メランコリア(憂鬱気質)の絵画12点。暗く沈んだ感情は、芸術創造の根源とされる | メメント・モリ -西洋美術の謎と闇-

メランコリア(憂鬱気質)の絵画12点。暗く沈んだ感情は、芸術創造の根源とされる

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 メランコリーは日本語で「憂鬱(ゆううつ)」であり、気分が優れない落ち込んだ気分のことを指しますが、メランコリアは古代ギリシア医学の学説「四体液説」に由来します。
 四体液説は「人体は血液、粘液、黄胆汁、黒胆汁の4つで構成される」という考え方であり、人間の性格もそれらのバランスによって決まるとされています。その中で黒胆汁が多い者が「メランコリア(憂鬱気質)」と考えられており、現代で言えばうつ病に近いメランコリアの性質は余り良いものではないとされていました。しかし、哲学者や詩人、芸術家などの人物はメランコリアである比率が高いとされ、ルネサンス以降、メランコリアは芸術、創造を生み出す霊感の根源であると思われ、学者の文献、画家の寓意画に盛んに描かれることになりました。
 メランコリアの様子を描いた作品、12点をご覧ください。

 

「アルブレヒト・デューラー作  1514年」
メランコリアの作品の中で、これが一番有名でしょう。不機嫌な様子の
天使はペンを手にし、深く何かを考え込んでいます。
作品は様々な寓意に満ちており、憂鬱は芸術の出産であり、
霊感を生み出す手段とされています。

「Sebald Beham 作  1539年」
こちらの天使も頬に手を付いて考え込んでいますが、どこか嬉しそうに
みえます。手にはコンパス、足元には球体と砂時計。世界の尺度や
時間を表しているのでしょうか。背後にはメランコリアの文字が。

「フレデリック・サンディーズ作   1829-1904年」
メランコリアとメメント・モリが複合的になったような作品。
死を象徴する骸骨が、憂鬱そうな男性を迎えに来ています。左の花の
花瓶には道化のような人物が描かれているように見えます。
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「Henri Simon Thomassin 作 1729年」
女性は髑髏を抱きかかえ、深く何かを考え込んでいます。
砂時計や世界を表す球体が塞ぎ込んだ心に負担をかけていますが、
足元の犬や魔方陣の描かれた本が創造の啓示を表していそうです。

「ルーカス・クラナッハ(父)作  1532年」
クラナッハは何枚もメランコリアの作品を描いています。羽の生えた
女性は何かを削っているように見えるのですが・・・。ごぼう?
子供たちは一人がぶらんこに乗っていて、羨ましそうに見ています。
ドイツの民間伝承にある、ワイルドハントのようなものが空を飛んでいます。

「ルーカス・クラナッハ(父)作  1532年」
描かれたモチーフはほぼ同じで、構成もよく似ていますが、
こちらの絵画は子供たちが円を転がしています。世界は子供たちが
遊ぶように気まぐれに転がっているという意味でしょうか・・・。

「ルーカス・クラナッハ(父)作  1532年頃」
今度は子供が大量発生しました。この少し不気味な作品を見ているだけで、
どことなくメランコリーになりそうです。子供は踊っている組、寝ている組、
音楽組に分かれ、異次元の人々は船や馬に乗っています。
首だけの存在は創造神?私には解読ができません・・・。

「Bartholomaus Hopfer 作  1643年」
バロックに入ると、肖像画の表現の一つとしてメランコリアは使われました。
この作品はメランコリア+ヴァニタスといった感じですね。
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「ヘンドリック・テル・ブルッヘン 作  1627年」
女性が髑髏を手に持ち、深く考え込んでいます。蝋燭の弱い光と強い闇。
テネブリスムを用いることで、より一層女性の悩ましさを深めています。
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「フランソワ=グザヴィエ・ファーブル 作 1795年」
女性は壺によりかかり、呆然と上を見上げています。
「あぁ・・・どうしよう」という女性の声が聞こえてきそうです。

ゲルハルト・フォン・キューゲルゲン作  1815年」
こちらの女性は壺を持ち上げ、こちらに訴えかけているように見えます。
壺は一体何を表しているのでしょうか。負の感情が詰まっている
「パンドラの壺(箱)」を象徴しているのですかね?
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「アルテミジア・ジェンティレスキ作  1621-22年」
マグダラのマリアの憂鬱さを描いた作品。キリストの死があった直後を
描いた作品なのでしょうか。彼女は疲れ果てたかのように
椅子によりかかり、目を閉じています。

 芸術や哲学、文学においてメランコリアは霊感を与える崇高な手段となっていますが、現実におけるメランコリーはとても厄介な感情です。気分が沈んでいる時は何もやる気が起きないし、一体私は何をやっているんだろう。こんな事をしていていいのかな、と色々悩んでしまいます。それも自分の考えが生み出したことかもしれませんが、現代では本当に色々な問題事が溢れているように感じてしまいます。
 深いメランコリーの渦に溺れず、パンドラの箱に残った唯一の希望のように、人生に絶望せずに楽しく過ごしていきたいですね。どれかと言えば、私は黒胆汁が多めのような気がするので・・・(汗)

 

【 コメント 】

  1. 管理人:扉園 より:

    >> 季節風様へ
    こんばんは^^
    穏やかな表情であるはずの天使に、ああも不機嫌そうな憂鬱顔をされると、こちらまで沈んだ気分になりそうですよね。
    作品自体は興味深いものの、「この作品が好きか?」と問われたら正直私も微妙のように思います。
    なんというか家に飾るには福が来なくなりそうで…。
    絵画の意味が分からないのは調べればいいのであって、自分に憂鬱になることはないと思いますよ。
    私も知らないことだらけですしね^^;

  2. 季節風 より:

    「アルブレヒト・デューラー作  1514年」は有名なせいか何度も目にしたんですが、私は観るたびに憂鬱になってしまいます。私はこの絵の良さや意味が解らず見る目のない自分に憂鬱になります。
    パンドラさんには「貴女のせいではありません」と慰めたいです。

  3. 管理人:扉園 より:

     >> オバタケイコ様へ
    こんばんは^^
    色々考え出したらきりがなくなって、辛くなってきますよね。
    身近な方を大切にし、小さな幸せに感謝する。これは本当に大事だと私も思います。
    昔は「多くの人に認められたい」という欲があって色々頑張っていましたが、悩んで疲れてしまい、自分や家族のペースで事に取り組んでいます。
    現在も「人生は有限だから」と色々悩む事はありますが、「こつこつと毎日できる事をしよう」と焦らないようにしています。
    (といっても、何もできていない現状ですが…^^;)
    クラナッハの世界観は独特ですよね。
    個人的には「不気味美しい」と感じてしまいます。(誉め言葉ですw)
    ルネサンス時代の西洋にごぼうがあるなんて面白いですよね^^
    きっと子供達に豚汁を食べさせてあげるのですね(笑)

  4. オバタケイコ より:

    私は根は楽天家だと思うのですが、今の世の中の悲惨さや様々な問題を考えると未来が暗いものに思えてしまうので、身近な人達を大切にして小さな幸せに感謝して、あまり深く考えこまないように努めています。私も明るい癖にデリケートで感受性がとても強いところがあるので、負のオーラに触れないよう気を付けています。
    ルーカス・クラナッハの連作、本当に面白い❣表情、実の動き、繊細な筆致、全てが素晴らしいです。すっかりファンになりました(´艸`*)削ってるのどう見ても牛蒡ですね。。。きっと豚汁の支度をしてるところだと思います。(笑)

  5. 管理人:扉園 より:

     >> 絵を描こう、と思って参考になりそうなものを探していたら……様へ
    こんばんは^^
    ええ。我が国でよく見かける光景です(笑)
    というか乗り物酔いするので私がそうなってます^^;
    電車内だけではなく、メランコリーを抱える人だらけですよね。我が国は…。

  6. 絵を描こう、と思って参考になりそうなものを探していたら…… より:

    最後の、ジェンティレスキの絵……
    こんなこといったらものすごく罰当たりかもしれませんが……、
    我が国の電車の中でよく見かけます、ええ。
    運よく角の席取れた人。

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