スキュラの絵画13点。魔女キルケの嫉妬により、犬と魚の怪物に変えられた美女 | メメント・モリ -西洋美術の謎と闇-

スキュラの絵画13点。魔女キルケの嫉妬により、犬と魚の怪物に変えられた美女

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 スキュラはギリシャ神話に登場する乙女(ニュムペーとも)です。
 シチリア島に住んでいた彼女は非常に美しく、多くの男性に言い寄られていましたが、恋愛に興味はなく、断ってばかりいました。彼女にとって、海岸沿いを散歩したり、海水浴をしたり、海のニュムペーと話していた方がずっと楽しかったのです。ある日、スキュラが水浴をしていると、海の神グラウコスと出会いました。彼は一目でスキュラに恋をし、「自分は人間ではなく海神なんだ。元々は人間の漁師だったんだけど、ある草を噛んだら海に潜りたくなって、神の仲間入りを果たしたんだ。今ではトリトンにも劣らない存在になったんだよ!」と彼女の心を射止めようと必死にアピールしました。しかし、スキュラは恐れを成して逃げてしまったのです。

 グラウコスはどうしても諦めきれず、魔女キルケの元へ行って、呪文や薬草の力を使って恋を実らせてくれるようお願いしました。しかし、キルケはグラウコスの事が好きになってしまい、「スキュラなんて女じゃなく、私を愛してよ」と言うのですが、彼は聞く耳を持ちません。キルケは怒り、恋敵スキュラを陥れようと考えました。キルケは毒薬を作り、スキュラが気に入っていた小さな入り江に毒を流し込み、呪文を唱えました。すると、毒の水に触れたスキュラの下半身は、みるみる犬と魚が入り混じった怪物に変わっていきます。彼女が怯えて凶暴な怪物から逃げようとしても、ずっと付いてくるのでした。こうしてスキュラは上半身は美女、下半身は6匹の犬と魚が付いた怪物となってしまったのです。グラウコスは変わり果ててしまった彼女を見て、涙を流したそうです・・・。
 スキュラに起こった悲劇の絵画13点をご覧ください。

 

「Laurent de la Hyre 作  1606‐56年」
散歩したり泳いだり、女友達と喋ったりしてのんびりと暮らしていた
美女スキュラの元に、海神グラウコスが現れます。「美しい人よ!」
と彼は熱烈アピールをしますが、スキュラは逃走。死んだ目を向けています。

「Filippo Lauri 作  1623-94年」
恋愛に全く興味のないスキュラにとって、イケオヤジ(?)のグラウコスも
拒否対象でした。猛プッシュする彼を怖がり、「やめて!」と全身で
嫌がっています。

「サルヴァトール・ローザ作  1615年-73年」
もう変態ジジイにしか見えないグラウコス。
神話の話ではイケメンの青年の海神かと思ったら、絵画ではオヤジの
オンパレード。こんなんじゃあスキュラさん拒否しますって。
サルヴァトール・ローザの絵画をもっと見たい方はこちら

「Nicola Vaccaro 作  1640-1709年」
嫌すぎて、狩猟と貞節の女神ディアナに助けを求めるスキュラの図。
キューピッドまでもがバイバイ!と見限っているように見えます。
グラウコスことごとく嫌われてしまっています。

「ジャックス・デュモン・ル・ロメイン作  1720-80年」
こちらは何故か熱烈アピールに応じているスキュラ。
キューピッドもグラウコスに向けて矢を放ち、お二人がゴールイン
みたいに見えます。あれ、そんな話だっけ・・・?

「バルトロメウス・スプランヘル作  1580-82年」
セクシーポーズを決めて誘惑するスキュラさん。
グラウコスは胸ズッキュンしています。あれ、そんな話だったけ・・・?

「アゴスティーノ・カラッチ作 1597年」
びしっとポーズを決めるスキュラと、「俺が絶対に守る!」といった
感じのグラウコス。なんかゲームのパッケージみたいに見えて来た。
海と愛と真実のRPG・・・。って、話変わりすぎですってw

「ジョン・メルヒッシュ・ストルードウィック作  1886年」
ともかくスキュラに振られたグラウコスは、魔女キルケに相談します。
「呪文や薬草で恋愛成就させてください」と頼む彼に、なんとキルケが
恋をしてしまいます。・・・キルケさんってオヤジ趣味が!?(ぇ
アタックしてもなびかず、キルケの怒りの矛先はスキュラへ・・・。

「ウィリアム・ターナー作  1841年」
ロマン主義の画家ターナーは風景画のイメージが強いのですが、
神話画も描いているんですね。ただし、かなり人物が小さめですがw
「怪物におなりなさい!」とキルケは毒薬を入り江に流し込みます。

「ギリシャのボイオーティア出土の赤絵壺  450–425年頃」
水に浸かったスキュラの下半身はみるみる怪物へ変化していきます。
前には6頭の凶暴な犬、後ろには魚の尾が付いてしまったのです。
壺の絵には二頭しかいませんがノープロです。

「ピーテル・パウル・ルーベンス作  1577-1640作」
犬に変わりゆく身体に、悲鳴を上げるスキュラ。グラウコスは
おろおろとそれを見る事しかできませんでした。
絶世の美女はおぞましい怪物になってしまったのです。

「エグロン・ファン・デル・ネール作   1636-1703年」
凄いポーズで毒薬を流して呪文を唱えるキルケと、醜い老婆と
化して怪物に変化するスキュラ、感慨深げなグラウコスという、
ちょっとカオスな絵画。ポーズや画風などフュースリを想起させますね。

「ヘンリー・ハインリヒ・フュースリ作  1794年」
こちらは本物のフュースリw 怪物となったスキュラは、オデュッセウス
一行の行く手を阻むことになります。船がスキュラに近付いた瞬間、
6名の船員が犬の餌食になってしまったのでした。
何がどうなっているのか分かりませんね・・・w

 スキュラのその後は判然としませんが、ローマの創始者とされるアエネアスがその付近を通った時には、彼女は石と化していたそうです。元の姿に戻ることなく、怪物のまま石となったスキュラ・・・。
 「私の方が美しい」「私の方が上手」と女神に喧嘩を売って怪物と化した女性は、メデューサやアラクネがいます。彼女たちは可哀想ではあるけれど、自業自得である部分も少なからずあります。しかし、スキュラはグラウコスの愛を拒否しただけで、怪物となってしまいました。しかも原因が一方的なキルケの逆恨み・・・。理不尽すぎます。もし、スキュラとグラウコスが結ばれたとしても、どこかでグラウコスの事を知ったキルケが闖入し、スキュラを怪物に変えてしまいそうですし・・・。
 結果:キルケさんは恐ろしい。

→ オデュッセウスの冒険についての絵画を見たい方はこちら
→ 魔女キルケについての絵画を見たい方はこちら

 

【 コメント 】

  1. 管理人:扉園 より:

     >> 幻様へ
    返信が遅くなってすみません(> <)こんにちは。 ギリシャ神話は男女関係がドロドロですよね…w スキュラからしたら、イケオジサンに言い寄られ「何あのおじさん、嫌だわ!」と拒否って「ああ、いなくなった。諦めたのかしら」と思っていたら、謎の魔女が現れて「お前さえいなければ!呪ってやる!」といきなり魔物に変えられてしまう…。 理解できないまま被害者になるという、完全にとばっちりモード。 ですが、そんな理不尽な物語、現実にもありそうですよね^^; 女の憎悪は理不尽を超越する…。 はっ、昼ドラの原点はギリシャ神話にあり…!?

  2. より:

    これは神話的な脚色を除いたら完全に昼ドラの世界ですよね。
    「片思いのあの娘を振り向かせるにはどうしたらいいの~?」と女友達に相談したら「そんな女なんかよりあたしに惚れなよ」と横恋慕され、「ごめん、僕には彼女しかいないんだよ」と断ったら女友達の方が「あの女、絶対に許さない!!」と片思い相手を一方的に恋敵扱いして凶行に及ぶ……なんて筋書き、いかにもありそうじゃないですか。

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