聖ドニはサン・ドニ、聖デニスとも呼ばれているカトリック教の聖人です。
フランスのパリの司教で、250年頃に殉教したと伝えられています。聖ドニはセーヌ川のシテ島で暮らしており、仲間である聖ルスティクスと、聖エレウテルスと共にキリスト教の布教に励んでいました。しかし、改宗する者が増えてくるにつれて異教の僧侶が彼等を疎く思うようになり、聖ドニ達は高い丘で斬首刑に処されてしまいました。彼ら三名は死後まもなく崇拝の対象になり、遺体はその地に埋葬され、彼等を崇める教会堂が設立されました。
「黄金伝説」によると聖ドニは斬首された後、自らの首を持ち上げて説教をしながら数km歩いたとされています。人間の摂理を越えた、恐るべき奇跡です。その伝説を元にして、画家たちは聖ドニを自らの首を持った聖人として表しました。また、斬首しても死なずに首を持ったとされている聖人は、他にも三名おります。
聖ドニの絵画&彫刻10点と、三名の聖人の首を持った姿をご覧ください。少しだけ閲覧注意です。
聖ドニ(デニス)
「フランスの国立図書館にある中世写本の挿絵」
斬首された三名の聖人。聖ドニは自らの生首を持ち、天使に
支えられています。この挿絵は首の上に後光があります。
「フランスの国立図書館にある中世写本の挿絵」
聖ドニの生首は目を開き、信者に説教をしています。
この挿絵は頭の方に後光があります。絵によって後光の場所が
変わるのが興味深いです。
「フランスのサクレ・クール寺院にある像」
白地に金をあしらった、神々しい聖ドニの像。幽霊のようで、
これなら聖堂を歩いていても仰天しないかも。
「André d’Ypresの追随者作 1449年?」
パリの議会に飾られている、キリストの磔刑の絵画の一部。
斬首されたばかりのようで、まだ血が吹きでています。足元には骨が
あるし、この姿で説教されたら気絶する。
「1826年の作者不詳の版画作品」
天使が祝福を与えようと、斬られた首部分にオリーブ?の輪を
授けています。自分の首の持ち方がちょっとずさんにみえます。
「作者不明の版画作品 17世紀」
この聖ドニさんは首を本の上に載せています。白黒ですが、首の
切り口が妙に生々しい・・・。
「レオン・ボナ作 1880-85年」
両側に転がる仲間達の死体と凶器の斧。
聖ドニは首を拾い上げ、死刑執行人は酷く驚いています。
「1826年の作者不詳の挿絵」
鋭い目つきで町を闊歩する生首の聖ドニさん。
町の中はさぞかし大混乱になったことでしょう。
「1896年の作者不詳の挿絵」
桜?咲く道を歩く聖ドニに、口を開けて唖然とそれを見る女の子。
「ねぇ、首とれたじいちゃんが歩いてた!」と両親に言っても、
果たして信じてくれるのでしょうか。
「作者不詳の中世絵画」
胴体が消えて、首だけになっちゃいました!
聖ドニ=生首というイメージとなった結果、こうなってしまったのでしょうか。
ですが、生首の聖人は聖ドニだけではありません。
聖リヴァイア
「ジャック・カロ作 17世紀前半」
マルサルのリヴァイアとも呼ばれ、5世紀の初めにフン族から故郷を
守る為に殉教した聖人。伝説では彼も戦いによって首を斬られましたが、
首を持って歩いたとされています。
聖ミトル
「ニコラス・フロマン作 15世紀」
聖ミトルも5世紀の聖人で、キリスト教の奇跡を起こしたことで魔術を
使ったとされ、斬首。首を拾い上げて歩いたとされています。
絵画は異時同図法になっています。
聖ユストゥス
「ピーテル・パウル・ルーベンス作 1635年」
聖ユストゥスは4世紀のローマ時代に斬首された聖人。
前者の方々と同じように、彼も首を持って歩いた伝説があります。
聖人の絵画というより、まるっきりホラーになっているような気がします。
首を持って歩いた聖人の数は多いけれど、やはり一番有名なのは聖ドニさん。
聖ドニは十四救難聖人の一人として数えられており、頭痛を司っています。彼に祈れば頭痛が治るとされているのです。斬首されて頭を持って歩いたくらいだから、頭痛も治してくれるだろう!と。中世西洋の人々はダイレクトというか、そのまんまというか・・・。聖人信仰もなかなか興味深い世界です。
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