ベルギー象徴主義の絵画14点。世紀末に興った、神話や歴史を題材にした幻想芸術 | メメント・モリ -西洋美術の謎と闇-

ベルギー象徴主義の絵画14点。世紀末に興った、神話や歴史を題材にした幻想芸術

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 象徴主義は19世紀後半より始まった芸術運動です。
 この時代は科学的な進歩がめまぐるしく、街並みや自然の風景、時事問題など現実的な側面に目を向ける風潮がありました。しかし、一部の者達はそれに反発し、神話や聖書、伝説などの古典的なテーマを好んで取り上げるようになります。彼等は現実の世界では描写できないような象徴(シンボル)を描きだすことで、生死や宗教性、神秘性などの観念を表現しようとしました。象徴主義はイギリスのラファエル前派より始まり、フランスやベルギーに伝播していきました。
 ベルギー象徴主義の画家はヴィールツやロップス、クノップフなどが代表に上げられます。フランドル地方は古来より独立した芸術形態を持ち、彼等はその流れを受け継いでいます。また、16世紀の画家ヒエロニムス・ボスやピーテル・ブリューゲル(父)からも影響を受け、幻想的で皮肉めいた世界を表そうとする者も現れました。
 ベルギー象徴主義の作品といっても多数ある為、このブログらしく生死をテーマにした作品を取り上げたいと思います。では、14点の絵画をご覧ください。

 

「アントワーヌ・ヴィールツ作 地獄の情景 1864年」
黒装束の男性から、女性達が人物の断片を必死に取り返そう
としている様子が描かれています。悪魔が人を苛むという古来の
固定概念からは外れ、異国の文化が入り込んでいる風合いが
ありますね。当時の戦争の悲惨さを語っているのでしょうか・・・。

「アントワーヌ・ヴィールツ作  飢餓、狂気、犯罪  1853年」
ナイフを持って膝に子供の遺体を乗せた女性が、壮絶な笑顔を
浮かべています。貧しさのあまり、我が子を殺めて鍋に入れて
しまったのでしょうか。トラウマになりそうな作品ですね・・・。

「グザヴィエ・メルリ作  不死   1845-1921年」
女性が何やら死神と会話をしているようです。彼女が背後に隠し
持っているのは手帳のようなものでしょうか。「錬金術や魔術の
知識は死をも凌駕する」という暗示・・・なのかもしれません。

「フェリシアン・ロップス作 舞踏会の死神  1875年」
髑髏が教会のミサで使う聖衣を身にまとい、妖艶に踊っています。
ロップスはカトリック教会の権威に対して反感を持っていたようで、
それを痛烈に皮肉る為に描きました。
2017年の「ベルギー奇想の系譜展」で来日しましたね。

「アルマン・ラッサンフォス作  死の戴冠   1862-1934年」
豪奢な教皇服をまとった死がこちらをじっと見つめています。
こちらも教会の戴冠を皮肉った作品なのでしょうか。
家に飾っていたら呪われてしまいそうです・・・。

「アルマン・ラッサンフォス作 若い魔女  1862-1934年」
若い豊満な魔女が魔術を教わっているようですね。魔女が魔術を
学ぶという主題は以前から存在します。それにしても手前の
黒猫と人形と目が合うんですけど・・・。

「ジャン・デルヴィル作  運命の輪  1867-1953年」
古来より運命のシンボルは車輪であり、車輪に翻弄され続ける
人々の様子が描かれています。手前には運命を司ると思われる、
髑髏を持った老人が佇んでいますね。

「アンリ・プリヴァ=リヴモン作 le masque anarchiste 1897年」
「ベルギーのミュシャ」と称された、アール・ヌーヴォ―の画家。
どうもmontjuichさんという方の劇の為のポスターとの事ですが、
詳細は分からず・・・(T T) きっとこんな事件が起こる作品なのね。

「ジェームズ・アンソール作  Squelette arretant masques  1891年」
アンソールは死と道化の仮面をモチーフにした作品を多く
手掛けており、この作品でも死者と仮面が表されています。
死と仮面の・・・恋愛なのかな?^^;←ぇ

「アンリ・ド・グルー作  集団墓地  1894年」
馬や狼、虎、ハイエナなどありとあらゆる生物が弱肉強食を行い、
大地に還っています。「大地とは数多の生物の死が詰まった
集団墓地である」というメッセージなのでしょうか。

「フェルナン・クノップフ作   1885年」
ジョゼファン・ペラダンの小説「至高の悪」をモチーフにした作品。
男を破滅させる運命の女「ファム・ファタール」と思われる女性が
前方に佇み、背景にはミイラの容貌をしたスフィンクスがいます。

「アルベール・チャンベルラーニ作  オフィーリア 1900年」
戯曲は象徴主義に人気のある主題で、ハムレットのヒロインである
オフィーリアは特に好まれて描かれています。この作品はミレーの
オフィーリアというよりも、デルヴィルのオルフェウスを想起させます。
それにしても顔が怖い・・・。

「レオン・フレデリック作  1893-1918年」
「万有は死に帰す。されど神の愛は万有をして蘇しめん」という長い
題名。地獄、この世、天国の三作から成る超大作。こちらは地獄の
情景。老若男女誰もが死に絶え、業火に焼かれています・・・。

「レオン・フレデリック作  1893-1918年」
こちらは天国。神に祝福されし人々は、幸せそうに笑い合っています。
ルネサンスのフランドル絵画の祭壇画を想起させる作品です。
ぜひ実物で見てみたいです!

 レオン・フレデリックの「万有は死に帰す。されど神の愛は万有をして蘇しめん」は、年代を見ていただくと分かると思いますが製作に25年かかっています。サイズは161×1100cmという超巨大なので、それくらいの年月がかかってもおかしくないですね・・・。彼は1856年~1940年の84歳の生涯なので、実に人生の三分の一を使って作品を描いたことになります。
 この作品、なんと岡山県の大原美術館に所蔵されているそうです!フレデリックさんの生涯の傑作とも言える作品が日本にあるなんて凄いですよね^^ 岡山県に行く機会があればぜひ見てみたい作品です。大原美術館は他にもエル・グレコやクールベ、マネ、モネ、ゴーギャン、ルノワールなどがあるそうなので、興味のある方は岡山県へレッツゴーです!

フレデリックさんの大作を大画面を見たい方はこちらから見られます!
→ https://commons.wikimedia.org/wiki/File:L%C3%A9on_Fr%C3%A9d%C3%A9ric_-_All_Things_Die,_But_All_Will_Be_Resurrected_through_God%27s_Love_-_Google_Art_Project.jpg

→ 大原美術館の公式HPはこちら

→ オフィーリアについての絵画を見たい方はこちら
→ 運命の女神フォルトゥナについての絵画を見たい方はこちら

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【 コメント 】

  1. 管理人:扉園 より:

     >> フュースリおたく様へ
    こんばんは^^
    喜んでいただけて良かったです!
    アンソールの妹さんは中国人と結婚&離婚したのですか…。
    死と仮面の結婚(?)という事で何か裏があるのだろうと思っていたら、そんな皮肉を伝えていたのですね。
    周囲の道化達も祝福しているというよりは、嘲笑っているかのようです。
    アンソールの作品を始めて見た時「しゃっと簡単に描いているように見える」と思ったのですが、よく見ていていくとそんな事はなく、色彩の配置や構成を考えて描いているのだなと感じられました。
    強烈な個性があるので大衆向けではないけれど、根強いファンは多そうです。
    私が大金持ちだったら、お気に入りの絵を買い漁るのになぁ…。←ぇ

  2. フュースリおたく より:

    象徴主義、取り上げていただき感謝です!
    知ってたつもりだったけど、まだ知らない画家がいるんだなーと感嘆しきりでした(笑)
    アンソールの結婚式?の絵は、中国人と結婚した妹という説があるみたいです。実際数年で離婚しており、初めから仮面夫婦的な雰囲気があったのをアンソール本人感じ取っていたのかもしれません。印象派と比べるとマイナーなジャンルですが、ファンはいるらしく、最近某オークションでアンソールの油絵が数億円で落札されたとか…

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