オデュッセウスはギリシャ神話に登場する英雄です。
ホメロスの叙事詩「オデュッセイア」の主人公であり、腕力自慢の豪傑というよりも、知略をもって物事を解決する知将です。トロイ戦争の勝利のきっかけとなったトロイの木馬を考え出したのは、オデュッセウスとされています。トロイ戦争が終了したので、オデュッセウス一行は故郷のイタケーを目指して航海をしました。彼はすぐに戻れるだろうと考えていましたが、とんでもない間違いでした。船は大嵐に見舞われ、北に航路をとるはずが南に流されてしまい、未知の国へと付いてしまったのです。故郷への道は辛く長い道筋となり、その冒険が「オデュッセイア」に語られることになるのです。
オデュッセウスの冒険の絵画、11点をご覧ください。
「ジョヴァンニ・ドメニコ・ティエポロ作 1760年」
左のおじさんがオデュッセウスと思われます。木造の巨大な馬は、内部に
大量の兵士を入れて敵国へ送られます。神の贈り物だと信じたトロイ側は
馬を国内へ入れ、奇襲を仕掛けられてしまったのです。
「ヤーコブ・ヨルダーンス作 1635年」
キュクロプス(サイクロプス)は一つ目の巨人です。オデュッセウス一行は
この怪物が住む島へ来てしまいました。部下が一人ずつ食べられていく中、
彼は持ち前の知略と機転で脱出することに成功します。
「アーノルド・ベックリン作 1896年」
岩を投げて船を沈める恐ろしい巨人、ライストリュゴネス人のいる島へ
オデュッセウス一行は通りかかりました。怪物によって船は次々に沈められ、
残った船はオデュッセウスが乗る一隻だけになってしまいました。
「サロモン・デ・ブライ作 1650年」
次に立ち寄った島は、魔女キルケが住む島でした。彼女は人間を動物に
変える恐ろしい女性でしたが、ヘルメス神の力添えによってオデュッセウスは
苦境を乗り越え、キルケの歓待を受けます。
「Hubert Maurer 作 1785年」
それどころか二人は恋に落ちてしまい、一年間共に暮らして子供をもうけます。
しかし、オデュッセウスは故郷のことが忘れられず、出航することに決めます。
酷く悲しんだキルケも、最終的には送り出してくれました。
「ジョン・ウィリアム・ウォーターハウス作 19世紀後半-20世紀前半」
オデュッセウス一行は怪鳥セイレーンが住む場所へ訪れました。
セイレーンは美しい歌で男を惑わし、海に沈めるのです。船員は耳を
蠟でふさぎましたが、オデュッセウスはそのままでマストに縛り付けられました。
「ハーバード・ジェイムズ・ドレイパー作 ユリシーズとセイレーン」
船員たちはオデュッセウスが正気か暴れているかで、歌の有無を
判断しました。こうして無事にこの地域を乗り切ることができたのです。
この絵画は2017年7月から開催される「怖い絵」展で出展されます。
→ 「怖い絵」展について知りたい方はこちら
「アレッサンドロ・アローリ作 1535–1607年」
しかし、この先に進むとスキュラという犬の怪物が現れます。海から出て来た
怪物は、6名の部下をあっという間に呑み込んでしまいます。
オデュッセウス達は命からがら逃げおおせることができました。
「Michele Desubleo 作 17世紀」
苦難を乗り越え、オデュッセウスはパイエケスの王女ナウシカアと
出会いました。彼女は懐の広いいい人で、オデュッセウスを無事に
故郷へ帰す力添えをします。こうして長い旅路は終わりを告げるのです。
「 ピントゥリッキオ作 1509年」
オデュッセウスは無事に故郷へ帰りました。しかし、新たなる問題が
立ち上がりました。愛しの妻ペネロペの処に、男が大量に言い寄って
きているのです。彼女が「夫の弓を使って12の斧の穴を射抜けた者に
嫁ぐ」とお触れを出したので、オデュッセウスは一計を案じました。
「トーマス・デジョージ作 1812年」
オデュッセウスは老人に変装し、求婚者の中に紛れ込みました。
弓は強く、一般人には弦を張ることすらできません。しかし、彼はひらりと
自らの弓を掴むと妻のお触れを軽々と行い、その弓で求婚者たちを
虐殺されたと言われています。めでたしめでたし?
トロイ戦争は10年間行われ、戦争後からオデュッセウス一行が帰省までかかった年数は10年。オデュッセウスが故郷に帰って来るのは実に20年ぶりのことになります。
もし20歳で出かけていたら、40歳のおじさんになってしまう。青年~成人時代が戦争と漂流で費やされてしまったことになります。それだけの年数を費やしてでも帰宅に頑張ったオデュッセウスは凄いと思いますが、20年間節操を守って待ち続けていた妻ペネロペさんの方がもっと凄いです。オデュッセウスは途中でキルケと愛し合い、子供まで産まれちゃったのに・・・。最後には奥さんの元へ戻って求婚者たちをジェノサイドしたとはいえ、奥さんの忍耐力を見習って欲しく思います。
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