農民の踊りの絵画15点。ブリューゲル一族から広がるフランドルの愉快なお祭り作品 | メメント・モリ -西洋美術の謎と闇-

農民の踊りの絵画15点。ブリューゲル一族から広がるフランドルの愉快なお祭り作品

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 農民の踊りは、フランドルの農民たちが結婚式などのお祝いで踊る場面を描いた作品です。
 ピーテル・ブリューゲル(父)の作品が主に知られており、農民の生活を生き生きと描いた初めての画家とされています。彼は裕福層の出身にかかわらず、農民と共に過ごし、お祭を楽しんだそうです。愛想が良くて悪戯好きだったというから、人気者だったのでしょう。ブリューゲルの描いた農民の踊りのモチーフは、後に息子に引き継がれ、後にフランドルの画家、他国へと渡っていきます。その絵画は当時の風習や様式、文化のみならず、農民の楽し気な雰囲気までもが閉じ込められているのです。
 ブリューゲルから派生した農民の踊りの絵画、15点をご覧下さい。

 

「ピーテル・ブリューゲル(父)作  1566年」
バグパイプの愉快な音楽が奏でられる中、人々は手を取り合って
くるくると楽しそうに踊っています。右側では接吻をしている男女、
飲み物を飲んでいる人などもいます。

「「ピーテル・ブリューゲル(父)作  1567年」
こちらはお祭の騒ぎに疲れた人々が、ご飯や一杯お酒をあおっている
感じですね。右側の男女がご飯食べたい~!って走り寄っている
ように見えますw

「ピーテル・ブリューゲル(父)作  16世紀」
粗末に見える家々にもかかわらず、人々からは活気が満ちていますね。
右側の男性は食べ過ぎです。フランドルの絵画はどんより曇った印象
ですが、本当に曇りばかりであったようです。

「ピーテル・ブリューゲル(父)作   1530-69年」
男女が向かい合い、腰に手を当て「えいっ」とやるのは共通した踊り
なのでしょうね。この作品は婚礼の男女が奥に描き込まれています。
狭いコミュニティだった当時、誰かの結婚式は村人全員でお祝いする
ものだったのでしょう。

「マルテン・ファン・クリーフ作  1527‐1581年」
クリーフさんはブリューゲルとほぼ同期に活躍した画家。(二歳年下)
彼も同じように農民目線の、牧歌的で日常的な作品を描いています。
上の作品と見比べてみるとよく似ていて、ブリューゲルの作品を
参考にしたことがよく分かります。

「ピーテル・ブリューゲル(子)作  17世紀前半」
同名の息子は父の作品を模写しています。彼が5歳の時に父が
亡くなったので、祖母に絵画を教わったそうです。この絵画も配置
こそ異なりますが、父の絵画をほぼ模写したことが分かりますね。

「ピーテル・ブリューゲル(子)作  1616年」
彼は父の作風を真似て描いておりましたが、人体の動きは固く、
不自然な感じが出ており、どうしても二番煎じの気が否めません。
真面目過ぎたのかもしれませんね。

「ピーテル・ブリューゲル(子)作  17世紀」
弟のヤン・ブリューゲルは兄と違い、静物画と地獄の情景を描きました。
画家としてはヤンの方が成功していたのかもしれません。
お二人は仲が良かったのでしょうか?気になる・・・。

「ピーテル・ブリューゲル(子)作  17世紀」
人々は巨木を囲み、マイム・マイムのような踊りを踊っています。
マイム・マイムはイマヌエルさん作曲、エルスさん振り付けの20世紀の
イスラエルの踊りであるそうです。知らなかったー。

「ピーテル・ブリューゲルの工房作  17世紀頃」
こちらは畑を耕していたり、馬車が通っている辺りお祭の日ではなく、
若者達がはしゃいで踊っている感じですね。日常でも元気を出したい
日は踊ってリフレッシュしていたのかもしれません。

「マルテン・ファン・クリーフの追随者作  17世紀頃(?)」
外は雪。冬は鬱屈とした感情になりやすいので、気分を高めようと
ダンス。手前で子供が大人を真似ようとしているのが微笑ましいですね。
肉の丸焼きを猫が狙っているのもいい感じ。

「ピーテル・パウル・ルーベンス作  1630-38年」
フランドルの巨匠ルーベンスも農民の踊りを描いています。
彼は王侯貴族の宮廷画家&外交の仕事をしていたので、この作品も
依頼されたものでしょうか。ブリューゲルの土着的な感じとは違い、
洗練された印象を受けます。

「ピーテル・パウル・ルーベンス作  1636-40年」
数年後に描かれた農民の踊り。まるでギリシャ神話のニンフ達の
ダンスのようですね。よく見ると、人々は全員手を繋いでいるのかな。
このような種類の踊りがあったのでしょうか。

「作者不詳  17世紀」
暗いバロック調の色合いの中、実際に見たというより想像で描かれた
かのような農民の踊り。バグパイプを吹く人が「こんなんやって
られないぜ」と言った感じの不満顔。背後にうつむいた人もおり、
楽しさより不安を感じさせる作品。

「アントワーヌ・ヴァトー作  1702年」
ヴァトーはフランスのロココ調の画家で、フランドル出身では
ありませんが、ブリューゲルの流れに乗じた、楽しげな農民の踊りを
描いていますね。背後で男女がいちゃついている感も踏襲しております。

 この当時、プチ氷河期が到来して寒冷化となり、作物の不作が立て続けに起こっていました。領主の圧政にも苦しんでいたでしょうし、農民の生活は大変なものだったに違いありません。餓死者やペストで命を落とす者も沢山いたでしょう。そんな大変な生活の中で娯楽と言えば、お祭りやお祝いで食べたり踊ったりしてはっちゃける事でした。人々は笑い合い、踊ることで不況を吹き飛ばそうとしたのです。

 農民の踊りはどんなものだろうと気になり、検索をしてみました。
 そうしたら以下の動画を見つけました。オランダの首都アムステルダムで撮ったようで、踊りは異なるかもしれませんが、おじいちゃんとおばあちゃんが楽しそうに踊っています^^

 男女が手を繋いでくるくる回ったり、腰に手を当てて身体をくいっとやる動作は、当時のまま変わっていないのかもしれません。結構目が回りそうですし、ぶつからないように踊るには技術が要りそうです。きっと日本の盆踊りのように皆がそれを楽しそうにやるから、自然と覚えてしまうのでしょうね。
 他の動画も観たい方は「Boerendans」と検索すれば出てきますよ。

 

 あと、2018年1月開催の「ブリューゲル展 画家一族 150年の系譜」も楽しみですね^^

→ 「ブリューゲル展」について詳しい情報を知りたい方はこちら

 

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