ヒエロニムス・ボス (ボッシュ)の絵画20点。摩訶不思議な怪物を描いた奇才の画家 | メメント・モリ -西洋美術の謎と闇-

ヒエロニムス・ボス (ボッシュ)の絵画20点。摩訶不思議な怪物を描いた奇才の画家

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 ボッシュ、ボッスなどとも訳され、本名はヒエロニムス・ファン・アーケン。ネーデルラント(現オランダ)出身で、初期北方ルネサンスを代表する一人です。
 ボスの作品はとにかく幻想的というか、不思議を越えて奇天烈というか・・・。はい、怪物に溢れているんです。当時の美術界にはない革命を起こしたので、シュールレアリスムの先駆者とも言われています。現在本物とみなされているのは20数点となります。(以前まで30数点とされていましたが、本物だと思われていた作品が追随者、もしくは工房の作品と判明したため) もっと作品を描いていたと思われますが、宗教改革の影響で焼き討ちにあってしまったそう。勿体ない!
 管理人は画家の中でボスが一番好きです。当時の混合技法を学び、大学の卒業制作ではボス調の祭壇画を描き、今でも怪物を描いているくらいです。ともあれ、作品を見ていただくのが一番なのでどうぞ。ヒエロニムス・ボスの絵画20点をご覧ください!

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「七つの大罪と四終 1505-10年頃」
怒り、嫉妬、貪欲、大食、怠惰、好色、虚栄の7つの罪と、
人間の4つの臨終を描いた作品。銘文には「私は、私の顔を隠して
彼らの行く末を見届けよう」と書かれています。天国か地獄か。
7つの罪は死後の道の分かれ所です・・・。
七つの大罪と四終

「快楽と大食の寓意  1500~10年頃」
二つの罪を風刺的に描きました。酒樽に肥え太った人物が乗っかり、
人々がくっついています。右では男女がいちゃいちゃ。
ボスお得意の意味ありげなモチーフが散らばっていますね。
快楽と大食の寓意

「愚者の石の切除  1505-15年頃」
2015年秋に開催された「プラド美術館展」で東京に来た初来日作品。
やぶ医者が、頭に石があると信じ込んだ阿呆者を騙すの図です。
→ 愚者の石の切除についての絵画を見たい方はこちら
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「守銭奴の死  1500-10年頃」           
金の亡者は最期まで欲を捨てられなかった・・・。
死神が目の前にいても。手前と奥の人物は同じ人物で、
異時同図法になっています。天使が必死に声を掛けて
いますが、声は届かないようです。
守銭奴の死

「愚者の船  1500-10年頃」
愚か者を満載した船はどこまでも航海を続ける。行末も知れず。
中央には修道士の男女が吊られたパンを食べようとしています。
セバスティアン・ブラント作の「阿呆船」に通じた作品。
→ 「阿呆船」について詳しく知りたい方はこちら
愚者の船

「放浪の旅人(放蕩息子)  1500~10年頃」
欲に溺れそうになる旅人を描いた作品か、旧約聖書の物語「放蕩息子」
を描いた作品か意見が分かれていましたが、現在では前者の方が
可能性が高いようです。後ろ髪を引かれるように、ちらりと娼館を見ています。
放蕩息子についての絵画を見たい方はこちら
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「聖クリストフォロス 1495‐1500年頃」
幼児キリストを川岸まで運んだ、交通安全を司る聖人。
右側の木は付け加えた形跡があることから、「変なモチーフを入れて」と
依頼があった為に、わざと不可思議なものを描いた可能性があります。

聖クリストフォロスについての絵画を見たい方はこちら
bosch2

「エッケ・ホモ  1490‐95年頃」
逮捕されて拷問され、民衆の面前へ連れてこられた聖書のワンシーン。
ラテン語で「この人を見よ」という意味です。手前の絵画の依頼者と
思われる人物は何故か消されてしまいました。
→ エッケ・ホモについての絵画を見たい方はこちら
Ecce_homo_Hieronymus_Bosch

「十字架を担うキリスト  1500年頃」
その後、キリストは自らが処刑される道具である十字架を背負い、
ゴルゴダの丘を登ります。そこでは面白がる民衆、攻撃を浴びせる兵士、
持つのを手伝うシモンなどが登場します。
十字架を担うキリスト (2)

「十字架を担うキリスト  1502~10年頃」
ボスは同じテーマを数年後に再び描いています。滑稽な民衆や
ヒキガエル、鎧などのボスらしいモチーフが炸裂していますね。
個性的な民衆にキリストは今にも押し潰されてしまいそうです。
→ 十字架を担うキリストについての絵画を見たい方はこちら
十字架を担うキリスト

「茨冠のキリスト 1495年頃」
静謐ただようキリストの周囲に群がる、強烈に濃ゆいおじさんたち。
この作品は後年の画家に影響を与え、ボス・リバイバルの時に
似た構図の絵画が多く生み出されました。
茨冠のキリスト

「荒野の洗礼者聖ヨハネ  1488年以降」
キリストとは親戚同士であり、彼に洗礼を授けた先駆者的な人物。
後にサロメの奸計によって首を斬られてしまいました。
洗礼者ヨハネ

「パトモス島の書記ヨハネ  1488年以降」
上記のヨハネと同名ですが異なる人物。十二使徒の一人、ヨハネは
パトモス島で神の啓示を受けます。それを筆記したものが「黙示録」です。
しかし、黙示録の著者はヨハネではないという意見もあります。
→ ヨハネの黙示録についての絵画を見たい方はこちら
パトモス島のヨハネ

「隠者たち  1504年頃」
三名の隠者暮らしをした聖人が描かれています。
中央は聖ヒエロニムス、左は聖アントニウス、右は聖アエギディウスが
描かれています。ボスは同名である聖ヒエロニムスにやはり思い入れが
あるようで、中央に描いておりますね。
隠者たち

「聖リベラータの殉教  1505‐15年頃」
異教徒との結婚を拒否し、磔刑された聖女。結婚が嫌すぎて、キリストに
「私に髭を生やしてください!」と願ったとか。(しかも実現しました)
この作品はコルシカの聖ジュリアという説もあります。
聖女リベラータの殉教

「東方三博士の礼拝  1496‐97年頃」
キリストが誕生した際、東方から三名の賢者が駆けつけて、祝福を与えた
という物語に基づいた作品。両側の人物は寄進者とその聖人の姿。
小屋の奥にはヘロデ王がおり、ボスの皮肉心が光る作品です。
→ 東方三博士の礼拝についての絵画を見たい方はこちら
東方三博士の礼拝

「干し草車  1510-15年頃」
干草は無価値なものを意味し、それを争い奪い合っている愚かな人物を
皮肉った作品。左側はアダムとイブの楽園追放を描き、右側は地獄を
描いています。人間の深い原罪を克明に表そうとしていますね。
干し草車全体

「最後の審判  1506年頃」
世界の終末が訪れると、人々は天国か地獄かに審判されます。
ボスの作品は人類の大半が地獄行きで、怪物の責め苦を味わっています。
地獄には怪物がひしめき合い、人間たちを苦しめしています。
→ 最後の審判についての絵画を見たい方はこちら
最後の審判 (4)

「聖アントニウスの誘惑  1502年頃」
砂漠の苦行中に悪魔が現れ、アントニウスを堕落させようと色々
襲ってくる伝説にちなんだ作品。絵画中に四名のアントニウスが
おりますが、そのどれもが怪物にまみれていますね。
→ 聖アントニウスの誘惑についての絵画を見たい方はこちら
聖アントニヌスの誘惑

「快楽の園  1503年頃」
ボスの代表作品。その個性的で強烈な絵は一度見たら忘れないでしょう。
「悦楽の園」「いちごの絵画」などとも呼ばれていました。
パネルごとのアップを見ていきましょう!
快楽の園

「左パネル」
アダムとイヴの誕生。中央には生物の一種のような
不思議な塔が建っております。楽園が描かれていますが、
動物の殺生があるのがボスらしいです。
快楽の園エデンの園左

「中央パネル」
裸の人々が不思議な塔や生物と共に、意味不明な行動をしています。
とにかく細かく、意味深なモチーフが乱立しております。
美しい世界の楽園とも、罪深い乱痴気騒ぎとも解釈されており、未だに
確定的な説はありません。様々な秘密が隠されているらしい・・・。
快楽の園中央

「右パネル」
地獄の図。右の木男、鳥の怪物(サタンとも)は有名な怪物ですね。
人々は音楽や賭博、暴食など様々な罪で怪物に虐げられています。
木男の内部は居酒屋になっており、頭のピンク色はバグパイプです。
Hieronymus_Bosch_-_The_Garden_of_Earthly_Delights_-_Hell

 聖書の物語を深く知るのも楽しいですが、あらゆる場所で跋扈する怪物をじっくりと見ることもボスの醍醐味です。隅の方で人間を切り刻んでいたり、串刺しにしていたり、馬乗りになっていたりと、色々とやらかしています。想像を凌駕した動物、怪物の魅力はボスならでは。頭と足だけの怪物グリロスも生き生きとしており、見ていて飽きません。
 画像では細かいところまで見せることができないのが残念でたまりません。めくるめく作品に魅了されてしまった方はぜひ、画集を買って穴が開くほど鑑賞するのを推奨します。私も実際そうしています!下のものが最近出された書籍で、参考文献になっております。

グリロスについて詳しく知りたい方はこちら



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