごっちゃになるのは私だけ?)

「カルル・フリードリッヒ・シンケル作  1815年」
夜の女王のステージセット。この作品をもとにして、舞台が作られたの
だと思います。星々が輝く青の舞台から夜の女王が登場した場面は
さぞかし壮観であったでしょうね。

「ジモン・クアーリョ作  1795-1878年」
こちらも夜の女王のシーン。青の布の天幕がぶわっとなっております。
上記のカルルさんと彼は共にドイツ出身であるので、影響しあった
部分もあるのかなぁと思います。

「マルク・シャガール作  1966-67年」
幻想の画家シャガールが魔笛をモチーフにして描いた作品。
中央には魔笛を吹くタミーノ。左はパミーナで右はパパゲーノ・・・
かな?シャガールの不思議な世界観が溢れていますね。

「マルク・シャガール作  1967年」
これまたシャガールさん。タミーノが魔笛を吹くと動物たちが寄ってきた
という場面を美しく描いています。タミーノに翼が生えたとか、
ライオンが人面とかいうツッコミを超え、「こういう世界なのだ」という
説得力のある神秘的で綺麗な作品ですね。

「オーストリア出身の画家作  18世紀」
魔笛の準備をしている劇団さん達を描いた作品。
手前は衣装の準備と音楽合わせ、後ろはセット運びで大忙し。
右側の人物はモーツァルトその人・・・なのかな?

「モーリッツ・フォン・シュヴィント作  1865-7年」
魔笛とフィガロの結婚、ドン・ジョバンニのコラボ作品。
いずれもモーツァルトが手掛けた傑作で、愛をテーマにしています。
ドン・ジョバンニは改心せずに地獄へと行ってしまいますが・・・^^;

「カール・ジョゼフ・ガイガー作  1822-1905年」
ドン・ジョバンニと魔笛を創造するモーツァルトの作品。
彼等をぶわっと召喚するような構図は面白いですね。
モーツァルトに対する深い敬意が感じられます。

 「魔笛」はフリーメイソンに深い関係があるとされています。フ
リーメイソンは中世後期~ルネサンス時代に結成されたとされる、会員同士の親睦や友愛を目的とした秘密結社です。モーツァルトも在籍していたと言われています。
 「魔笛」の設定や歌詞、音楽の中にフリーメイソンの教義や象徴が用いられており、ザラストロの神殿内は儀式
の音楽が再現されているそうです。魔笛はフリーメイソンの秘密が隠されているとも、宣伝目的であるとも囁かれており、モーツァルトは教義の秘密を漏らしてしまった為に暗殺されたとまで言われていますが、これは間違いであるようです。

 フリーメイソンの基本理念は「自由」、「平等」、「友愛」、「寛容」、「人道」の五つです。魔笛では真実の愛や正しき行い、許す心についてなどのテーマが盛り込まれています。モーツァルトはこのオペラを通じてフリーメイソンの理念を人々に楽しく伝えたかったのではないでしょうか。

 

【 コメント 】

  1. 管理人:扉園 より:

     >> 季節風様へ
    こんばんは^^
    巨大な夜のドーム素敵ですよね。
    月に乗って登場した夜の女王がアリアを歌う場面は、さぞかし迫力があるだろうなぁと感じます。

  2. 季節風 より:

    カルルさんの夜の女王の絵が好きです。夜の女王の突き抜けた感じがピッタリだと思います。

  3. 管理人:扉園 より:

    >> びるね様へ
    こんばんは^^
    詳しく教えてくださりありがとうございます!
    よく調べたらwikiにも書いてありました。気付きませんでした…。
    オペラや音楽には疎いのですが、ジャポニズムの影響があるのかしら。
    そうなんですね!舞台芸術の世界も面白いです。
    そういえば師匠ヒエロニムス・ボスも聖母マリア兄弟会の宗教劇の舞台芸術に携わった
    そうなので、画家が舞台芸術を手掛けるという文化は連綿と受け継がれているのかもしれませんね。
    ルドンが「牧神の午後」の美術制作を担当していたら、一体どうなっていたのでしょう。
    スキャンダラス以上の物凄い作品になったような気がします。
    見てみたい気もしますが…^^;

  4. びるね より:

    リブレットから、Tamino kommt in einem prächtigen japonischen Jagdkleide rechts von einem Felsen herunter.
    Japonischen(日本の)Jagdkleide(狩の衣装)です。
    デイヴィッド・ホックニーが手掛けた『魔笛』はBunkamuraで展示されたことがあります。DVDにもなっていたと思います。
    オペラや劇などの舞台美術はあまり注目されませんが、時々すごい人が担当していることがあります。ドビュッシーの『ペレアス』ブリュッセル初演では、クノップフがコスチュームデザインをしているし、ニジンスキーの『牧神』は当初ルドンが美術を担当することになっていました。高齢だったので結局バクストになっています。

  5. 管理人:扉園 より:

     >> 美術を愛する人様へ
    こんばんは^^
    「魔笛」の世界観をアートにしたシャガールも素敵ですが、構成や舞台を考察して描かれた作品も、現代に通じるものがあって興味深いですよね。
    シンケルさんの舞台は後世に強く影響を与えているのですね。
    「アマデウス」は観ていないので何とも言えませんが、可能性はあると思います。
    世界や時代によって劇が変化する。
    上演される劇の差異について今まで意識していませんでしたが、共通点や異なる点を発見するのも楽しそうです^^

  6. 管理人:扉園 より:

    >> びるね様へ
    こんばんは^^
    え、エジプト舞台でイタリア風(?)の名称のタミーノが狩衣を着ているのですか!
    平安時代頃のあの服ですよね…。
    滅茶苦茶な世界観でもなんだか納得してしまいそうになるのが、「魔笛」の魅力の一つですね。
    来日公演のものでもシンケルさんの舞台の再現があるとは。
    動画探してみたいと思います!

  7. 美術を愛する人 より:

    あまり絵画として見る機会のないテーマでしたので新鮮でした。
    昔の舞台が想像できるのが面白いですね。
    シンケルさんの絵は映画「アマデウス」の劇中劇を思い出しました。
    もしかしたらこれをモデルにしていたのでしょうか。

  8. びるね より:

    タミーノは「狩衣」を着て登場すると台本にありますが(日本人?)、なかなか見る機会がありません。
    シンケルの舞台美術(演出はエヴァーディング、指揮はバレンボイム)は以前ベルリン国立歌劇場の来日公演で再現してました。もしかしたら、探せば動画があるかもしれません。

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