神に反逆し人間を誘惑する者、悪魔。
悪魔という概念は古くから存在し、キリスト教が成立する以前のゾロアスター教などの宗教でも、神に敵対する邪悪なる者がいると考えられてきました。キリスト教における悪魔は「神に謀反したルシファー側に付いた天使が地獄に落とされて堕天使となり、悪魔となった」と一般的にはされていますが、キリスト教に反する土着信仰や多神教の神々なども悪魔として数えられるようになりました。中世時代の人々は悪魔を「山羊のような角とコウモリのような羽、身体の所々に顔が付いている人間と獣が混じったかのような姿」と考え、様々な個性的な悪魔を描きだしたのです。
では、中世時代の悪魔の姿13点をご覧ください。
「フランスの彩飾写本 ブドウ園の本の挿絵 1450-70年」
様々な悪魔の種類(?)を描いた写本。赤や黄、青など様々な色に
塗られています。赤鬼青鬼を想起させますね・・・。西洋の彼方には
怪物のような人間がいると考えられていた時代なので、悪魔にも
腹や膝にいっぱい顔を付けて怪物性を強調しているのかなと思います。
「フランスの彩飾写本 ブドウ園の本の挿絵 1450-70年」
罪人たちに掴みかかってがぶりとしたり、ぶすりとしたりして
懲らしめている地獄の悪魔達。悪魔はだいたい角と尻尾を生やして
鳥足やひづめの足をしていますね。
「フランスの国立図書館にある彩飾写本の挿絵 14世紀」
聖職者の元へ現れたしたり顔の悪魔さん。彼の仕事は人間を
堕落させることなので「神に祈ったり節制したりするのは止めて、
ぱーっと遊んじゃおうぜ!」とそそのかしているようです。
「フランスのトゥールーズにある彩飾写本の挿絵 1220-70年」
一人の人間によってたかって攻撃している悪魔さん。
表情もポーズもゆるーい感じですが、やられている本人にとっては
堪ったもんじゃありませんね。
「ハンガリー所蔵の彩飾写本の挿絵 1420年」
地獄の入り口であるヘルマウスから顔を覗かせまくる罪人たち。
上半身を出した悪魔が痛そうな鞭を持って罪人を苦しめています。
「フランスの彩飾写本 ブドウ園の本の挿絵 1450-70年」
頭にいっぱい悪魔を付けた悪魔の長。周囲の部下達が
「ひゅーひゅー!ボス格好いいぜ~!」と言っているように見えて
来ました・・・。顔が猪、犬、鳥と様々ですね。
「イタリアにある写本の挿絵? 1461年」
とっても賑やかで楽しそうな地獄の情景。緑と紫の悪魔が契約書
みたいな紙を誇らしげに見せています。なんか、こんな雰囲気の
地獄なら入ってみてもいいかなと思っちゃう・・・。←ぇ
「イングランドのTaymouth Hoursの写本挿絵 14世紀」
バグパイプを吹き吹きするひょうきんな悪魔。
バグパイプはその形から、女性の下半身や虚栄のシンボルと
されており、悪魔に弾かせる楽器とされていました。
「花の本(Book of Flowers)の写本の挿絵 1120年」
凄い個性的な感じの、馬牛っぽい怪物に乗る猫背の悪魔。
馬牛っぽい怪物の目がキラキラしていてちょっと可愛いですねw
「イングランドの Taymouth Hours の写本挿絵 1325–40年」
聖人に成敗される悪魔。その様子をキリストと天使が無表情で
見守っています。やっつけられても楽しそうな顔してますね。
「Codices Palatini germanici の写本挿絵 1460年」
ローマ教皇シルウェステル2世と悪魔。教皇はキリストの代理者と
され、この世で神に一番近い存在とされています。
にやりとする教皇。がびーんとする悪魔。
「イギリスの時祷書 De Brailes Hours の挿絵 1200年頃」
パーンチ!
「the Kitab al-Bulhan or Book of Wonders の挿絵
(驚異の本のアラビア語版?) 14世紀」
うぃっしゅ!!
まさか、21世紀の日本で広まっているポーズに出会うとは
思いませんでした・・・。悪魔は未来をも予言する!?
神の敵対者、人間の誘惑者、かつての異教の神々、堕天使、ルシファーの追随者、地獄の看守、邪悪なる者と悪魔は多様なる側面を持っていますが、悪魔の源泉は人間の「欲望」そのものだと感じます。お金が欲しい、楽がしたい、遊びたい、権力や地位が欲しい、目立ちたい、食べたい、人に勝ちたいと、人間は欲を大量に持っています。その誘惑に打ち勝つのは困難を極め、「止めよう」と思ってもお菓子を食べたり、「駄目だ」と思っても余分な物を買ってしまいます。悪魔はそういった人間の欲の感情の集積物のような気がします。
中世の人々は自らを誘惑してくる悪魔を追い払おうと、神に祈ったり聖人に祈ったりと躍起になった反面、上記の幾つかの作品のように「悪魔を滑稽な存在にして笑いとばしてしまおう」と開き直っている節もあるような気がします。悪魔に対する反応や見方は人それぞれなのだと思いますが、自らの欲の付き合い方が感じられるように思います。(それだったら私は欲望だらけになってしまうなぁ・・・^^;)
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