ヨセフとポティファルの妻の絵画14点。誘惑を拒否して濡れ衣を着せられた美青年 | メメント・モリ -西洋美術の謎と闇-

ヨセフとポティファルの妻の絵画14点。誘惑を拒否して濡れ衣を着せられた美青年

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 前回に引き続きヨセフに関するストーリーです。
 父ヤコブの寵愛を受けていた為、嫉妬した兄達によって隊商へと売られてしまったヨセフ。彼はそこからエジプトへと渡り、彼は王宮の侍従長ポティファルの下僕となります。真面目に働いたヨセフはポティファルに気に入られ、家の全財産を任されるまでとなりました。しかし、美青年であったヨセフは妻に誘惑されてしまいます。

 ヨセフは全力で拒否し、逃亡しますがその場に上着を置いてきてしまいました。プライドを傷つけられた妻は逆に「ヨセフに乱暴されそうになった。これが証拠よ」と上着を持って夫に訴えたのです。ポティファルは怒り、濡れ衣を着せられたヨセフは牢屋にぶち込まれる事となったのでした。このシーンは旧約聖書の中でも特に目立った場面ではありませんが、画家に大人気のテーマだったようで、驚くほど多くの作品が残されています。
 恐い妻によって誘惑されまくるヨセフの絵画14点をごらんください。

→ ヨセフの物語についての絵画を見たい方はこちら

 

「イギリスのオクスフォードにある彩色写本より  1212‐20年頃」
笑顔で「わーー(汗)」と逃げようとするヨセフと、笑顔で上着を
はぎとろうとするポティファルの妻。
のんびりと緊迫したシーンを描いておりますw

「グイド・レーニ作  1630年」
仕事で忙しい夫と美青年の下僕。なんかもう妻的には誘惑したく
なるのも頷けます。「ねぇ、いいでしょ」と袖を引っぱる妻に、
「そ、そんな事はいけません奥様!」と真面目なヨセフは答えます。

「グイド・レーニ作  1631年」
レーニさん二枚目。「これは命令よ」と言った感じの脅迫めいた
表情をした妻と、ある種の仏のような穏やかな顔をしたヨセフ。

「Simone Contarini 作  1640年」
ぶすっと不満げな顔をした妻と朗らかな笑顔をしたヨセフ。
この涼やかな表情で「お断りします~」と言われたら、確かに
腹が立つかもしれませんw

「チゴリ作  1610年」
誘惑しまくっている奥様。この主題が人気があったのは、このような
誘惑シーンが貴族に需要があったんじゃないかなと思います。
地位の高い方達がこれらを宮殿に飾って鑑賞を楽しんでいたと思うと、
複雑な気分になります・・・。

「Carlo Cignani 作  1678年」
抱き着くポティファルの妻に全力拒否するヨセフ。
無邪気な様子ですが、やっている事は浮気です。

「Carlo Francesco Nuvolone 作 1640年」
こちらは強烈なアッパーを喰らわせてきそうな、恐ろしい様相を
した妻。どこかヴィーナス様を思わせます。女神様を怒らせたら
恐いですよヨセフ・・・。(違

「フィリップ・ファイト作  1816-17年」
古典的な雰囲気を称えた作品ですが、19世紀の画家です。
フィリップさんはフレスコ画の技術を復活させた最初の画家と
されています。颯爽と逃げゆくヨセフを呪うかのように睨む妻。

「フォンテーヌブロー派の画家作  1556年」
独特な可愛らしい(?)顔かたちやポーズをしていますねw
9~10頭身ぐらいありそう。

「グエルチーノ作  1649年」
「子猫ちゃんいらっしゃい。お姉さんが可愛がってあげるわ~」と
言っているのかも・・・。←ぇ
画家によって誘惑の仕方も拒否の仕方も様々です。

「アーフリゲム出身の親方作 1500年頃」
幽霊のような姿でヨセフにしがみ付いている妻。これは逃げ出すのも
分かる。異時同図法になっていて、右側には上着を示して訴える
妻に、牢屋へ入れられるヨセフが描かれています。

「Arthur Fitger 作  1840 – 1909年」
なんかもう演劇の一場面と化しているんですが。
ヨセフ赤いタイツ履いているし、楽園みたいになってるし・・・。
ヨセフとポティファルの妻の作品とされていましたが、本当かなぁ。

「オラツィオ・ジェンティレスキ作  1626-30年」
「さようなら」と捨て台詞(?)を吐いて舞台裏へ消えていくヨセフに、
恨んでやる・・・と言った感じの妻。これはもう聖書の物語という
より、男女の愛憎劇の一場面と言った感じですね・・・^^;

「レンブラント・ファン・レイン作  1655年」
あのレンブラントも同テーマを描いていました!ただ、誘惑の場面
ではなく、妻が「ヨセフに乱暴されそうになった!」と訴える場面。
ヨセフはうなだれ、しゅんとしていますね。

 女が誘惑し、男が拒否したことで女は乱暴されたと夫に嘘を言う・・・。
 似たような物語がギリシャ神話にもあります。英雄テセウスの息子ヒッポリュトスは狩猟好きの美青年。彼を愛してしまったのはテセウスの後妻パイドラ。この設定だけでも危険な匂いが漂いますが、パイドラは義理の息子に愛を伝え、ヒッポリュトスはそれを拒否してしまいます。心に傷を負ったパイドラは「ヒッポリュトスに乱暴されそうになったから生きていけません」と手紙を残し、命を絶ってしまいます。それを読んだテセウスは息子を呪い、それによってヒッポリュトスは死んでしまったのでした・・・。
 ヒッポリュトスの記事の末尾にヨセフの物語を同様に紹介しておりますが、この記事も良ければ合わせてご覧ください^^

→ ヒッポリュトスについての絵画を見たい方はこちら

 

【 コメント 】

  1. 管理人:扉園 より:

    >> ヒッポリュトス並みの美男子(嘘 様へ
    こんばんは^^
    女性からの誘惑にはとくと気を付けてください。←ぇ
    ラシーヌ版の方は、フェードルも被害者の一人という感じなのですね。
    神話よりも禁断の愛と悲恋を昇華させた感じがします。
    それにしても悲劇は決して結ばれぬ禁断の愛が多いですよね。(それが悲劇というものですかw)
    「ヨセフが私 (の心) を傷付けようとしたの!」と夫に告げる奥さん。
    とらえようによっては、乱暴されそうになったより猟奇的な事件になってしまうような^^;
    「不純ではない僕は君の遊びには応えられない。アデュー」
    「綺麗事を吐く偽善者め。今に思い知らせてやるわ」
    キザな台詞を考えるつもりが、昼ドラになった奥様(笑)
    誘惑する女性に拒否する男性というテーマなのに、画家の表現力というか構成力の自由さに対して尊敬しますw

  2. ヒッポリュトス並みの美男子(嘘 より:

    ラシーヌの『フェードル』、こんど観に行きます。
    ラシーヌ版では、フェードル(パイドラ)はすぐ死なないそうな。残念ながら私の持っているギリシア劇集には『ヒッポリュトス』が載っていない……
    ラシーヌのほうは……買おうかな。
    ポティファルの奥さん、「乱暴されそうになった」じゃなくて、「傷つけられた」であれば、嘘にはならない……かもしれませんよ( ̄▽ ̄)、と言ってみる。←ぇ
    しかし、この画題でも、ヘルマプロディトスのときのような「キザなセリフごっこ」ができそうだ(笑)

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