旧約聖書の「トビト記」の絵画14点。息子トビアはラファエルと旅し、家族円満となる | メメント・モリ -西洋美術の謎と闇-

旧約聖書の「トビト記」の絵画14点。息子トビアはラファエルと旅し、家族円満となる

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 トビト記は旧約聖書、またはヘブライ聖書の物語です。
 ある日、トビトは危険を顧みずユダヤ人の遺体を埋葬しました。アッシリアの捕虜にされていた彼等は、底辺の地位にいたのでした。お尋ね者になったトビトでしたが、甥の力添えで事なきを得ました。無事に自宅に戻って妻子と再会したトビトだったものの、雀の糞が目に落ちて失明し、妻と喧嘩をしてしまいます。神に祈りを捧げたトビトとほぼ同時刻に、悪魔に憑かれて七回の結婚を壊された女性、サラも神に祈っていました。神はその祈りを聞きいれ、旅に出ることになったトビトの息子トビアに、天使ラファエルを差し向けます。天使は身分を隠し、トビアの道案内人として雇われました。
 旅を開始した二人。巨大な魚を釣り上げたトビアに、ラファエルは魚の胆汁を父の目の薬に、心臓と肝臓をサラの悪魔祓いに使えとアドバイスしました。二人はサラの元へ行って魚の内臓をいぶすと、悪魔は逃げていきました。トビアとサラは夫婦となり、息子は父親の元へ帰ります。トビアは胆汁を使って父親の目を治し、家族は大円満となりました。神に深く祈る彼等にラファエルは素性を明かし、天へ還って行きました。
 家族をテーマにしたハッピーエンドの「トビト記」の絵画、14点をご覧ください。

 

「アンドレア・ディ・レオン作  1640年」
ユダヤのナフタリ族であるトビトは放置されていたユダヤ人の遺体を
埋葬します。それによってお尋ね者となりますが、甥の計らいによって
命をつなぎ、無事に家に帰って妻子と再会します。

「レンブラント・ファン・レイン作  1626年」
しかし、トビトに不幸が襲います。雀の糞によって失明してしまうばかりか、
妻が持ってきた山羊を盗んできたものと勘違いしてしまい、夫婦関係に
亀裂が走ってしまいます。足元の犬が悲しそう・・・。

「ウィリアム・アドルフ・ブグロー作  1860年」
神に祈りを捧げたトビトは、息子トビアを旅に出させることに決めます。
神の力添えで天使ラファエルが案内人に付き、トビアの旅が始まります。

「フィリッポ・リッピ作  1472-82年」
ラファエルに連れられるトビア。変哲もない案内人に扮装している
はずのラファエル様ですが、がっつりと天使のお姿になっています。

「ティツィアーノ作  1488 – 1576年」
「ほら、トビア。あちらに行きましょう」と言っているかのようです。
というか、トビア君幼すぎます。これでサラさんと結婚する気ですか!?

「Corrado Giaquinto 作   1703-66年」
二人が肖像画として描かれています。魚の胆汁を父の目の薬に、
心臓と肝臓を悪魔祓いに使うようラファエルがアドバイスしています。
ホウボウのような魚を抱っこしていますね。かわいい・・・。

「ピーテル・ラストマン作  1624年」
敬虔な女性サラは悪魔アスモデウスに憑りつかれてしまい、
新郎を七回も殺され、結婚式を邪魔されていました。
トビアは魚の内臓をいぶし、悪魔を退散させます。ていうか、ラファエルが
悪魔の首を締めてやっつけています。

「ヤン・ステーン作  17世紀」
こちらはラファエルが悪魔の背骨をへし折ってやっつけています。
ワイルドな倒し方でしかも美脚。悪魔から解放されたサラにトビアは
求婚し、二人はめでたく結婚式を挙げることができました。

「レンブラント・ファン・レイン派の作品  17‐18世紀」
その頃、父は息子の帰りを首を長くして待っていました。
長い年月は経ちましたが、息子は無事に我が家へ帰ってきます。

「Simon Hendricksz 作   1630年」
帰宅したトビアは早速魚の胆汁を取り出し、父の目に塗りました。
するとどうでしょう。父トビトは再び目に光を取り戻したのです。

「Gerard Douffet の追随者作   1620年」
物語ではトビトの目が治った後にサラがやって来るのですが、やはり
感動的なシーンには全員を入れたいもの。この絵画はサラと、他にも
女性が一人います。誰だろう・・・?

「バーナード・ストロッツィ作  1635年」
目にぬりぬりしているトビア。ワンコも一緒に心配そうに見上げています。
ひっくり返った魚が、ピーテル・ブリューゲルの絵画に登場する魚に
似ているような気がします。

「ピーテル・ブリューゲル(父)作 反逆天使の墜落部分  16世紀」
この子。どうですか?ちょっと似ていませんかね?

「Jan Massys 作  1550年」
こうして家族は一つとなり、円満に一生を過ごしたとされています。
こんなに幸せそうに笑っている家族の作品は、ルネサンス時代には
あまりありません。見ているこっちもほっこりとした気分になります。

 個人的な観測ですが、絵画を調べてみると父親の目を治す場面が一番多いように感じました。治ったシーンではなく、治している最中のもの。確かに物語のラストシーンで登場人物全員が現れるので、絵画として描きがいがあったのかもしれません。
 あと、トビアとラファエルが旅をしている絵画も多かったです。ほとんどの画家がラファエルの素性を隠さずに天使の姿で描いており、物語の内容より構図や見栄えを重視していることが分かりました。トビアによるサラの悪魔祓いの絵画が少なかったのが、少し意外に思えました。結構印象的なシーンだと思ったのですが。
 やはり、家族円満な場面が一番ですね。

 

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