十二使徒のゼベダイの子ヤコブ(大ヤコブ)の絵画12点。雷の子と呼ばれた激しき聖人 | メメント・モリ -西洋美術の謎と闇-

十二使徒のゼベダイの子ヤコブ(大ヤコブ)の絵画12点。雷の子と呼ばれた激しき聖人

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 ヤコブはキリストが選んだ十二使徒の中の一人で、使徒ヨハネの兄です。ヤコブが何人もいる為、ゼベダイのヤコブ、大ヤコブと呼ばれています。以下、大ヤコブと記述させていただきます。
 彼は父親とヨハネと共に漁船で網の手入れをしていたところ、キリストにスカウトされて弟と一緒に弟子となり、布教の道に進むことにしました。兄弟は激しい気性だったようで、ボアゲルネス(雷の子)と呼ばれていました。一行が歓迎されない町に対して、「天から火を降らして焼き払いましょうか」とキリストに提案して叱られたエピソードがあります。大ヤコブは十二使徒の中でも中心的な役割を努め、布教に専念していました。

 彼の逸話に、魔術師ヘルモゲネスを改宗させたというものがあります。魔術師の弟子フィレトゥスが大ヤコブの説教を受けて感銘し、改宗したことを受け、ヘルモゲネスは激怒して弟子を金縛りにしてしまいます。大ヤコブは弟子を解放するよう説得しますが、魔術師は耳を貸さないどころか、呪文を唱えて悪魔や怪物たちを呼び寄せます。大ヤコブはそれを跳ね返し、逆にヘルモゲネスが悪魔に攻撃され、餌食にされそうになります。彼は降参して改宗したと伝えられています。そんな大ヤコブは古代ユダヤの統治者ヘロデ・アグリッパ1世によって捉えられ、殉教してしまいます。西暦44年の事であり、十二使徒の中では一番最初の犠牲者でした。
 キリスト教の重鎮、大ヤコブの絵画12点をご覧ください。

 

「グイド・レーニ作  1636-38年」
大ヤコブの遺体は9世紀に、スペインのサンティアゴ・デ・コンポステーラ
で奇跡的に発見されたとされており、現在でも聖なる地とされ、巡礼者が
後を絶ちません。

「ジョルジュ・ド・ラ・トゥール作  1593‐1652年」
ホタテ貝は大ヤコブの象徴で、フランスでは「聖ヤコブの貝」と呼ばれて
います。ヘロデ・アグリッパ一世に殺害され、仲間たちが遺体を船に
乗せて運び出す際、船底にホタテ貝がびっしりと付着していたという
逸話に基づいています。

「バルトロメ・エステバン・ムリーリョ作  1617‐82年」
この大ヤコブは威厳に満ち溢れた、格好いいおじいちゃんですね。
左手に持っているのは聖書、右手に持っているのは巡礼者の杖です。
また、ホタテ貝は巡礼者も意味し、聖ロクスも身につけています。
→ 聖ロクスについて知りたい方はこちら

「レンブラント・ファン・レイン作  1606‐69年」
レンブラントの描く大ヤコブは、全てを悟りきって穏やかな境地に
達した表情をしています。分かりにくいですが、右下にある帽子に
ホタテ貝が付けられています。

「アルブレヒト・デューラー作  1516年」
マジ切れしているおじいちゃん。
雷の子、と呼ばれる気性の粗さがよく表れています。画家によって
大ヤコブの風情がこうも分かれるのは面白いですね。

「エル・グレコ作  1541‐1614年」
彼が描く聖人はどの方も頭身が高いですね。
グレコはスペイン出身だったので、スペインを守護する
大ヤコブに対する気持は強いものがあったのでしょうか。
EL GRECO

「ホセ・デ・リベーラ作  1632年」
キリストを象徴する子羊に手を触れ、深い信仰心、忠実心を表しています。
胸に手を当て、天を見上げる。劇的な作品です。

「ホセ・デ・リベーラ作  1591‐1652年」
リベーラさんは同じ感じの作品を二枚描いています。
抱っこされている羊さんがかわいいですね。私も抱っこしたい・・・。←ぇ

「ヒエロニムス・ボスの追随者作  16世紀」
大ヤコブの伝説として、魔術師ヘルモゲネスの改宗があります。
弟子のキリスト教化にキレた魔術師は、悪魔や怪物を呼び寄せ、
ボス調の怪物たちが「イエッサー!」とばかりに集まっています。
左奥に大ヤコブの姿がぽつんとみえます。

「ピーテル・ブリューゲル作  1565年」
彼は大ヤコブに向かい、これでもかとばかりに魑魅魍魎を差し向けます。
中央に大ヤコブ、左側にヘルモゲネス、右側奥に座っている人物は
弟子のフィレトゥス君です。ひっちゃかめっちゃかのカオス状態ですね。

「ピーテル・ブリューゲル作  16世紀」
しかし、大ヤコブではなく逆にヘルモゲネスが悪魔に襲われてしまいます。
画面中央には逆さまになっている魔術師が見て取れます。
上二つは2017年の展覧会「バベルの塔展」で出展された作品です。
→ バベルの塔展について知りたい方はこちら

「フラ・アンジェリコ作  1426-29年」
悪魔の餌食になりそうで大ピンチのヘルモゲネスを、しょうがないなぁと
大ヤコブは救出します。彼は自分のしたことを反省し、改宗しました。
この作品のヘルモゲネスさんは怒り気味のようですが・・・。

 大ヤコブの遺体が9世紀に発見された時、ちょうどスペインはレコンキスタ中でサラセン人との戦いの真っ最中でした。自らの土地と信仰を守る為に闘っていた彼等は、大ヤコブの出現に「聖人が我らを見守ってくださる。命を賭けて戦うぞ!」と大いに沸き返りました。こうしてスペイン側は勝利を手にすることができました。この逸話により、大ヤコブはスペインと戦争の守護聖人になったのでした。
 ただでさえ雷の子というあだ名が付いているのに、戦争を守護する聖人になったら激しすぎますね、大ヤコブさん・・・。

 

【 コメント 】

  1. 美術を愛する人 より:

    >扉園 様
    こちらこそお返事ありがとうございます!
    聖ヒエロニムス、、ネットで検索かけてみましたが、肘をついた絵画がすごく目ヂカラが凄くて、画家さんの名前見たらやっぱりデューラーでした(笑)
    わ〜!使徒の絵画まとめてもらえるのすごく嬉しいです!弟ヨハネ、楽しみにお待ちしております(*´∀`*)

  2. 管理人:扉園 より:

    >> 美術を愛する人様へ
    こんばんは^^
    ありがとうございます!
    使徒や聖人の方はどの方も濃い人生を歩んでいますよね。
    使徒ヨハネの絵画も沢山残されていて、またご紹介したいと思います。
    ご紹介までにお時間はかかってしまいますが、よろしければまたご覧ください!
    デューラーの大ヤコブが特に半端ないですよね(笑)
    「聖人」と聞くと穏やかな性格を思い浮かべがちなのですが、大ヤコブだけではなく聖ヒエロニムスも激しい性格の人だったようです^^;
    キリスト教に対する差別や批判、迫害が横行する時代だったから、なおさら強くなってしまったかもしれませんね。

  3. 美術を愛する人 より:

    こんにちは!
    使徒シリーズすごく興味深いです、、。弟のヨハネも、最後の晩餐ではキリストに寄りかかっていることで有名ですが個人画もたくさんありそうですね。
    雷と言われるだけあって強い性格が滲み出てますねε-(´∀`; )

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