エマ・ハミルトンの絵画13点。画家のモデルにして、ネルソン提督の愛人となった美女 | メメント・モリ -西洋美術の謎と闇-

エマ・ハミルトンの絵画13点。画家のモデルにして、ネルソン提督の愛人となった美女

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 エマ・ハミルトン(1765-1815)は、イギリスの絵画モデルであり舞踏家。ネルソン提督の愛人として知られています。
 彼女はイングランド北西部のチェシャ―州に生まれ、早くに父を亡くして母に育てられました。本名はエイミー・ライオンであるものの、エマ・ハートと改名して家政婦として働きましたが、その美しさと性に奔放であったせいで辞職が続きました。17歳になった頃にはロンドンの名士の愛人となり、絵画モデルとしても働いていました。

 その後、エマは貴族チャールズ・グレヴィルの愛人となり、彼の友人の画家ジョージ・ロムニーに何枚かの絵画を描いてもらっています。別の女性と婚姻したグレヴィルが、エマをイタリアのナポリのサー・ウィリアム・ダグラス・ハミルトンの元へ連れていくと、彼はエマを深く気に入り、公式に結婚する事に決めました。エマはナポリで演技や踊りを混ぜ込んだ見世物を披露し、その魅力は国に広まって王妃マリア・カロリーナとも親しくなりました。

 それから、エマは特使としてやって来たホレーショ・ネルソン提督と、夫公認の愛人関係となりました。エマが36歳の時にネルソンとの娘ホレイシアを出産したものの、二年後に夫ウィリアムが亡くなり、ネルソンは出征してしまいます。残された彼女は寂しさのあまり浪費に走り、ネルソンが戦死した時には財産が残っていませんでした。それどころか借金が重なって家を取り上げられ、借金した者の監獄に入れられてしまいます。負債から逃れる為にエマはフランスへ渡ったものの、酒に溺れて50歳の若さで亡くなってしまいました。
 麗しの栄誉からどん底へ。絶世の美女エマ・ハミルトンを描いた絵画13点をご覧ください。

 

「ジョージ・ロムニー作  1782年」
グレヴィル卿が画家にエマを紹介した時、エマは17歳、ロムニーは
47歳だったようです。エマの美貌、天性の表現性、魔性さに惚れ込んだ
ロムニーは60以上の作品を残しています。
こちらはわんこを抱っこしているエマさん。

「ジョージ・ロムニー作  1782年」
こちらはギリシャ神話の魔女キルケとしてのエマ。右奥には動物に
変えられた男達が描かれています。ロムニーは神話や宗教の
人物の扮装をエマに着せ、文学的主題の作品を多く描いています。
→ キルケについての絵画を見たい方はこちら

「ジョージ・ロムニー作  1734-1802年」
マグダラのマリアに扮したエマ。こちらはイエス・キリストに救われた
娼婦の女性マリア(キリストの母と混同しないよう、出身地を前に
付けています)を模しています。今までの罪を悔い改めて悔悛する
様子が描かれていますね。

「ジョージ・ロムニー作  1734–1802年」
こちらはギリシャ神話のバッカスの巫女に扮したエマ。バッカスは
酒や酩酊の神であり、古代では実際に女性信者が数多くいたそう。
服をはだけさせながら、笑顔でポーズを取っています。

「エリザベート=ルイーズ・ヴィジェ=ルブラン作  1755-1842年」
こちらは18世紀の著名な女流画家の作品。ロムニーだけではなく、
エマは多くの画家のモデルとなっています。これはアリアドネを
模しています。アリアドネはデュオニソス(バッカス)の妻となったと
言われているので、酒杯を持ち、神獣である豹の毛皮にもたれています。

「エリザベート=ルイーズ・ヴィジェ=ルブラン作 1792年」
ペルシアのシビュラ(巫女)に扮したエマ。古代の地中海では、
何か問題があると神に神託を受ける事を行いました。それを行う
中間役がシビュラであり、地域によって様々な特性がありました。

「エリザベート=ルイーズ・ヴィジェ=ルブラン作  1790年」
ルブランさんも何枚も描いていますね。こちらもバッカスの巫女と
してのエマ。彼女を描いた作品はカメラ目線が多いような気がします。
画面越しから目が合い、ドキッとしてしまった人もいるのではない
でしょうか。

ジョシュア・レノルズ作  1723-92年」
こちらもバッカスの巫女に扮したエマ。巫女の人気度が高すぎです。
口に指をやり、流し目でこちらを見つめる美女・・・。いかにセクシーで
ドキッとする絵を描けるかを狙っているような気がしますね^^;

ジョシュア・レノルズ作  1723-92年」
今度は愛の女神ヴィーナスに扮しております。遂に露出度がかなり
高いセクシーな服となっていますね。「こんな格好やポーズは
恥ずかしくてできない!」という女性が多いと思われる中、大胆に
エマはそれをやってのけるから男性が虜となってしまうのか。

「ヨハン・ハインリック・シュミット作  1757-1821年」
こちらはセクシー路線の絵画とは違い、とても清楚な印象を受ける
作品。髪もくるっとカールしており、容姿も美貌というよりもチャーミング
ですね。

「トーマス・ローレンス作  1769-1830年」
こちらは「物思いにふけるエマ」という題のようです。何かの神話的
題材かと思ったら、物思いなのね・・・。河の流れる大自然と美しい
エマのツーショットは、静寂溢れる洗練された絵になりますね。

「ギャビン・ハミルトン作  1723-98年」
こちらもシビュラ(巫女)に扮しています。手に持っている巻物は
預言の内容を表しています。作者の姓はハミルトンですが、
スコットランド出身なので、エマの夫のウィリアム・ハミルトンさん
とは無関係のようです。

「ジョシュア・レノルズ作  1723-92年」
愛人のネルソン提督に手紙を書くエマさん。「こういった題材を
描きたい」という画家の希望の作品ばかりが目立ちましたが、
こういった何気ない幸せの一枚といった絵画もあるんですね。
この絵画を見ていると、この後の悲劇が何とも辛いです・・・。

 絵画モデルと妖艶な舞いで人々を魅了し、短期間で栄光への階段を駆け上がったものの、夫とネルソン提督の死を境に階段を転げ落ちてしまったエマ・ハミルトン。残念ながら彼女は夭逝してしまったものの、エマとネルソンの娘ホレイシア・ネルソンは生き延び、イングランド国教会の牧師であるフィリップ・ワードと結婚し、10人の子供を授かったようです。ホレイシアは1881年に80歳で息を引き取りました。
 ホレイシアは母親に似て、美貌&魅力的であったようで、こんな絵画が残されています。

「イギリスの工房の画家  19世紀」
バッカスの巫女に扮したホレイシア・ネルソン。
かつて母がこなした絵画モデルを、美しく大胆にこなしていますね。

 

【 コメント 】

  1. 管理人:扉園 より:

    >> 季節風様へ
    こんばんは^^
    あの無邪気とも思える輝く笑顔に男性達は虜になっちゃったのでしょうね。
    夫ハミルトンも大提督が相手では何も言えず、公認の愛人関係となったのは奇妙というか凄いというか^^;
    連続ドラマにすると人気が出そうですね!
    今調べてみたら、1941年のイギリス白黒映画「美女ありき」という作品があり、ネルソン提督とエマの不倫の恋を描いているようです。
    やはり魅力的な人物なので映画界が放っていなかったようですw
    彼女の人生は不幸でもありましたが、娘さんが幸せに暮らしたのは救いですよね。
    そうです。ルブランさんは宮廷画家でアントワネットと親しい間柄でした。
    王族が逮捕されてフランス革命が起きた際、彼女は国外へ逃げて難を逃れたようです。
    数年間国外で暮らし、王政復古するまではフランスに定住できなかったそうです。
    政治のあおりを受けたものの、命を脅かされずに良かったですよね…。

  2. 季節風 より:

    気品に満ちた大将軍のネルソンさんが人妻エマに夢中になったのも無理ないです。モデルとしても魅力的ですね。美しいマグダラのマリアがピッタリ。
    エマの自由奔放で魅力的で波乱万丈な人生はもし連続ドラマになれば必ず見ます。最期は悲惨だけどネルソン提督との間に美しい娘さんがいて牧師の奥さんとなって幸福になったのも劇的です。
    女流画家ルブランさんはマリー・アントワネットお抱えの人ですか?

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