ジークフリートはドイツの叙事詩「ニーベルンゲンの歌」の英雄で、北欧神話の「ヴォルスンガ・サガ」の英雄シグルズと起源が同じと考えられております。
ネーデルラントのジークムント王とジークリント王妃との間に生まれた彼は、若い時に悪竜を倒すという偉業を成します。その際に魔力を含んだ竜の血を浴びて不死身となりましたが、背中の一点に葉っぱが張り付いて血が付かず、そこだけが弱点となってしまったのでした。
大人となったジークフリートはブルグント国のグンター王の妹クリームヒルトに求婚しようと思い立ち、国へ渡ります。戦争で多くの手柄を立てた彼は王に認められるものの、アイスランドの王女ブリュンヒルトとグンター王との結婚が成立するよう手助けを頼まれます。ブリュンヒルトは求婚者と競技を行い、彼女が勝てば男を殺し、負ければ結婚すると宣言していたのです。姿を消す魔法の隠れ蓑を使ってジークフリートはグンター王を助け、ブリュンヒルトに勝利して結婚を承諾させます。ジークフリートはクリームヒルトと結婚し、父の後を継いで王となりました。
何年か経ったある日の事。ブルグントの王宮でグンター達と再会したジークフリートに悲劇が訪れます。クリームヒルトとブリュンヒルトがどっちの夫が強いかで口喧嘩を始めてしまい、クリームヒルトが「競技をやったのは王じゃなく、姿を消していたジークフリートだったのよ!」と本当の事をばらしてしまいます。重鎮ハーゲンは王や王妃の名誉に傷が付くことを恐れ、ジークフリートの暗殺を計画します。言葉巧みにグンター王を説得したハーゲンは「背中の一点だけが生身である」という事をクリームヒルトから聞き出しました。そして、ジークフリートが泉の水を飲もうとかがんだ時、槍で突き刺して殺してしまったのでした。怒り狂ったクリームヒルトはハーゲンへの復讐を決意し、この悲劇が皮切りとなって多大の犠牲を出しながらブルグントは滅亡してしまうのです・・・。
ジークフリートについての絵画14点をご覧ください。
「Ferdinand Leeke 作 1859-1923年」
ジークフリートは若かりし頃にニーベルンゲン族と戦い、黄金の財宝や
魔法の隠れ蓑、名剣バルムンクを手に入れました。
バルムンクは彼が暗殺された後も登場し続けます。
「Ferdinand Leeke 作 1900年」
同じ作者が同じような構図を手掛けました。こちらの方が
むっきりむっちりな感じですねw Leeke さんは数多くのジークフリート
の絵画を描いており、この後しばらく続きます。
「Ferdinand Leeke 作 1859-1923年」
毛皮を着て野生児のような姿に描かれているジークフリートですが、
彼はネーデルラントの王子だからそんな服ではなかったはずです。
画家はドイツの出身ですが、「北欧の英雄だから」という理由の
ステレオタイプの服装なのかもしれませんね。
「Ferdinand Leeke 作 1859-1923年」
竜を倒すジークフリート。剣で突き刺した時に竜の血を全身に浴び、
不死身の身体となりました。しかし、菩提樹の木の葉が背中について
いた為、その一点のみが弱点となってしまったのです。
なんだかギリシャの英雄アキレスを思い出しますね。
「Wilhelm Ernst Ferdinand Franz Hauschild 作 1827-87年」
名前が長い作者さんですね。ご先祖様の名を全部付けているのでしょうか。
ドラゴンの顔が爬虫類ではなく野獣になっています。19世紀の作品
ですが、まだ姿が定着しきっていない中世写本のドラゴンをモチーフ
にして描いたのでしょうかね?
「アーサー・ラッカム作 1867-1939年」
ジークフリートはブルグント国へ渡り、グンター王の妹のクリームヒルトに
求婚します。ですが、直ぐに承諾はしてくれず、デンマークとザクセンとの
戦争で活躍したり、アイスランドの王女ブリュンヒルデとの結婚の
お膳立てをしたりしました。
「Ferdinand Leeke 作 1859-1923年」
こうしてクリームヒルトと結婚して幸せとなったジークフリートの元に、
悲劇が訪れます。クリームヒルトとブリュンヒルトが口喧嘩となり、
グンターの結婚にジークフリートが加担していた事がばれたのです。
ブリュンヒルトや家臣ハーゲンは怒り、グンター王に暗殺を提案します。
「ヨハン・ハインリヒ・フュースリ作 1741-1825年」
グンター王は部下にそそのかされてジークフリートの暗殺を承諾
してしまいます。秘密裏に進む暗殺計画。騙されて夫の弱点をばらして
しまった妻クリームヒルトは、夢の中で彼の死を予感するのです。
フュースリは夢の御告げを独特な世界観で描いていますね。
「ユリウス・ シュノル・フォン・カロルスフェルト 作 1843年」
夢に不安を覚え「戦争に行かないで」と懇願するクリームヒルトですが、
体面や誇りを大切にするジークフリートは「大丈夫だよ」とききません。
グンター王は「戦争は回避されたから、共に狩りに行こう」と誘います。
それが計略の始まりでした。
「ユリウス・ シュノル・フォン・カロルスフェルト作 1847年」
たくさん狩猟して、喉が渇いた一行は泉の元へ向かいます。
そして、水を飲もうとかがんだジークフリートの弱点めがけ、
ハーゲンは思いきり槍を突き刺したのでした。
「アーサー・ラッカム作 1924年」
急所を貫かれたジークフリートは反撃をしようとしたものの、手元に
武器はありません。何の反撃もできないまま、裏切られた絶望と
妻を心配しながら絶命してしまうのでした。
「Franz Stassen 作 1869-1949年」
ジークフリートの物語は北欧神話のシグルズによく似ており、妻が
ばらした秘密によって暗殺されてしまう所は一緒ですが、暗殺の
され方がジークフリートの方が可哀想だったりします。
「アンリ・ド・グルー作 1866-1930年」
荒々しい波や雷、兵士たちが大挙し、ジークフリートの殺害の
凄まじさを表現しています。彼が暗殺された事で国の平和に亀裂が
生じ、血で血を洗う争いが起こってしまうのでした。
「ヨハン・ハインリヒ・フュースリ作 1817年」
悲しみに打ちひしがれるクリームヒルト。必ずハーゲンに復讐すると
誓った彼女はフン族のアッティラ王と結婚し、グンター王達を招いて
復讐を果たします。その戦いは凄まじいもので、彼女も含め、
ブルグントの者達は全滅してしまったのです。読後感は壮絶でした・・・。
「ニーベルンゲンの歌」は13世紀の初めにドイツ周辺で原作が書かれ、北欧神話のサガを取り込みながら、時代を経る度に加筆、修正となって現在の形になったとされています。
また、この物語を元にした最も有名な作品は、ドイツ人の音楽家リヒャルト・ワーグナーの楽劇「ニーベルンゲンの指環」だと思います。「ラインの黄金」「ワルキューレ」「ジークフリート」「神々の黄昏」の四部からなり、全てを上演するのに15時間かかるという大作です。内容としてはシグルズの物語をベースにしてジークフリートの人生を描き、創作を加えてしまった感じですね。サガやエッダの他の物語も随所随所に取り込んでいるので、どこが原作と同じで、どこが創作かを考えるのも一興ではないでしょうか^^
(追記)
紹介した Ferdinand Leeke さんの絵画は 「ニーベルンゲンの指環」を元にして描いたと思われます。当時のジークフリートの衣装はあのような感じだったのかもしれませんね。
【 コメント 】
>> 美術を愛する人様へ
こんばんは^^
私は聖闘士星矢より少し経った時代なんです^^;
魔探偵ロキの時代でしたね。
…といっても、全く見ていませんでしたw
聖闘士星矢の事は前々から知ってはいましたが、今まで見たことがなかったので、調べてみようかな(^^)
ギリシャ篇、アスガルド篇とかあって面白そうですよね♪
ジークフリートや北欧と言うと聖闘士星矢アスガルド編を思い出す私はもう歳(^^;