イオの絵画13点。ゼウスとの情事をヘラに知られ、牝牛となったギリシャ神話の美女 | メメント・モリ -西洋美術の謎と闇-

イオの絵画13点。ゼウスとの情事をヘラに知られ、牝牛となったギリシャ神話の美女

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 ギリシャ神話に登場するイオはゼウスに見初められたが為に、牝牛となって世界をさまよう羽目となった女性です。イーオーとも呼ばれます。
 イオはヘラに仕える女神官であるにも関わらず、最高神ゼウスが彼女を見初めてしまいます。嫉妬深いヘラはそれに勘付いて夫の元へ行きますが、ゼウスはイオを白い牝牛に変化させ、しらを切ろうとしました。そんな事はお見通しのヘラは「私にこの美しい牝牛を譲ってくれないかしら」と言い、まんまとゼウスからイオを引き離します。その後、ヘラは百の目を持つ怪物アルゴスの元へ牝牛を連れていき、厳しく監視させました。

  アルゴスに見張られながら牛の生活を余儀なくされたイオ。彼女の家族はそれに気付いて嘆いてくれましたが、悲しさを一層増やすだけでした。ゼウスはそんなイオを不憫に思い、部下であるヘルメスを遣わしてアルゴスを退治させ、牝牛を解放させてやりました。
 しかし、全てを見透かしているヘラは虻を送ってイオを執拗に追いかけ回し、牝牛は逃げ惑ってイオニア海を泳いで渡りました。野をさまよい、山に登り、海峡と国を渡り、河岸へと移動します。そこに来てやっとゼウスがヘラに「ワシが悪かった。もうイオにはちょっかいを掛けないから許してくれ」と詫びを入れたのです。ヘラはそれを聞き入れ、イオを人間の姿へ戻してやり、無事に家族の元へ返してあげたのでした。
 ゼウスのせいで踏んだり蹴ったりな女性、イオについての絵画13点をご覧ください。

 

「アントニオ・アッレグリ・ダ・コレッジオ作  1520-40年」
川辺で水浴びをしていたイオの元へ、好色爺さんゼウスが
出現します。ゼウスは黒い煙に変身し、逃げ出そうとする
イオを捕まえてしまうのです。
Antonio Allegri, called Correggio - Jupiter and Io 1520-40

「ジャン=バプティスト・ルニョー作  1754-1829年」
上記のコレッジオの作品はイオを描いた絵画の代表作と言ってもよく、
幾つかの類似作が残されています。暗雲立ち込める中、イオの身体
だけが純白に光っております。

「ジョン・ホップナー作  1785年」
ダークなセピア調の色合いの中、ぬっと現れるゼウスの顔と手。
ゼウスは黒い煙で情事を隠そうとしますが、妻のヘラには全てが
お見通しでした。

「アントニオ・アッレグリ・ダ・コレッジオ作 1531年」
物語通りですと、ヘラが現れた時には、バレないようにイオは牝牛に
変身させられているのですが、この絵画は諸にバレまくっていますねw
これじゃあ弁解のしようもありません・・・。

「アンドレア・スキャヴォーネ作  1522-63年」
雲の隙間から覗いているヘラ様。こちらも決定的瞬間を捉えております。
この状態であったら、牝牛になる暇もなく、イオがヘラによって消し炭と
化しそうです・・・。

「作者不詳 彩色写本の挿絵」
玉座に座り、異次元の彼方からやってきたヘラ様。
この中世の挿絵はイオと牝牛が分裂しております。これはもう時空が
異なっていると思った方がいいですね。細かい事は気にしませんよ。

「ヘルブラント・ファン・デン・エークハウト作  1621-74年」
レンブラント風の色調ですね。「まぁ、美しい牝牛だこと。私に
くださらない?」と言った感じのヘラに、ゼウスは「うーんと、えーと、
そ・・・そうじゃな」とたじたじで腰が抜けているように見えますね。

「ダフィット・テニールス一世  1638年」
フランドル的な風景の中、行われる牝牛の譲渡。後ろめたいゼウスは
ヘラの要望に逆らえず、牝牛を渡してしまいます。
ゼウスの背中ががりがりで何とも弱々しい感じですね・・・w

「ジョヴァンニ・アンブロージョ・フィジーノ作  1599年」
かなり肉厚的な感じの作品。こちらのゼウスはヘラに負けじと
嘘八百を並べているようですが、完全に見抜かれてしまっています。
背後にいるエロスが怯えているようです・・・。

「ニコラース・ベルヘム作  1669年」
ヘラは百の目を持つ怪物アルゴスに「あの牝牛を一晩中監視して
いなさい」と命じます。牛の生活を強いられ、監視される毎日に、
イオは嘆き悲しみました。

「ビクター・オノレ・ジャンセン作  1658-1736年」
そんな折、彼女は父親や姉妹達と出会います。始めこそは
気付かれずに草を食べさせてくれるだけでしたが、
彼女が前足で「IO」と書くと、家族は牝牛に変身しているという事を
理解してくれ、その境遇を酷く悲しんだのでした。

「ピーテル・ラストマン作  1618年」
ゼウスはそんなイオを可哀想に思い、ヘルメスを遣わしてアルゴスの
首を斬って彼女を解放させます。アルゴスは命令を守っていただけ
なのに、とんだとばっちりですね。可愛そうに・・・。

「ジョバンニ・ベネデット・カスティリオーネ作  1609-64年」
ヘラが送った虻に追い立てられたイオは、海や山を渡って逃げ惑います。
ゼウスはようやくヘラに謝罪し、イオは人間の姿に戻って家族の元へ
帰ったのでした。

 イオのその後について、こんな逸話も残っています。
 エジプトの地で人間となったイオは、ナイル川のふもとでゼウスとの子エパポスを産みます。それに怒ったヘラはクレス達に命じてエパポスを隠してしまいます。見かねたゼウスがクレス達を殺してエパポスを解放し、イオは長い放浪の末、シリアのビブロス王の元で養育されていた息子と再会を果たしたのでした。

 ゼウスが美女にちょっかいを出し、嫉妬したヘラが嫌がらせをする。永遠に終わる事のない、夫婦の仁義なき争い。ゼウスのせいで悲劇をこうむった女性は多しで、イオはその中の最たる一人なのでした・・・。

→ アルゴスについての絵画を見たい方はこちら

 

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